Wellness講座「お酒を飲まない人も注意!『脂肪肝』」

お酒をたくさん飲む人の病気というイメージが強い「脂肪肝」。
「私は飲酒習慣がないから大丈夫!」と考えている人もいるのではないでしょうか?
しかし、お酒を飲まない人や痩せている人が脂肪肝と診断されるケースもあり、油断は禁物。
今回は、飲酒が原因ではない「非アルコール性脂肪性肝疾患」を中心に、脂肪肝の原因や診断・治療などについてご紹介します。

<教えてくれるのは>

平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生
(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生

(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

Q.脂肪肝はどんな病気ですか?

A.

脂肪肝は、肝臓に脂肪が沈着し、肝臓としての機能を十分に果たせなくなる病気です。何もせずに放置すると、脂肪肝炎から肝硬変へと進行し、さらに肝がんを発症することもあります。

脂肪肝には、過剰飲酒が原因となるアルコール性と、飲酒が原因ではない非アルコール性の2種類があります。純エタノール換算で1日あたり60g以上(日本酒3合、ワイン600ml、ビール1500mlに相当)の飲酒が習慣となっている場合はアルコール性、飲酒量が男性で30g未満、女性で20g未満の場合は非アルコール性と定義されます。
現在、国内の成人の4人に1人が、「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルド)」であると推計されており、まったくお酒を飲まない人でも発症することがあります。NAFLDの大部分は、病態がほとんど進行しない「非アルコール性脂肪肝(NAFL:ナッフル)」です。しかし、NAFLDの一部(10〜20%)は徐々に炎症が進行して「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」となり、さらに線維化が進むと肝硬変や肝がんにつながるリスクがあります。

NAFLDの主な原因は食べ過ぎや運動不足であり、メタボリック症候群や肥満の人はNAFLDになりやすいことがわかっています。また、無理なダイエット、閉経によるホルモンバランスの変化が原因となることもあります。

Q.診断はどのように行うのですか?

A.

脂肪肝には、ほとんど自覚症状がありません。健康診断で、肝機能検査〔AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GPT〕、肥満度(BMI)、飲酒習慣などから脂肪肝のリスクが高いと判断されます。また、腹部超音波検査を受けることで発見されることも多くなっています。さらに、肝炎ウイルス感染(B型・C型)や薬剤による肝障害、自己免疫性肝炎などの検査をして、ほかに肝障害を起こす原因が除外されると脂肪肝と診断されます。
NASHへと進んでいる可能性がある場合には、線維化の程度を調べる計算式(FIB-4 Index)でスクリーニングしたり、エラストグラフィ(画像検査)や肝生検(肝臓組織の一部を採取して行う検査)を行ったりして、進行度の判定が行われます。

Q.治療はどうするのですか?

A.

残念ながら、現段階で脂肪肝に有効な治療薬はありません。アルコール性肝障害の治療法は、まず断酒です。
NAFLDの基本的な治療は食事や運動といった生活習慣の改善になります。
NASHで肥満がある場合は、食事と運動による減量に取り組みましょう。まずは体重の7%の減量を目標とし、治療効果が得られたら、次は標準体重を目標に徐々に減量を続けます。
減量だけでは十分な効果が得られない場合もあります。NAFLDには糖尿病や脂質異常症、高血圧などの基礎疾患が関わっていることも多く、これらの合併疾患に対する薬物治療を併せて行うことで、肝機能も改善することが期待できます。

Q.普段の生活に取り入れられる予防策はありますか?

A.

NAFLDは肥満が大きなリスク要因であり、予防策はやはり食事と運動といった生活習慣の改善です。普段から体重計に乗って自分の体重をモニターする習慣を身につけ、標準体重やメタボ健診の基準(BMI:25未満、腹囲:男性85cm未満・女性90cm未満)を超えないように気をつけましょう。
メタボ健診や健康診断を定期的に受けることも重要です。メタボリック症候群やその予備軍と言われた人は、特定保健指導をぜひ利用してください。

日々の食生活では、糖質・脂質を取りすぎないことが大切です。果物や清涼飲料水など果糖を多く含む食品、ご飯・パン・麺類などの炭水化物を控えめに、また、飽和脂肪酸を多く含む動物性の油、リノール酸を多く含む油(紅花油・コーン油など)、トランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングの取りすぎに注意しましょう。
逆に、多価不飽和脂肪酸を多く含む青魚やビタミンEを含むナッツ類・植物性オイルなどは、積極的に摂取すると良いと言われています。

運動も大切です。運動することで肝臓にたまった脂肪を消費するほか、筋肉を使うことで肝臓の働きを助けます。
有酸素運動が有効であり、おすすめは毎日20~30分のウォーキングです。少し汗ばむ程度の早足を心掛けてみてください。さらに、スクワットなどの筋トレ(レジスタンス運動)を取り入れると、より効果的です。簡単な運動でも効果は期待できますので、毎日続けて習慣化することを目指しましょう。

\ COLUMN /
そもそも肝臓って、どんな臓器?

肝臓は脳に次いで大きな臓器で、成人男性で1.0~1.5kgほどの重さがあります。主な機能は、血液によって肝臓に運ばれてくる様々な物質の代謝・解毒・貯蔵や、コレステロール・胆汁などの合成です。飢えに備えたり、毒成分から身体を守ったりと重要な役割を果たしていますが、「沈黙の臓器」と呼ばれることがあるように、状態が悪くなってもすぐに症状が出ることはありません。現代のような飽食社会で食べ過ぎや飲み過ぎが続くと、肝臓に過度な負担がかかり脂肪肝などの疾患につながってしまうため、注意が必要です。昔から重要なことを「肝心(腎)」と言いますが、その言葉のとおり、肝臓はとても重要な臓器ですから大切に守りましょう。

「NAFLD/NASH」から「MASLD/MASH」へ名前が変わる!?

本稿では、非アルコール性の脂肪肝を「NAFLD」「NASH」という用語で説明をしてきましたが、これらの名称に含まれる「alcoholic(アルコール性)」や「fatty(太った)」といった言葉が不適切で、病気の性質を正しく表現していないという考えから、2023年欧米や日本肝臓学会でそれぞれ「MASLD(マッスルディー)」「MASH(マッシュ)」という名称に変更することが決まりました。
「MASLD」とは、Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Diseaseの略で、「代謝機能障害に関連した脂肪性肝疾患」という意味です。

ALT値で肝臓のシグナルに気づこう!「奈良宣言2023」

日本肝臓学会では2023年6月、肝臓病の早期発見・早期治療を目指す「奈良宣言2023」を発表しました。肝機能は、肝機能検査の結果や体重、飲酒習慣などから総合的に判断されますが、「奈良宣言2023」では、血液検査で広く測定されているALT値が30を超えている場合、他の値が正常範囲でも慢性肝臓病(CLD)を疑って検査などを行うことを推奨しています。「沈黙の臓器」の小さな声にいち早く気づくために、ALT値をチェックして、30を超えたら、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

Well TOKK vol.32 2024年1月10日発行時の情報です。