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wellness講座「免疫力アップは日常生活から」
私たちの身のまわりにはウイルスや細菌、カビ、寄生虫など、人を病気にし、伝染する可能性があるものがあふれています。それらが体内に入ってきた時、すばやく排除して体を防御するしくみが免疫です。免疫のしくみを知り、免疫力がアップする生活習慣を身に付けましょう。
様々な敵から体を守る
免疫とは自分と自分以外の異物を区別して、体内に入ってきた異物を見つけ、攻撃して、排除するシステムです。また、例えば、水ぼうそうに一度かかると、二度目は症状が軽くて済みますね。これは水ぼうそうのウイルスを抗原(こうげん)として、それに対抗する抗体(こうたい)が体内にでき、抗原の情報が記憶されるので、二度目には素早く対応できるからです。これも免疫の働きです。
さらに、私たちの体の中では毎日数千個のがん細胞が生まれていることが知られています。免疫は、このがん細胞が異常増殖してがん組織になる前に見つけ出し、撃退するのです。
免疫は二段構え
免疫は自然免疫と獲得免疫の2つに分けられます。自然免疫は生まれつき持っているシステムです。異物をのみ込む細胞のマクロファージや、たくさんの突起を持つ樹状細胞などがいつも体内をパトロールしていて、侵入してきた異物を発見し、食べたり攻撃したりします。
それとともに、異物の情報が免疫の司令塔であるヘルパーT細胞に伝えられます。すると生まれてから獲得し続けている強力な免疫、獲得免疫が働き始めます。ヘルパーT細胞はキラーT細胞やB細胞に攻撃の指令を出します(下図参照)。
自律神経、内分泌、免疫
WellTOKKvol.3「ストレスに負けない体と心」で自律神経、内分泌、免疫という3つのシステムはお互いに強く影響し合っていることをご紹介しました※。例えば自律神経が乱れると、免疫の働きが低下してカゼを引きやすくなったり、逆に過剰反応になると花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患を引き起こしたりします。そして内分泌、つまりホルモン分泌も免疫力と深く関わっているのです。
※ WellTOKKvol.3の内容はこちら >>
腸内細菌と免疫
飲食物に潜む危険な細菌やウイルスを取り込まないために、腸には人の免疫の70%が集中していると言われます。一方、腸内には乳酸菌などの善玉菌、有害な悪玉菌、さらにどちらにもなる日和見菌など数百種類・百兆個以上の細菌がいて腸内環境を作っています。これを腸内フローラといいますが、これら腸内細菌のバランスが悪くなると腸内の免疫もうまく働かなくなります。
女性ホルモンと免疫
私たちの体内では100種類以上のホルモンが作られており、女性ホルモンもその一つ。卵巣から分泌される女性ホルモンは、排卵、妊娠、出産などによって大きく変動しますが、30代半ばを過ぎると卵巣の機能が衰え始め、免疫にも影響を与えます。そこで、食事・運動・睡眠などの生活習慣を整えて、自律神経、内分泌、免疫の3つのシステムがうまく働くように支えることが大切です。
免疫力を高めるコツとは!?
食事は基礎の基礎
食事の基本はいろいろな食材をバランスよく食べること。さらに免疫力を高めるために、次のようなことを心掛けましょう。
①腸内環境を整えるものを食べる
納豆、みそ、醤油などの発酵食品、ヨーグルトなどの乳酸菌飲料、食物繊維を多く含むカボチャ、キャベツ、リンゴ、大豆、海草類、オリゴ糖を多く含む玉ねぎ、ゴボウ、白ネギ、バナナなどを食べて腸内環境を整えましょう。
②タンパク質を取る
免疫細胞が産生する抗体は主にタンパク質でできています。タンパク質が不足すると免疫力が低下するので、肉や魚、卵、豆腐や豆類、チーズや牛乳を取りましょう。
③抗酸化作用のあるものも大切
活性酸素はある程度体に必要ですが、増えすぎると体を攻撃し始めます。ニンジン、ホウレンソウ、アボカド、牡蠣、アサリなどビタミンやミネラルの豊富な食材は、抗酸化作用を高め、活性酸素を取り除いてくれます。
規則正しい生活習慣が大切
寝るのがいつも深夜とか、昼夜逆転や徹夜など、不規則な生活は自律神経やホルモン分泌のバランスを崩し、免疫力を落とします。規則正しい生活を心掛けましょう。
また、質のよい睡眠は免疫力に欠かせません。ベッドに入る前に飲食したり、テレビ、パソコン、携帯電話の画面を見るのはやめましょう。
ストレスをためず、笑いのある暮らしが免疫力を高めることが知られています。
体を冷やさない
体温が1度下がると免疫力が3割低下するといわれます。お風呂はシャワーだけでなく湯船に浸かりましょう。約10分湯船に浸かると体温が約1度上がると考えられています。
適度な運動
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動は血行や新陳代謝をよくし、体に酸素を取り入れ、体温を高めることが知られています。
現職:京都大学メディカルイノベーションセンター特任教授、認定NPO法人日本ホルモンステーション理事長、京都大学名誉教授。京都大学医学研究科EBM研究センター長、同副研究科長、同教育研究評議会評議員、同探索医療センター長等を歴任。日本内分泌学会元理事長、日本肥満学会前理事長。紫綬褒章受章、武田医学賞、日本医師会医学賞ほか受賞。
Well TOKK vol.5 2017年4月3日発行時の情報です。