wellness講座「夏バテ・紫外線対策マニュアル」

いよいよ夏到来。旅行やレジャーなどの楽しい計画が待っていても、夏バテしたら動く気にもなりません。夏にピークとなる紫外線も大敵。それぞれしっかり対策を立てて、充実した夏を過ごしましょう。

夏バテの原因と対策

日本の夏は高温多湿、とりわけ都会ではアスファルトやコンクリートで地面が覆われ、エアコンから出る排熱などでヒートアイランド現象が起こります。一方、エアコンの効いた室内はいつも冷え冷え、そんな中で体温調節をする自律神経は何とか体温を一定に保とうとフル稼働しますが、それも限界に達すると、「体がだるくて疲れやすい」「食欲がない」「眠れない」といった体調不良が起こります。これがいわゆる「夏バテ」です。夏バテにはビタミンやミネラル、タンパク質などの不足も大きく影響しています。その原因と対策を見てみましょう。

体温調節がうまくできない

原因

高温の屋外と冷えきった屋内を出たり入ったりしていると、自律神経が乱れ、うまく働かなくなる。室温の下げ過ぎも原因の1つ。

対策

室外と室内の温度差は小さくする。適度な運動を行う。

\ここがポイント/

屋外と室内の温度差が大きいと体温調節がうまくできなくなるので、温度差は5度以内に。
冷え過ぎは体に負担をかけるので、室内の温度は25〜27度に設定。
気温が高くない朝方や涼しくなった夕方に10〜15分ウォーキングをするなど、適度な運動は血行や新陳代謝の調節能力を高める。

食欲がない・体力低下

原因

冷たい飲み物ばかり飲んでいると胃腸の働きが低下。また、そうめんなど炭水化物ばかり食べていると栄養が偏り、体力が低下し、やる気も出なくなる。

対策

香辛料や香味野菜なども使ってバランスのいい食事を取る。

\ここがポイント/

栄養バランスを考えながら三食をきちんと食べる。
疲労回復に効果のあるビタミンB群は豚肉、レバー、うなぎ、豆類などに、ミネラルは緑黄色野菜に多く含まれる。
香辛料のきいたカレー、ショウガやシソなどの香味野菜、レモンや梅干し、酢の物は食欲を増進させる。
冷たい飲み物を取り過ぎないようにし、清涼感のあるミントティーや昆布茶などを楽しむ。

水分不足・ミネラル不足

原因

大量に汗をかく夏は、水分や塩分、ミネラルが流れ出て不足しがちに。

対策

足りなくなる前にこまめに補給。

\ここがポイント/

水分やミネラルを早めに補給しないと熱中症に陥る恐れも。高齢者や子どもは特に注意。熱中症の予防には「早め・こまめ」の水分補給を。
適量のスポーツドリンクなどで水分、塩分の補給を。ただし糖分が多く含まれた飲み物は肥満や糖尿病の原因にもなるので飲み過ぎに注意。ビールなどのアルコールは利尿作用があり水分補給にならない。
起床時、入浴後、就寝前はしっかり水分補給を。

朝起きた時しんどい

原因

夏は熱帯夜が続くことも多く、夜ぐっすり眠れないため、疲れが取れずにたまってしまう。

対策

就寝前の入浴、室温調節、安眠グッズなどで質のいい睡眠を。

\ここがポイント/

寝る前に37〜40度のぬるめの湯船にゆっくりつかれば自律神経の働きも整う。
寝室の温度を25〜27度、湿度を50~60%に設定しておくと眠りに就きやすい。エアコンのタイマーは1~2時間で切れるようにし、エアコンや扇風機の風が直接体に当たらないように。
枕、シーツなどは通気性の良い天然素材のものを利用する。

夏バテはどれか1つが原因というよりも、いくつもの原因が重なって起こるもの。そして夏バテになるとなかなか抜け出せず、せっかくの夏が無気力のまま終わったということになりかねません。生活が不規則になり、食事が偏ったりしがちな夏だからこそ、普段から健康を守るように意識して暮らしましょう。

紫外線のことをきちんと知って賢く予防

昨今、小麦色の肌=健康の象徴と思っている人は少ないでしょうが、日本では紫外線が皮膚をいかに傷つけるかはまだ十分知られているとは言えません。太陽から地球に注がれる光には赤外線、可視光線、紫外線などがあります。紫外線は波長の長さによってUV-A、UV-B、UV-Cの3つに分けられます。皮膚を傷つけるUV-A、UV-Bは日焼け、シミ、しわの原因となり、長い間浴び続けていると皮膚がんや白内障を引き起こすこともあります。
紫外線の強いオーストラリアでは、テレビや新聞で翌日の紫外線予報が伝えられ、通学時には長袖・サングラス・日焼け止めが利用されています。

ピークは5月から8月の正午前後

日本では1年のうち5月から8月が最も紫外線が強くなり、1日のうちでは正午をはさんだ数時間が一番強くなります。
砂は紫外線を強く反射するため、海水浴に出かけるときはしっかり紫外線対策をしましょう。薄曇りの日でも晴天の日の80%の紫外線が注がれるので対策は欠かせません。
大阪の紫外線の強さを月ごとに示すと下のグラフのようになります。

大阪の一日最大UVインデックス(推定値)の2016年推移グラフ(気象庁「地球環境のデータバンク」より)

※UVインデックスは、紫外線が人体に及ぼす影響の度合いをわかりやすく示すために、紫外線の強さを指標化したもの。

紫外線の予防法

厚生労働省のwebサイト「紫外線環境保健マニュアル2015」*によると、紫外線の影響が強いと考えられる場合には、次のような対策を行うことが効果的とされます。

❶紫外線の強い時間帯の外出を避ける。
❷日陰を利用する。
❸日傘を使う。帽子をかぶる。
❹襟や袖のついた衣服で覆う。
❺サングラスをかける。
❻日焼け止めを上手に使う。

なるべく皮膚に紫外線が当たらないようにして、炎天下に出かけるときは日焼け止めクリームを塗るなど対策を立てましょう。日焼け止めクリームは汗で流れたりするので、2、3時間毎に塗り直さなければ効果が薄れます。

紫外線環境保健マニュアル2015はこちら>>

子どもたちの紫外線対策も忘れないで

紫外線に当たると体内に骨の成長に必要なビタミンDができるので、短時間の日光浴は必要ですが、赤ちゃんは紫外線による悪影響を受けやすいため、長時間日光を浴びさせてはいけません。
子どもたちには元気に外で遊んでほしいですが、炎天下はなるべく避けて、帽子をかぶらせる、子ども用の肌に優しい日焼け止めクリームを塗るなど、紫外線対策も忘れないでください。

監修:中尾一和先生

現職:京都大学メディカルイノベーションセンター特任教授、認定NPO法人日本ホルモンステーション理事長、京都大学名誉教授。京都大学医学研究科EBM研究センター長、同副研究科長、同教育研究評議会評議員、同探索医療センター長等を歴任。日本内分泌学会元理事長、日本肥満学会前理事長。紫綬褒章受章、武田医学賞、日本医師会医学賞ほか受賞。

Well TOKK vol.6 2017年7月3日発行時の情報です。