Wellness講座「夏バテに負けない毎日を!」

「夏バテに負けない毎日を!」
「夏バテに負けない毎日を!」

「夏バテ」は誰もが知る言葉で、夏の暑さに伴う身体の不調の総称です。でも、その実態を詳しく知る人は少ないかもしれません。近年の地球の温暖化や海面水温の上昇、都市部のヒートアイランド現象などにより、夏の猛暑日が続き、夏バテが増え、秋まで不調を引きずる原因にもなりかねません。今回は、夏バテの要因と対策、熱中症との違いなどを解説します。ぜひ意識して、夏を元気に過ごしましょう。
監修:関西健康・医療創生会議
出典(図2):日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト

<教えてくれるのは>

平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生
(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生

(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

Q.夏バテを引き起こす主な要因は何でしょうか?

A.

私たちの体に不調を引き起こす主な要因として、次の4つが挙げられます(図1)。

❶寒暖差による自律神経の乱れ:猛暑の屋外とエアコンの効いた室内との激しい温度差は、体温調節を担う自律神経に過度の負担をかけます。自律神経の働きが乱れることで、倦怠感や食欲低下、睡眠不足など全身にさまざまな症状(自律神経失調症)を招きます。

❷食欲低下に伴う栄養不足と胃腸の冷え:暑さで胃腸の働きが鈍り、麺類など偏った食事になると疲労回復に必要な栄養素が不足します。また、冷たい飲食物のとりすぎや冷房による胃腸の冷えは、消化・吸収の働きを低下させます。

❸水分・電解質の喪失:大量の発汗により、水分だけでなくカリウムやナトリウムといった、体にとって重要な電解質も失われます。そのため足がつりやすくなったり、脱力感が生じたりします。

❹質のよい睡眠の阻害:夜間の暑さによる寝苦しさは、心身を修復するための深い眠りを妨げます。睡眠不足は免疫力の低下やホルモンバランスの乱れを助長し、疲労回復を遅らせる悪循環を生みます。

Q.夏バテを放置すると、どのようなリスクがありますか?

A.

放置することで免疫力が弱まると、夏風邪や感染症にかかりやすくなります。また、慢性的な食欲不振による栄養不足が続くと、体重減少や筋力の低下、スタミナ不足につながります。

高齢者の場合は「サルコペニア(筋肉減少)」や「フレイル(虚弱)」を加速させる懸念もあります。夏に溜まった疲労は、涼しくなっても「秋バテ」として、心身の不調が持続することもあるため、早めの対応が必要です。

Q.夏バテを予防するには、どんなことに気を付けたらいいでしょうか?

A.

自律神経の安定を軸とした「生活リズムの維持」と、戦略的な「栄養補給」が最大の防御策です。

❶自律神経を整えるポイント
夏バテ予防の基本は、規則正しい生活によって体内時計をリセットし、自律神経の働きを正常に保つことです。まずは起床時に朝日を浴びてしっかり朝食をとり、心身を日内リズムに合わせたスイッチに切り替えましょう。冷房が強過ぎると自律神経に負担をかけるので、日中のエアコンは28℃を目安にし、外気との温度差を5〜7℃以内にとどめるのが理想的です。また、入浴も重要です。37〜39℃のぬるめのお湯に10分程度浸かると深部体温が上がり、入浴後、徐々に下がることで就寝時には質の高い睡眠へつながります。ベッドに入ってもエアコンを適切に活用し、深い眠りを確保することが大切です。さらに、暑くなる前から軽い運動をして汗をかく習慣をつけることで、体は次第に暑さに慣れ(「暑熱順化」といいます)、体温調節機能を健全に維持できることから「熱中症」にもなりにくい状態になります(図2)。

❷食事面で気を付けるポイント
食事では「栄養バランス」と「温度」を意識した摂取が鍵となります(図3)。冷たい飲食物のとりすぎは消化機能が低下しますので注意が必要です。エネルギー代謝に不可欠なビタミンB1を含む豚肉や大豆製品、良質なタンパク質である肉・魚・卵などを積極的にとりましょう。ビタミンB1が糖質を効率よくエネルギーに変換し、体力の回復を後押ししてくれます。また、温かい味噌汁は水分とミネラルを同時に補給できるため、夏の養生に最適です。クエン酸を含む梅干しや酢、オクラや山芋といったネバネバ食品をとったり、さらに旬の夏野菜や香辛料を組み合わせたりすることで、減退しがちな食欲を刺激できます。

小さなことから工夫を重ねて夏バテを防ぎ、厳しい夏を元気に乗り切っていきましょう。

Q.「熱中症」とはどう違うのでしょうか?

A.

「熱中症」は、高温多湿な環境下で大量の発汗によって脱力が生じ、体温調節がうまく働かなくなり、体内に熱がこもる状態です(図2)。高体温や意識障害を伴う場合は生命に関わる緊急事態で、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。短時間で急激に重症化し、屋外だけでなく室内でも発症します。一方、夏バテは徐々に現れる慢性的な体調不良です。夏バテでも蒸し暑い環境で脱水が進行すると、体温調節能力が著しく低下して、「熱中症」の引き金になることもあるので、注意が必要です。

Q.見逃してはいけない「熱中症」の初期症状とその対応を教えてください。

A.

めまいや立ちくらみ、生あくび、こむら返り・筋肉の硬直、大量の発汗などです。これらは脱水による脳血流の低下や電解質の喪失によるものです。さらに進行すると頭痛、吐き気・嘔吐、体がだるくて力が入らないなどの症状が出現します。まずは「涼しい場所へ移動する」「体を冷やす」「水分と塩分を補給する」などの応急処置を行いますが、自分で水分をとれないようなら、すみやかに病院へ行きましょう。呼びかけに反応しない、意識がない、けいれん、高体温を認めれば臓器不全が疑われる極めて危険な状態です。入院治療が必要なので、ただちに救急車を呼びましょう。

熱中症の予防には、室内でも、外出時でもこまめな水分補給をすることが重要です。また猛暑日の外出は避け、外出時は必ず日傘や帽子の活用を徹底してください。

\ COLUMN /
「水中毒(みずちゅうどく)」とは?

炎天下でランニングやテニスなどの運動を長時間して大量の汗をかき、喉が渇いて大量の水分を一気に飲むと、めまいや頭痛、吐き気・嘔吐、意識障害などさまざまな症状が現れます。これは「水中毒」と呼ばれるもので、短時間に過剰な水分を摂取することにより、血液中の塩分(ナトリウム濃度)が急激に低下するために生じる状態(「希釈性低ナトリウム血症」)です。重症ではけいれんや昏睡が起き、時には死亡することもあります。1時間に1ℓ以上の水を急激に飲むと水中毒になる可能性があります。予防法は、水分補給をこまめに行い(30分〜1時間毎にコップ1杯)、スポーツドリンクや経口補水液で塩分・電解質を補給することです。真水、ミネラルウォーター、麦茶に食塩タブレットや梅干しを加えるのもよいでしょう。

ウナギが夏バテ防止に効くわけは?

「土用の丑の日」にウナギを食べる習慣は、江戸時代の蘭学者・平賀源内(ひらがげんない)が「夏にウナギを食べるとよい」と宣伝したことが発端とされていますが、現代の栄養学から見ても極めて合理的な選択といえます。ウナギには、多くのビタミン(B1、A、D、E)が豊富に含まれています。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換し、疲労回復に役立ちます。ビタミンAは目の網膜にある、光や色を感知する「ロドプシン」という物質の主成分で、暗いところでも目を見えやすくする働きに加えて、皮膚・粘膜を健康に保ち、ウイルスや細菌の侵入を防ぐバリア機能や免疫力を高めます。ビタミンDはカルシウムの吸収力を高めて骨や歯を強くし、ビタミンEは抗酸化作用により老化を防止します。また、ウナギのタンパク質は良質で消化吸収にも優れており、すみやかな体力回復に寄与します。ただし、脂質も多く含むため、コレステロール値が気になる方は摂取量(1回あたり100〜150g程度)に注意しましょう。先人の知恵を食生活にうまく活かし、健やかな夏を過ごしたいですね。

Well TOKK vol.42 2026年7月2日発行時の情報です。