特集「備えておきたい 災害時の健康対策」

ロゲイニングで楽しく健康に!

防災意識が高まる今、実際の避難生活を想定した対策は十分にできているでしょうか。
健康への影響が出やすい避難先でも、ご自身の心や体を守る方法を知っておきましょう。

<この人に聞きました!>

兵庫医科大学 看護学部 看護学科 療養支援看護学 教授
神﨑 初美(かんざき はつみ)先生
疾病のケアと予防、健康維持に関する教育・研究活動を行う。専門領域は成人看護や災害看護など。特に災害看護では、災害支援ナースの養成や地域住民に対する実践的な看護研究に注力。放送大学「災害看護学・国際看護学」担当。 著書「事例を通して学ぶ避難所・仮設住宅の看護ケア」(日本看護協会出版会)。

兵庫医科大学 看護学部 看護学科 療養支援看護学 教授
神﨑 初美(かんざき はつみ)先生

疾病のケアと予防、健康維持に関する教育・研究活動を行う。専門領域は成人看護や災害看護など。特に災害看護では、災害支援ナースの養成や地域住民に対する実践的な看護研究に注力。放送大学「災害看護学・国際看護学」担当。 著書「事例を通して学ぶ避難所・仮設住宅の看護ケア」(日本看護協会出版会)。

突然の避難生活…。状況を想像してみましょう

避難先となる小中学校の体育館は、ライフラインが停止していると室温が調整できず、普段健康な人でも体調管理がしづらくなってしまいます。先に到着した人から過ごしやすい場所が埋まっていくので、後から避難してきた人や要支援者・要介護者などは過ごしにくい場所しか選べないケースも。また、災害発生後48時間から72時間は非常食などの支援物資が届きません。断水して井戸のない場合、水も不足します。
衛生面も不安視されていて、例えばひとりがくしゃみをすると避難所全体にウイルスが拡がり感染症にかかる恐れがあります。もし発病した場合、すぐに病院を受診することができません。お風呂やトイレも普段通りにはいかず、被災地から遠く離れたスーパー銭湯まで車で行ったり、トイレも掃除が行き届いていなかったり、生理用品が不足したりするなどの問題も。安全面では、プライベートの空間が保たれず、着替え場所に困る場面も。他人の気配や音が気になって不眠を訴える人も多いです。

 

避難生活が長引くとどんな症状にかかりやすくなる?

避難所から仮設住宅へ入居できるまで、少なくとも2カ月はかかるといわれています。その間に発生する健康リスクとして、意外にも肥満が挙げられます。行政や企業から支給される非常食には炭水化物やインスタント食品、お菓子が多く、塩分や脂質過多になりやすいのです。ビタミンBやCを含む野菜や果物はほとんど支給されず、栄養バランスにも偏りが出ます。また、高齢者によくあるのがもったいないからと取り置きをして食中毒を発症してしまうケース。
体調管理も難しく、避難所は大勢の人が生活し普段と異なる生活環境のため、健康な人でもストレスなどで血圧が安定しません。もともと血圧が高い人の場合、脳梗塞を発症する可能性も高まります。年齢にかかわらず肩こりやめまい、疲労感など、体調の変化を感じる人も多いです。

いつもと違う状況下でも、過ごし方を工夫して、なるべく“普段通り”を意識しましょう。事前に対策法を知っておくことも大切です。

注意が必要な症状とその対策は?

  • 口腔内不衛生

    断水などで水が不足する日が続くと、歯磨きなど口腔ケアが十分にできません。高齢者の場合、口の中の細菌が原因で誤嚥性肺炎になるケースもあり注意が必要です。

    対策

    水がなくても使えるマウスウォッシュや歯磨きシートを備えておいて、できる限り汚れを落としましょう。歯の表面をこするだけでも効果があります。

  • 静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)

    体を動かさずにいたり、トイレに頻繁に行きたくないからと水分をとらないでいたりすると、血行不良で血栓ができやすくなります。その血栓が肺動脈をふさぐと肺へ流れる血流が低下し、死に至る危険性もあります。

    対策

    毎日水を飲むことはもちろん、朝晩にラジオ体操を行ったり、避難所の周りを歩いたりしてなるべく体を動かしましょう。足のマッサージをしたり、弾性ストッキングを活用したりするのもおすすめです。

  • 持病の悪化

    普段と違う環境で過ごしたり、いつも服用している薬がなくなったりすると、高血圧や糖尿病などの持病が悪化する恐れがあります。

    対策

    薬は1週間分以上は余分に常備しておくと良いですね。また、お薬手帳があれば同じ薬を処方してもらえます。

  • 低体温症・熱中症

    冬は避難所の冷たい床が原因で体が冷え、夏は日中に片付けなどの活動をすることで熱中症になることも。被災者だけでなく災害支援に来たボランティアも、無理をして体調を崩すケースがあります。

    対策

    毛布やカイロで暖をとったり、気温に合わせた服装をしましょう。周りを気にかけるのも大切ですが、疲れたらすぐに休むなど、まずはご自身の体調に気を配りましょう。

  • メンタル不調

    仕事や家族を失った場合や、元の生活に戻れるのかという将来への不安から心のバランスを崩しやすくなります。女性の場合、ストレスなどで生理が止まってしまう可能性もあります。

    対策

    被災地にいる災害支援ナースやカウンセラー、精神科医に話すだけでも気が楽になるかもしれません。また、平常時の気持ちを思い出せるように、普段使用しているものを避難用品として準備しておくのも有効です。時間をかけて立ち直っていくものなので、焦らずゆっくり過ごしましょう。

「安心」を見つけに!出かける防災

いつ起こるか分からない災害に備えて、普段から知識や心構え、防災グッズを備えておきましょう。安心のために訪れておきたいスポットをご紹介します。

阪神・淡路大震災の 教訓から何を学ぶ?

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター事業部運営課長 森川徹 さん

19万点以上の資料や多様な展示を通して震災の経験や教訓を伝え続ける施設。震災を経験した語り部やボランティアガイドも常駐し、実体験の話を聞くこともできます。災害のメカニズムをゲーム感覚で学べるコーナーや映像を見て正しい避難行動を選択する体験コーナーもあり、楽しく防災の知識を身に付けられます。

阪神本線・阪急神戸線
阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
料金
大人600円、大学生450円、高校生以下無料
時間
9:30~17:30(入館は~16:30)
休館日は下記ホームページにてご確認ください。
アクセス
阪神岩屋駅または春日野道駅下車 徒歩約10分、または阪急春日野道駅下車 徒歩約13分
住所
神戸市中央区脇浜海岸通1-5-2
問い合わせ
078・262・5050
URL

震災の記憶を辿ろう

阪神・淡路大震災で被災した神戸港の波止場が当時の姿のまま保存された場所。 復興の過程を記録した映像や写真パネルの展示もあり、震災の凄まじさを肌で感じられます。

阪神本線・阪急神戸線
神戸港震災メモリアルパーク
料金
入園自由
展示エリアは1月10日まで改修工事のため立ち入り不可。
アクセス
阪神元町駅下車 徒歩約10分、または阪急神戸三宮駅下車 徒歩約15分
住所
神戸市中央区波止場町2
問い合わせ
078・321・0085

自分に必要な防災グッズを準備しよう

モンベル うめきた店 店長 竹上悠保 さん

モンベルが扱う軽量で持ち運びしやすいアウトドア用品は災害時にも活躍。コンパクトな寝袋やヘッドランプ、軽量性・保存性・おいしさを実現した「リゾッタシリーズ」など必要なものを揃えておきましょう。

阪急各線・阪神本線
モンベル うめきた店
営業時間
11:00~21:00/不定休
アクセス
阪急・阪神大阪梅田駅下車 徒歩約5分
住所
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪ショップ&レストラン南館5階
問い合わせ
06・6359・1156
URL

街中で災害が発生したらどうする?

一般社団法人うめきたMMO 西尾美紀さん

2024年秋にオープンしたうめきた公園は、広域避難場所に指定された防災機能を有する公園。ターミナル駅直結で、駅周辺のワーカーや旅行者など梅田の来訪者が一時避難する場所となっています。防災スピーカーやマンホールトイレ、非常用発電付きの電灯を備え、365日24時間街中での災害時に活用できるスポットです。

阪神本線・阪急各線
うめきた公園
料金
入園自由
アクセス
阪神大阪梅田駅下車 徒歩約6分、または阪急大阪梅田駅下車 徒歩約7分
住所
大阪市北区大深町5番(サウスパーク)・6番(ノースパーク)
問い合わせ
06・6136・4776(うめきた公園管理センター)
URL

震災や防災に関連するイベント

阪神・淡路大震災から30年が経つ今年、震災や防災に関連したイベントが数々開催されます。見て、知って、感じて、日々の意識を見直すきっかけにしませんか。

〜3/9まで
阪神・淡路大震災30年 企画展 1995⇄2025 30年目のわたしたち

世界で起こる自然災害や紛争に対し、今それぞれに生きる「わたしたち」が希望となること、そんな願いの込められた現代アート展です。

料金
大人1,600円、大学生1,000円、高校生以下無料
時間
10:00~18:00(入場は~17:30)
休館日は下記ホームページにてご確認ください。
住所
神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 兵庫県立美術館
問い合わせ
078・262・1011
URL
1/15〜1/19
みやこめっせ防災ウィーク

阪神・淡路大震災の様子を写真パネルの展示で見て学べます。また防災グッズも数々展示されるので、実物を参考に何を揃えるべきか、ぜひ考えてみましょう。

料金
無料
時間
9:00~17:00
住所
京都市左京区岡崎成勝寺町9-1
展示場所は1階ホワイエ
問い合わせ
075・762・2630
URL
1/24〜2/2
第30回神戸ルミナリエ

神戸の街を彩る冬の風物詩。阪神・淡路大震災の犠牲者への鎮魂と都市再生への希望が込められています。美しい光にさまざまな想いを馳せてみませんか。

料金
無料(一部有料エリアあり)
問い合わせ
078・230・1001
URL
展示場所は東遊園地、旧外国人居留地、メリケンパーク。
詳しくは下記ホームページにてご確認ください。
https://kobe-luminarie.jp/
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イザ!美かえる大キャラバン!2025

HAT神戸エリアが発信拠点となる防災イベント。学生や市民団体が楽しく防災を学べるブースを出展予定。豪華景品が当たるガラガラ抽選会も実施されます。

料金
無料
時間
13:00〜16:00 (受付は12:45~15:45)
住所
神戸市中央区脇浜海岸通1-5-2
会場はJICA関西、人と防災未来センター
問い合わせ
078・335・1335(NPO法人プラス・アーツ)
URL
CHECK
梅田防災スクラム

梅田エリア全体が手を取り合って「みんながみんなを守るまち」を目指す取り組みです。防災マニュアルやサイネージ、SNSなどでの情報発信や、防災イベント「梅田防災スクラムの日」を実施し、人・企業・エリアの力をひとつにしていきます。

https://umeda-connect.jp/bo-sai/

Check!

防災備蓄収納で安全に過ごそう!

健康づくり応援サイト「Wellness PLUS」では、防災備蓄収納マスタープランナー・三原麻弓さんによる、災害時にも安全安心に過ごせる家づくりのヒントをご紹介。
https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/column/52318/

Well TOKK vol.36 2025年1月7日発行時の情報です。

  • ※掲載の店舗・施設の営業時間や定休日などは、予告なく変更される場合がありますので、ご了承ください。