特集「和食の基本 だしを極める」

和食の基本となるだしは、組み合わせや使い分け次第でさらにうま味が増す重要な存在。
種類や特徴を正しく知っておけば、家庭料理がワンランクアップ!
日々の食生活に欠かせないだしについて学ぼう。

教えてくれたのは
太鼓亭「煮出し師」 福本康利さん
和歌山のうどん屋の長男として生まれ、和食の料理人として修業。その後、現在の会社でかつおぶしの加工やうどん・そばのだし作りに従事。「関西おだし専門店 だし藏」の商品開発・監修を行う傍ら、講演会などでだしの魅力を伝えている。2019年、だしの専門家としては初めて「なにわの名工(大阪府優秀技能者表彰)」に認定された。

だしのうま味の「正体」

だしとは、煮出し汁の略でだし汁とも呼ばれ、食材を水に浸けたり、煮出したりして、うま味成分を抽出した液体。うま味は、甘味・酸味・塩味・苦味と並ぶ五大味覚の一つで、主な成分はグルタミン酸・イノシン酸・グアニル酸。グルタミン酸にイノシン酸やグアニル酸を合わせれば、うま味の相乗効果を生み出す。

【グルタミン酸】
体内で合成することができる非必須アミノ酸の一種。ほぼすべての食材に含まれ、代表的なものは昆布。チーズや緑茶、トマト、ハクサイなどにも多く含まれる。

【イノシン酸】
かつおぶしやイワシ、タイ、サバなどの魚類と、鶏や豚などの肉類の動物性食材に多く含まれる。核酸に分類され、グルタミン酸のうま味を高める役割を持つ。

【グアニル酸】
キノコ類に含まれる核酸の一種。生のものよりも乾燥したものに多く含まれ、代表的なものが干しシイタケ。水に戻したり、加熱することでグアニル酸が増加する。

だしのもととなる食材と使い方

a. 昆布
グルタミン酸を多く含む。だしはシンプルで素材の味を邪魔しないので、幅広く料理に用いられる。炊き合わせや鍋料理など食材の種類が多いものに使うと◎。

b. かつおぶし
豊かな風味と香りが特徴で、イノシン酸が多く含まれている。しょうゆとの相性が良く、だしそのものを味わうすまし汁や、卵焼き・茶わん蒸しなどの風味付けに活躍。

c. 煮干し
イノシン酸が豊富。だしは魚の風味が強いので、味噌やしょうゆなど味の濃い調味料と合わせると良い。代表的なものはみそ汁。うどんやそばのつゆにもおすすめ。

d. 干しシイタケ
グアニル酸を多く含み、独特の風味と香りがある。野菜によく合うので、煮物にぴったり。だしを取った後のシイタケは、炊き込みごはんの具にするなど料理にも使える。

基本のだしの取り方とコツ

だしの取り方は食材によって異なり、少しの違いがうま味に大きく影響する。
そこで、うま味たっぷりの基本のだしの取り方とコツを食材別にご紹介。
※食材の量はお好みで調整を。

昆布 (目安:水1ℓに対し、昆布15g程度)

1. 昆布の表面の汚れをサッとふき取り、常温の水に浸す。

2. 鍋にぴったりとラップをして一晩置いたら、昆布を取り出す。入れたままにしておくとぬめりが出るので、昆布は必ず取り出すように。

3. 加熱は調理時に。

コツ▶︎昆布を細かく切ってもうま味が増すわけではなく、逆に雑味が出るだけなので、カットする場合は鍋に入る大きさでOK。

かつおぶし (目安:水1ℓに対し、かつおぶし20g程度)

1. 水を入れた鍋を火にかけて沸騰したら火を止め、すぐにかつおぶしを投入する。

2. かつおぶしが鍋の底に沈むまで4~5分待ち、ザルで濾(こ)す。
※冷蔵・冷凍保存する場合はこの段階で。

3. 再加熱する場合は、沸騰したら火を止め、かつおぶしを加えて香りをプラスし(追いがつお)、ザルで濾す。

コツ▶︎お湯が沸騰する前にかつおぶしを入れると臭みが出ることがあるので、必ず沸騰させてから入れましょう。

煮干し (目安:水1ℓに対し、煮干し30g程度)

1. 煮干しの頭とはらわたをきれいに取り除き、常温の水に浸す。

2. 鍋にぴったりとラップをして冷蔵庫で一晩置く。煮干しは浸けたままでOK。

3. 調理する際は、2を火にかけ沸騰したらザルで濾す。
※手早くだしを取る場合は、沸騰したお湯に煮干しを入れて4~5分煮てから濾してもOK。

コツ▶︎煮干しは鮮度が重要、きれいな銀色で型崩れしていないものを選びましょう。黄色っぽくなっているものは酸化しているので避ける。

干しシイタケ (目安:水1ℓに対し、干しシイタケ30g程度)

1. サッと水洗いした干しシイタケを5度以下の冷水に浸し、ぴったりとラップをかけて冷蔵庫へ。

2. 約1時間後に一度水を入れ替え、冷蔵庫に戻して一晩置く。

3. 調理する際は、2から干しシイタケを取り出し、ザルで濾して火にかける。

コツ▶︎干しシイタケ全体が水に浸かるようにしましょう。また、干しシイタケのうま味成分を引き出すためには、必ず5度以下の冷水を使用するのがポイント。

  • Q. 作っただしの保存期間の目安は?

    A. 冷蔵で2~3日、冷凍で約3週間を目安に、早めに使い切るのがベター。

  • Q. 便利な保存方法は?

    A. 冷凍の場合は、製氷器でブロック状に凍らせておくと必要な分だけ使えて便利。

  • Q. うま味の相乗効果を生む組み合わせは?

    A. 昆布とかつおぶしが定番。昆布は他のどの素材を合わせてもうま味がアップする。

だしのうま味をとことん味わう 阪急・阪神沿線おすすめスポット

食材のおいしさを引き立てるだしは、料理によって味わい方も様々。秘伝のだしを使ったこだわりのメニューを提供する、阪急・阪神沿線のお店をピックアップ。だしをじっくり味わって、五大味覚の一つ・うま味を堪能しよう。


関西で生まれた合わせだし、深みのあるうま味を実感
【だしぐら だし茶漬け 阪急三番街店】

かつお、うるめ、昆布を合わせた関西風のだしのおいしさを存分に味わえる、だし茶漬けの専門店。厳選素材をブレンドして店内でつくるだしは、香り豊かで化学調味料や保存料無添加の優しくて奥深い味わい。だしがタイやイクラなどの具材と見事に調和しておいしさを引き立て、うま味をたっぷり楽しむことができる。

「愛媛県産 真鯛のおだし茶漬け」1,000円
愛媛県産の真鯛にあおさ海苔をトッピング。保温ポットで提供される熱々のだしを注げば、タイのうま味が引き出され、磯の香りが広がる。タイのプリっとしながらも柔らかい食感とだしの相性は抜群。小鉢2品と漬物付き。

a. カウンター席のみで、一人でも入りやすいカジュアルな雰囲気。
b. 左から、手軽で本格的な味わいの「だし茶漬け」5袋入り583円、だしをフレーバーティーのように楽しむ「DASHI CUP しょうが」864円、様々な料理に使える「関西おだし」50g入388円。

だしぐら だし茶漬け 阪急三番街店 <阪急各線・阪神本線>
時間
11:00~21:30(LO21:00)
定休日
不定休(阪急三番街に準ずる)
問い合わせ
06・6377・0203
アクセス
阪急大阪梅田駅下車すぐ、または阪神大阪梅田駅下車徒歩約10分
住所
大阪府大阪市北区芝田1丁目1-3 阪急三番街 南館 B2F【Google Map】>
URL
http://dashigura.com/shopinfo03.php


本当においしいだしにこだわった、和洋折衷の創作料理
【だしの店 つみ木】

店名にも掲げている通り、料理の基本であるだしを大切にしたお店。自慢のだしには、関西有数の日本料理店で腕を磨いた料理長の目利きで厳選した北海道産の真昆布と鹿児島県・枕崎産のかつおぶしを使用。毎日丁寧に取るだしが、すべての料理のベースになっている。地元の人に親しまれる、素材本来のおいしさを最大限に生かしたメニューをぜひ。

「季節の土鍋炊きごはん」2~3人前 1,760円~
注文を受けてから土鍋で炊き上げる、だしのうま味がギュッと詰まった逸品。基本のだしに、タイのあらで煮出しただしを加えた鯛めしは通年で人気。ほかにカキ、カニなど季節ごとに旬の味わいが楽しめる。持ち帰りもOK。

a. 「料理屋のだし巻」550円は、だしたっぷりでふわふわでとろとろ!西宮神社のイベントでは「えべっさんのだし巻」として販売しているそう。
b. あたたかみのある木目調のインテリアが落ち着いた雰囲気の店内。テーブル席のほか、お座敷もあり。

だしの店 つみ木 <阪神本線>
時間
11:00~15:00(LO14:00)、17:00~22:00(LO21:30)
定休日
水曜休
問い合わせ
0798・22・0072
アクセス
阪神西宮駅下車 徒歩約3分
住所
兵庫県西宮市馬場町6-20【Google Map】>
URL
https://uchinoya.com/tsumiki/


懐かしさと新しさを感じる、だしたっぷりのおばんざい
【ワインと出汁の店 どじょう】

ソムリエの資格も持つ和食の料理人の店主夫婦が営む同店では、一番だしのみを使った和風の創作料理と自然派ワインのマリアージュが楽しめる。ワインに合う和のおばんざいは、だしたっぷりで味わい豊か。北海道産の日高昆布と削りたての鹿児島県産の本枯れぶしで毎朝取るだしを、単体でも味わってもらえるようにとテーブルにはスプーンがセットされている。

「ごま豆腐の揚げ出し」715円、「〆さば」825円 ※提供は17:00〜
ごま豆腐を使ったクリーミーな揚げ出しと、少し濃いめのだしが絶妙にマッチ。だしが染み込んだ揚げ出し豆腐は、外はサクッとして中はトロトロ。「〆さば」は、軽めに締めたサバをたっぷりのだしを使った自家製土佐酢でさっぱりと。

a. カウンター6席のみの、黒を基調にした店内。ジャズなどのBGMが流れ、大人の隠れ家のような雰囲気。
b. 店主の奥様の手描きのメニュー看板もあり、アットホームな雰囲気が漂う、ブルーののれんが印象的なお店。駅前の住宅街にひっそりと佇んでいる。

ワインと出汁の店 どじょう <阪急箕面線>
時間
12:00~14:00(LO13:30)、17:00~23:30(LO22:00)
定休日
月曜休
問い合わせ
070・5502・0506
アクセス
阪急桜井駅下車すぐ
住所
大阪府箕面市桜井1丁目1-1【Google Map】>
URL
http://loach.jp/


秘伝のだしのうま味あふれる、京の食卓を彩るだし巻き
【三木鶏卵 錦 本店】

昭和3(1928)年の創業以来、京都の人々に親しまれてきた、だし巻卵専門店。こだわり抜いた北海道の利尻昆布と削り節から取るだし汁に、薄口しょうゆなどの調味料を秘伝の割合で加えただしが味の決め手! 熟練の職人によって美しく焼き上げられるだし巻きは、定番のものに加え、具材を混ぜ込んだものや限定品も店頭に並ぶ。

「だし巻(中)」700円
新鮮な鶏卵に利尻昆布と削り節から取った秘伝のだしを加えて、職人が丁寧に焼き上げた定番の人気商品。たっぷりの卵に、甘さとコクのある上品なだしがしっかり利いた贅沢(ぜいたく)な味わい。

a. 縦長の鍋に薄く伸ばした割り下を、箸を使って素早く巻いていく様子はまさに職人芸。華麗な手さばきで焼き上げられるだし巻きをぜひ味わって。
b. 大勢の人でにぎわう京の台所・錦市場に店を構える。季節の具材を入れた限定のだし巻きは、人気で午前中に売り切れてしまうことも。

三木鶏卵 錦 本店 <阪急京都線>
時間
9:00~18:00
定休日
無休
問い合わせ
075・221・1585
アクセス
阪急烏丸駅または京都河原町駅下車 徒歩約8分
住所
京都府京都市中京区富小路錦西入ル東魚屋町182【Google Map】>
URL
https://mikikeiran.com/


だしを取るのに使う乾物がバリエーション豊かに勢ぞろい
【うおくに商店 神戸店】

和歌山で70年以上続く乾物屋からのれん分けした、乾物や調味料などのセレクトショップ。おしゃれな雰囲気の店内には、昆布やかつおぶし、いりこ、ワカメや海苔など日本全国から選りすぐった乾物がずらり。本格的な味わいのだしのもととなる食材探しは、品ぞろえ豊富な同店がおすすめ。だしの取り方などのワークショップも実施。

「生ハムのような食べる削り節」1袋70g(かつお) 702円
厳選した鹿児島県・枕崎産のかつおぶしを特製の調味液に浸し、生ハムのようなしっとりとソフトな食感に。スナック感覚で手軽に食べられて、噛むほどにうま味があふれる。そのままはもちろん、サラダやパスタのトッピングにも。

a. 人気の「生ハムのような食べる削り節」シリーズ。定番のかつおのほか、数量限定で「まぐろ」が登場(70g 756円)。
b. 乾物の地味なイメージを一新すべくコーディネートされた、明るく開放的な店内。雑貨店のように様々な種類の商品が陳列されている。

うおくに商店 神戸店 <阪神本線・阪急神戸線>
時間
11:00~19:00
定休日
水曜休
問い合わせ
078・855・8564
アクセス
阪神元町駅下車 徒歩約9分、または阪急神戸三宮駅下車 徒歩約12分
住所
兵庫県神戸市中央区中山手通4丁目10-30【Google Map】>
URL
http://kanbutsu-uokuni.jp/


京都らしい繊細な味わいのおばんざいを堪能
【日本酒とおばんざいの京酒場 みとき】

ビルの地下に佇む和食のお店。料理長こだわりのだしは、かつおと昆布から毎日取る風味豊かで上品な一番だしと、そのだしを使って煮出した二番だしを混ぜ合わせて絶妙のうま味を引き出したもの。野菜などの食材からもだしが染み出す、優しい味わいのおばんざいをぜひ。

「なっぱのたいたん」や「茄子の揚げ浸し」など、日替わりを含めて約15種類の中から6種を盛り合わせた「おばんざい6種盛」1,380円。

a. 落ち着いた照明の店内のカウンター席の前には、その日のおばんざいがずらり。だしの良い香りが広がり、食欲がそそられる。
b. 京都随一のビジネス街・烏丸の一角を照らす、大きな提灯が目印。知る人ぞ知る穴場的なムードが漂う。

日本酒とおばんざいの京酒場 みとき <阪急京都線>
時間
17:00~翌1:00(フードLO翌0:00、ドリンクLO翌0:30)
定休日
不定休
問い合わせ
075・351・7979
アクセス
阪急烏丸駅下車すぐ
住所
京都府京都市下京区鶏鉾町501【Google Map】>
URL
https://www.mitoki.net/


ついつい飲み干したくなる、だしを味わううどん
【マルヨシ製麺所】

オリジナルのだしと自家製麺で人気のうどん店。昆布とあごをメインに4種類のかつおをブレンドして丁寧に取っただしと、もちもち感とコシのある食感のバランスが取れた麺との相性は抜群!まずはお店自慢のだしから味わってみて。米油でサクサクに揚げられた天ぷらもおすすめ。

「極上肉うどん」968円。味が染み込んだ甘い牛肉と、うま味たっぷりのだしのハーモニーがたまらない一品。アクセントにショウガを加えても◎。

a. 女性一人でも気軽に入れる、清潔感があり明るい雰囲気の店内。お客さんの約8割が女性というのも納得。
b. ガラス越しに麺を打つ様子も見られる、白いのれんが目印。行列ができることもしばしばで、お昼には売り切れてしまうメニューも。

マルヨシ製麺所 <阪急宝塚線>
時間
11:00~16:00(LO15:30)、17:00~22:00(LO21:30)
定休日
第2火曜休
問い合わせ
06・7509・6819
アクセス
阪急蛍池駅下車すぐ
住所
大阪府豊中市螢池東町1丁目5-12【Google Map】>

Well TOKK vol.16 2020年1月7日発行時の情報です。

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