wellness講座「ストレスに負けない体と心」

気候の変化による体調不良、職場や家族の人間関係、経済的な不安など、人は生きている限り、ストレスから逃れることはできません。それに押しつぶされないでしなやかに生きていくために、ストレスを理解し、うまく乗り越える工夫をしましょう。

ストレスとは?

ストレスを引き起こす原因を「ストレッサー」、それによって起こる生体の反応を「ストレス反応」といいます。例えば、膨らんだ風船を指で押すとへこみます。押す指がストレッサーで、へこみながらも押し戻して元の形に戻ろうとする反応がストレス反応です (図参照)。
ストレスは全部が悪いわけではありません。適度なストレスは脳や自律神経に刺激を与え、活動を活発にします。それによって、次に来るより大きなストレスに耐える力が身についていきます。

ストレス反応のイメージ

例えば冷水摩擦をすることで寒さに対するストレス反応の能力が高まり、寒い季節になってもカゼを引きにくくなります。

ストレスの原因

ストレッサーには、暑さ・寒さ、騒音など物理的なもの、化学物質など化学的なもの、ウイルスや病原菌など生物的なもの、人間関係や生活の不安といった精神的なものなどたくさんありますが、比較的気が付きやすいのは精神的な原因です。
厚生労働省の「労働者健康状況調査」(平成24年)によると、仕事や職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じている人は全体の60.9%という高い数字が出ています。原因としては職場の人間関係が最も多く、仕事の質、仕事の量が続きます。IT化で便利になる一方、常に時間に追い立てられている感覚を持つ人も少なくありません。また、親の介護や家族内のトラブル、経済的困窮や将来の暮らしに対する不安など、日々の生活が気付かないうちにストレスの原因になっているケースも増えています。

ストレスで起こる不調や病気

ストレス反応としては、下の表のように、体に表れるもの、心に表れるもの、行動に表れるものがあります。これらがあっても、体が対応して乗り切ることができれば問題はないのですが、長く続くと、いわゆるストレス病になる恐れがあります。ストレス病としては、うつ病、高血圧、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)、肥満症、糖尿病、心筋梗塞(こうそく)などが挙げられます。また、ストレスが病気の原因にはならなくても、がんや生活習慣病などを悪化させることもあります。

ストレス反応の初期症状

体▶︎ 頭痛、めまい、不眠、食欲不振、胃痛、下痢・便秘など
心▶︎ 不安、イライラ、うつなど
行動▶︎ 仕事のミス、喫煙や飲酒量の増加、様々な依存症など

体を調整する3つの働き

私たちの体は①自律神経系、②内分泌系、③免疫系の3つの働きによってバランスが保たれ、健康が維持されています。

①自律神経系

自律神経には交感神経と副交感神経があり、1つの器官に対して逆の働きをします。交感神経が優位になると、体を戦闘モードにするノルアドレナリン、アドレナリンなどのホルモンが分泌されます。その結果、血圧が上昇し、心拍数が増加し、血管が収縮し、エネルギー源の血糖が上昇しますが、消化器系の活動は抑制されます。強いストレスを受けている時は戦闘モードになっています。一方、副交感神経が優位になると体はリラックスモードになり、血圧が下がり、心拍数が減少し、血管が拡張し、消化活動が促進されます。

②内分泌系

ストレスを受けると内分泌系が働き、ストレスホルモンである副腎皮質刺激ホルモン、アドレナリンが分泌されます。代謝を活発にし、免疫を抑制するコルチゾールや、痛みや緊張を和らげるβ-エンドルフィンが分泌されます。

③免疫系

免疫系は、ウイルスや病原菌などから体を守り、がんの発生を防ぎますが、自律神経系や内分泌系の影響でその働きが増強したり、減弱することが知られています。

これでストレスを乗り切ろう!

ストレスを乗り切るためには、まず自分のストレスを知ることが大切です。もしストレスがたまっていると感じたら、原因を探りましょう。ストレッサーは1つとは限りません。また、結婚、昇進、転居、進学など、おめでたいことが原因になる場合もあります。
ストレスを乗り切るために、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。
芸術を楽しむ、趣味に打ち込む、適度な運動をする、自然に親しむ、旅行をする、おいしいものを適度に食べる、買い物を楽しむ、静養する、親しい人と談笑する、ペットを飼うなど、いろいろな解消法を試してみましょう。
また、一人で心の中にため込まずに、家族や友人など親しい人に相談してみましょう。誰かに話すだけで気持ちが楽になることもよくあります。

監修:中尾一和先生

現職:京都大学メディカルイノベーションセンター特任教授、認定NPO法人日本ホルモンステーション理事長、京都大学名誉教授。京都大学医学研究科EBM研究センター長、同副研究科長、同教育研究評議会評議員、同探索医療センター長等を歴任。日本内分泌学会元理事長、日本肥満学会前理事長。紫綬褒章受章、武田医学賞、日本医師会医学賞ほか受賞。

Well TOKK vol.3 2016年10月20日発行時の情報です。