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Wellness講座「健康診断の結果、活かしていますか?」
年に1回、企業などに勤務している場合は「定期健康診断(職場健診)」、自営・自由業の方は40歳以上(74歳まで)の場合「特定健康診査(いわゆるメタボ健診)」の受診が推奨されています。
しかし、「健康診断を受けてはいるけど、結果はざっと見るだけ」といった人も多いのではないでしょうか。結果の見方やポイントなどを学んで、健康診断をもっと活用しましょう!
平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生
(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。
平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生
(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。
Q.必ずチェックしたほうが良い項目はありますか?
「BMI」と「血糖」「血圧」「中性脂肪」
「HDL(善玉)コレステロール」は、ぜひチェックしてください。これらはいずれも生活習慣病に大きく関係する数値です。
BMI[体重(kg)÷身長(m)2]は肥満度を表す指標で、BMIの値が25を超えると脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクも高くなります。日本では、40~74歳の全ての人が「特定健診」(いわゆるメタボ健診)の対象ですが、腹囲に加えて血糖・血圧・中性脂肪・HDL(善玉)コレステロールは、このメタボ健診にかかわる項目になります。
特定健診は生活習慣病の予防と進行させないための健康指導を目的としています。腹囲(内臓脂肪の蓄積を反映します)が基準値以上で、かつ血糖・血圧・中性脂肪(またはHDLコレステロール)のうち2項目が該当する場合、「メタボリック症候群」と判定され、積極的保健指導が受けられます。また、1項目でも該当すれば、予備群として動機づけ支援の指導が受けられます。内臓脂肪が蓄積していると、生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症など)になりやすく、さらに動脈硬化が進んで脳卒中や心疾患を起こしやすいことがわかっているからです。メタボ判定を受けた人が保健指導を受けて体重を減らすと、血糖・血圧・中性脂肪に加えて、肝機能や尿酸の値も改善するというデータも報告されています。一人ひとりの身体の状態、生活習慣などにあわせて、きめ細かな保健指導が行われますので、メタボ健診や特定保健指導を大いに活用して生活習慣病を予防しましょう。
Q.「基準値・基準範囲」って何ですか?
健診結果表には「基準値・基準範囲」が示されています。これはあくまで健康な人の検査値が含まれる目安の数値です。多数の健康な人から得られた測定値が統計学的に正規分布する時に、上限の2.5%と下限の2.5%を除いて、平均値をはさんだ95%が含まれる範囲を基準値として用いています。そのため、健康な人でも5%は基準値からはずれることになります。
また基準値は、特定の病気の診断・発症の予測・治療の目標に用いられる「臨床判断値」とも異なりますので注意が必要です。各自の検査値は基準値・基準範囲を参照して判定されますので、健診結果表(診断指示・総合判定)をよく確認しましょう。また判定区分は健診の種類によって異なることがありますので気をつけましょう。
Q.健康診断の結果、全て「異常なし」でしたが、結果の用紙は保管しておいたほうが良いですか?
保管しておくとこれまでの検査値を経年的にみれますので、健康状態が徐々に変化しているのに気づく可能性があります。
例えば、女性の場合は更年期に高血圧や骨粗しょう症の発症、動脈硬化を引き起こすLDL(悪玉)コレステロール値が上昇しやすくなります。過去のデータがあれば徐々に上昇したのか、急に上昇したのかの判断がつき、より適切な治療や生活改善を考えることができます。
また、せっかく時間をつくって健診を受けたのですから、結果はきちんと活かしましょう。疑問があれば企業健診でしたら産業医やかかりつけ医に相談してください。人間ドックのように自分で健診先を選んで受診する場合は、結果を健診医が対面で説明してくれるところにしておくと、再検査や指導が必要な結果が出た場合、その場で相談できるので安心です。
Q.がんになるのが心配です。がん検診は受けたほうが良いですか?
「胃がん」「肺がん」「大腸がん」「乳がん」「子宮頸がん」は、定められた年齢の人は定期的に検査を受けたほうが良いです。いずれも対策型がん検診として国が推奨しています。早期発見・早期治療が有効ながんだからです。しかし残念ながら、日本のがん検診の受診率は、海外と比べて低い状況です。
「子宮頸がん」なら20歳以上の女性、それ以外のがんについても40歳以上になると加入保険や自治体から検診クーポンなどが届くと思います。一部自己負担が必要なこともありますが、安価で安全な検査を受けられます。また、健診とがん検診が同日に受けられる「セット健診」もありますので、ぜひ活用してください。
「乳がん」や「卵巣がん」など同じ種類のがんが家族内に多く発生している場合は、発症リスクが高くなります。遺伝子検査など専門的な検査もありますので、医療機関に相談してみてください。
健康診断は健康の維持に非常に役立つものです。
仕事や子育て、介護など、日々忙しくしている人ほど自分のことは後回しになりがちですが、ぜひ年に1回は健診や必要に応じてがん検診を受けてください。
「検診」と「健診(健康診断)」の違いをご存じでしょうか?
「検診」は、何らかの症状やリスクがある人が特定の病気の有無を確認するためのもので、「がん検診」などが代表的です。
これに対して「健診」は、健康な人が主な対象で、健康維持や病気の予防が目的です。健康だからといって何の検査も受けずにいると、自覚症状が出てくるまで病気に気づくことができず、症状が進行してしまうことも。だからこそ、定期的に「健診」を受け、早期発見に役立てることがとても重要です。
なお「健診」は、今の健康状態を知るための検査です。健康診断前だけ多飲や過食を控えるのではなく、普段通りの生活を続けたうえで検査に臨みましょう。もし、当日の体調が悪い、症状があるような場合は、健診は控えてクリニックや病院で診てもらいましょう。
法定健診(職場健診や特定健診)の対象とならない方でも、多くの自治体で無料(もしくは一部負担)の健診を実施していますし、扶養家族の健診を行う企業も少なくありません。地域のコミュニティセンターでの出張集団健診や、託児サービスがついたレディースデーを実施する施設などもありますので、自治体からの情報をチェックしてみてください。かかりつけ医が決まっていない方は、近所の内科などで健診を受けておくと、いつでも相談できる関係づくりにもつながります。
また、健康診断の受診は、医療費の節約にもつながります。健診受診者の方が、その後の医療費負担が少なくなる傾向にあるからです。
様々な補助やジェネリック医薬品を選択するなど、医療費を節約する手段はありますが、そもそも健康であれば医療費はかかりません。定期的な健康診断の受診は、体だけでなく家計にも優しいのです。
Well TOKK vol.29 2023年4月4日発行時の情報です。