wellness講座「目の不調と解消法」

パソコンや携帯電話(スマートフォン)は現代生活に欠かせないもの。でも、そのために私たちは知らないうちに目を酷使し続けています。視力の衰えにもつながる目の疲労や病気をどうやって避けたらいいか、また、この時期、気になる紫外線と目の健康についても考えます。

目の疲労とそれに伴う目のトラブル

昔の人に比べて私たちは近くのものを見ることが格段に増えましたが、特にパソコンやスマートフォン(スマホ)、テレビなどのディスプレイ画面(これらを総称してVDT*と言います)を長時間見る生活が普通になってきました。そのために目を酷使し、VDT症候群と呼ばれる心身に様々な不調が起きたり、「涙の病気」であるドライアイになったりします。
*VDT:Visual DisplayTerminal(画像表示端末)

ドライアイ

近年、日本人の1000万人以上がドライアイと推定されています。
涙は目を潤す、目の中の汚れを洗い流す、細菌感染を防ぐなどの大切な役目を担っています。ドライアイは涙の分泌が低下したり涙の蒸発が多くなるために、涙の量が減ったり、成分が変化したりして、眼球が乾燥する病気です。目が疲れる、目が乾く、目がゴロゴロする、目が開けにくい、まぶしい、目がかゆい、といった症状が現れ、悪化すると目の角膜が傷つきやすくなったり、細菌に感染しやすくなったりします。
また、シェーグレン症候群と言って、涙腺に異常が生じる自己免疫疾患によってドライアイが起こることもあります。
しばらく目を休めたり睡眠をとったりしても目の不快感が治まらない人は、早めに眼科医に相談しましょう。

VDT症候群

ディスプレイ画面を長時間見ることから起こるのがVDT症候群。中でも目の疲労が多く、厚生労働省の「技術革新と労働に関する実態調査」(平成20年)によると、パソコンをはじめとするVDT作業をしている人の90.8%が目の疲れ・痛みを感じています。ほかにも、目がショボショボする、目がかすむ、ぼやけて見える、目が乾く、目が充血する、などの症状が出ます。
それによって首や肩のこり、頭痛、イライラ感、吐き気など全身にも影響が出てきたものを眼精疲労と言います。
日常生活の中でもパソコンやスマホを絶えず見ている人は注意が必要です。
目は図のような構造と働きをしています。毛様体筋(もうようたいきん)が伸び縮みして水晶体の厚さを調整することで、遠くにあるものも近くにあるものもはっきり見えます。しかし、パソコンやスマホ、ゲーム機などのVDTを見続けていると、毛様体筋が縮んだままになり、焦点が合いにくくなります。特にスマホは画面も文字も小さいため、顔に近づけて見続けることが多く、目に大きな負担をかけます。

パソコンをよく使う人のための対策

目の疲労を防ぐために、パソコンなどで長時間の作業を行うときは、時々1〜2分の小休止をとり、1時間やると10〜15分作業をやめて休息したり、目をあまり使わない別の作業をしたりするようにしましょう。
休息のときは軽い体操やストレッチ、リラクセーションなどをしたり、しばらく遠くを見て目の疲れをとるといいでしょう。
また、画面を集中して見ているとまばたきが減るので、意識してまばたきするようにしましょう。
蛍光灯など部屋の照明の光源が視野に入らないようにし、また画面に照明器具や窓などが映り込まないようにして目の負担を減らしましょう。
さらに、図のようなことに気をつけてください。

スマホをよく使う人のための対策

  • 暗い部屋でスマホを見るのはやめましょう。
  • スマホに輝度の調節機能がついている場合、部屋の明るさと画面の明るさを近づけるようにしましょう。
  • スマホのズーム機能で画面を拡大したり文字サイズ変更で大きくしましょう。
  • 目がショボショボするときは、蒸しタオルを目にあてて血流をよくしましょう。

ドライアイの対策

ドライアイは「目の生活習慣病」とも言われます。上の「パソコンをよく使う人のための対策」のほか、以下のことにも気をつけましょう。

  • 低温や低湿度は涙が蒸発しやすくなり、ドライアイを悪化させます。エアコンを使うときは温度を下げすぎず、加湿器等で部屋の乾燥を防ぐようにします。また、エアコンの送風が直接目に当たらないようにしましょう。
  • コンタクトレンズ(特にソフトコンタクトレンズ)は涙の蒸発を促進するので、ドライアイの大きな原因の1つになっています。外せるときはなるべく外して、メガネをかけるなどしましょう。
  • 薬局で売られている点眼薬の中には、防腐剤が入っているなどかえってドライアイによくないものもありますので、眼科医に指導してもらい、適切な点眼薬を使うようにしましょう。

コラム 「紫外線にも気をつけて」

5月から8月は紫外線が最も強くなる季節。紫外線は肌だけではなく、目にも大きな影響を与えます。強い紫外線を受け続けていると、目の角膜や結膜、水晶体、網膜を傷つけます。その結果、急性の紫外線角膜炎、翼状片(よくじょうへん)〈結膜が増殖して角膜に侵入する病気〉、水晶体が濁る白内障になったり、網膜傷害によってときには失明につながることもあります。
特に午前10時から午後2時頃まではなるべく日光を避けて、外出する必要があるときは紫外線を高率にカットするUVサングラスをかけましょう。海も紫外線が強いので、サングラスは必需品です。

監修:平田結喜緒ひらたゆきお先生

(公財)兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ参与。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

Well TOKK vol.10 2018年7月3日発行時の情報です。