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wellness講座「骨粗しょう症の予防法」
骨粗(こつそ)しょう症は骨の強度が低下して、骨折しやすくなる病気です。超高齢社会を迎えている日本では、現在約1300万人が骨粗しょう症とされ、今後さらに急増すると予想されています。骨粗しょう症のことをよく理解し、予防する方法を探ってみましょう。
骨粗しょう症とは
骨は一度できあがったらそのまま変わらないように思われますが、実は日々古くなった部分が破骨細胞*によって壊され、骨芽細胞*が作る新しい骨で補充されています(図1参照)。この新陳代謝のバランスがうまくいっていれば、骨は強度を保って骨格を維持し、体に必要なカルシウムを蓄積する貯蔵庫としての役割も果たすことができます。しかし、加齢に伴い、特に女性の場合は閉経によって、このバランスが崩れると、骨の強度が低下して骨折しやすくなります。骨粗しょう症の多くは老化に伴う病気ですが、ステロイド薬やホルモン異常など他の原因による骨粗しょう症もありますので、気になる症状がある方は早めに医療機関を受診しましょう。
*骨芽細胞:新しい骨をつくる細胞
加齢と閉経が骨粗しょう症の最大の原因
骨の強度は骨量(=骨密度)と骨質で決まります。骨量は少年期から思春期にかけて増え、18~20歳頃最大になります(図2参照)。その後、加齢によってカルシウムの吸収が悪くなり、徐々に減っていきます。特に女性は50歳前後に閉経を迎えると、骨量が急激に減り始めます。これは女性ホルモンのエストロゲンには骨の破壊を抑え、骨の形成を促す働きがありますが、閉経でその分泌が急に低下するためです。
男性も安心してはいられません。骨粗しょう症患者の4人に1人は男性です。男性の場合、男性ホルモンのテストステロンがエストロゲンに転換するため、高齢になって男性ホルモンの分泌が徐々に低下すると女性ホルモンも減り、骨量を低下させます。
こんなときは骨粗しょう症を疑おう
骨粗しょう症は痛みも苦痛もなく、静かに進行していくので、自覚しにくいものです。しかし、その兆候はいろいろな形で表れます。たとえば、背中や腰が曲がってくる、身長が縮んでくる、立ち上がるときや重いものを持ったとき背中や腰が痛む、などです(図3参照)。背中や腰が痛むのは、背骨の椎体(ついたい)<図4参照>と言われる部分に荷重がかかり、潰れてしまうからです。これを圧迫骨折と言います。背中や腰が曲がったり、身長が縮んだりするのも、圧迫骨折が原因と考えられます。
骨粗しょう症の検査と治療
骨粗しょう症の診断は、骨折を予防し、骨格の健康とQOL(生活の質)の維持改善を図ることを目的として行われます。最近では簡単にできる骨量測定法が開発され、骨の状態が客観的に評価しやすくなりました。特に女性は40歳を過ぎたら骨粗しょう症検診や人間ドックなどで定期的に骨密度検査を受けるようにしましょう。骨粗しょう症の治療薬も大きな進歩を遂げています。骨粗しょう症と診断されたら、積極的に医療機関を受診して、必要に応じて治療することが大切です。
骨粗しょう症で骨折しやすい部位
骨粗しょう症になると、つまずく、くしゃみをするなどわずかなことで骨折することがあります。骨折が起こりやすい部位を図4で見てみましょう。背骨の椎体が圧迫骨折で潰れると、周辺の骨の負担が大きくなり、連鎖的な骨折につながりやすいので、早めの治療が必要です。また、転倒すると大腿骨の付け根でよく骨折します。大腿骨骨折は歩行が困難になり、介護が必要になったり寝たきりになることも多いので、まずは転倒予防が大切です。
骨量アップで骨を丈夫に
~若い人も無理なダイエットや食生活の乱れに要注意~
18〜20歳頃の成長期に無理なダイエットをしていると、栄養不足のために十分な骨量を得ることができず、将来、骨粗しょう症になりやすくなります。骨量が最大となる時期に十分に増加させることこそ、骨粗しょう症の最大の予防法です。そのためには、若い頃から適度な運動を行い、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKをはじめ栄養をしっかり取ることが重要です。そうすれば、50歳頃になって骨密度が低下し始めても、骨粗しょう症を予防しやすく発症を遅らせることができます。
カルシウム▶︎ 牛乳、チーズ、小魚、干しエビ、乾燥ひじき、小松菜、大豆製品 など
ビタミンD▶︎ イワシ、シラス干し、サケ、サンマ、きくらげ、しいたけ など
ビタミンK▶︎ 納豆、パセリ、モロヘイヤ、ホウレン草、小松菜 など
大豆などに含まれているイソフラボンは骨を丈夫にすると言われていますので、豆腐や納豆は特に閉経後の女性におすすめです。
リンを取り過ぎるとカルシウムの吸収を妨げます。特に加工食品、インスタント食品、清涼飲料水などに使われる食品添加物にはリンが多く含まれていますので、取り過ぎに注意しましょう。喫煙や過度の飲酒も骨粗しょう症になりやすいことがわかっていますので、禁煙、節酒に努めましょう。
骨粗しょう症予防の運動
骨は運動によって適度な負荷がかかると、カルシウムが沈着しやすくなり骨密度が高まります。普段から散歩やウォーキングをするように心掛け、体力のある方はジョギング、テニス、ダンスなど、骨にやや強く負荷がかかる運動もおすすめです。「美・健康BODYメイク」では骨粗しょう症による背骨の椎体骨折予防にも役立つ背筋を鍛えるストレッチを紹介していますので、参考にしてください。また、ストレッチを行う場合は、決して無理をしないようにしましょう。運動をして体のバランス感覚を養うことは転倒予防にもなります。加齢に伴って骨や関節、筋肉が衰える運動器症候群(ロコモ)の予防・改善のために、日本整形外科学会ではスクワットや眼を開いた片足立ちなどのロコモ体操を推奨しています(図5参照)。ただし高齢者の方は転倒しないように机などにつかまって行いましょう。
(公財)兵庫県予防医学協会理事・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。
Well TOKK vol.13 2019年4月2日発行時の情報です。