特集「近代建築をあるく」

暑さが和らぎ、おでかけ気分が高まる季節。文化の香りを感じながら、阪急・阪神沿線の歴史的建造物をあるいて巡ろう。

明治 明治の異人館の特徴を伝える、和洋折衷の邸宅
【旧ハッサム住宅】

イギリス人の貿易商ハッサムが明治35(1902)年に北野に建てた自邸を昭和38(1963)年に現在の相楽園内に移築。木造2階建ての寄棟造桟瓦葺(よせむねづくりさんがわらぶき)で、張り出した窓やよろい戸など、明治時代に建てられた神戸の異人館の趣を感じる。前庭のガス灯は、日本の街灯用としては非常に古い明治7(1874)年頃のものが使われている。

南向きの正面に大きく開かれたベランダ。1階はアーチを連ねたアーケード式、2階は列柱が並ぶコロネード式で、柱頭部にはアカンサスの葉をかたどった装飾が施されている。1961年、国の重要文化財に指定。

a. 迎賓機能を備えた1階の応接室。クラシカルな雰囲気が漂う。
b. 阪神・淡路大震災時に屋根から室内へ落下した煙突が、前庭の隅に展示保存されている。

旧ハッサム住宅 <阪神本線>
料金
入館無料 ※別途相楽園への入園料要(大人300円、小中生150円)
時間
9:00~17:00(入園は~16:30)
定休日
木曜休(祝日の場合は開館、翌日休。12月29日~1月3日は休)
※旧ハッサム住宅の内部公開は10・11月の土・日曜・祝日と、10月20日~11月23日の菊花展期間中のみ。
問い合わせ
078・351・5155
アクセス
阪神元町駅下車 徒歩約10分または神戸高速線花隈駅下車 徒歩約15分
住所
兵庫県神戸市中央区中山手通5丁目3-1【Google Map】>
URL
http://www.sorakuen.com/shisetsu.html

大正 阪神間有数の住宅地に残る、美しいヴォーリズ建築
【高碕記念館】

ウィリアム・M・ヴォーリズの設計により、大正12(1923)年に建築された木造3階建ての住宅。雲雀丘の住宅街に数軒あったヴォーリズの建築物で唯一現存するもので、現在は記念館となっている。暗灰色の屋根と外壁の白い窓枠、レンガ造りの煙突が映える、外観の美しさに注目を。

大きな腰折れ屋根や開放的なテラスが特徴的なコロニアルスタイルの洋館。医学博士・諏訪塋一の後、事業家・高碕達之助が居住。

a. レトロで落ち着いた雰囲気の、広々とした玄関ホール。昭和13(1938)年に増築された。
b. 大きなヤシの木が印象的な南面の庭園。西側の一角は、マツやツツジなどが植栽された和風庭園になっている。

高碕記念館 <阪急宝塚線>
料金
入館無料
時間
庭園公開 10:00~16:00(館内見学は10:30~12:00、13:00~14:30、14:30~16:00
※要事前予約)
※館内見学の予約はホームページへ ≫
定休日
月曜休(祝日の場合は開館、翌日休)
問い合わせ
072・740・3500
アクセス
阪急雲雀丘花屋敷駅下車 徒歩約7分
住所
兵庫県宝塚市雲雀丘1丁目7-58【Google Map】>
URL
https://www.shokuken.or.jp/culturalasset/about.html

大正 日本で唯一建築当初の姿をほぼ完全に残す、ライトの住宅建築
【ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)】

アメリカの近代建築の巨匠、フランク・L・ライトが設計し、日本人の弟子2人によって大正13(1924)年に完成。幾何学的な彫刻を施した大谷石や、マホガニーの複雑な木組み装飾、植物の葉をモチーフとした飾り銅板など、自然と融和するライトの建築思想が随所に感じられる。

大谷石の凹凸のある質感と温かみのある色合いが特徴的な外観。昭和49(1974)年には、国の重要文化財に指定された。

a. 左右対称のデザインが美しい応接室。大谷石で作られた暖炉、壁面に備え付けた飾り棚などが特徴的。壁の上にドア状に設けられた通風口が、独特の雰囲気を醸し出している。
b. 大きなガラス窓から明るい光が差し込む、3階の長い廊下。飾り銅板を通して床に影ができる、木漏れ日のような演出が印象的。

ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅) <阪急神戸線>
料金
大人500円、小中高生200円
時間
10:00~16:00(入館は~15:30)
開館日
水・土・日曜・祝日開館
※イベント等により変動あり。詳しい日程は下記ホームページへ
問い合わせ
0797・38・1720
アクセス
阪急芦屋川駅下車 徒歩約10分
住所
兵庫県芦屋市山手町3-10【Google Map】>
URL
https://www.yodoko-geihinkan.jp/

大正 天王山山麓の自然に囲まれた、チューダー・ゴシック様式の山荘
【アサヒビール大山崎山荘美術館】

実業家・加賀正太郎が別荘として自ら設計し、大正から昭和初期にかけて建築。平成8(1996)年に、創建当時の姿に修復し、安藤忠雄設計の新棟などを加えて開館。梁や柱の彫刻など細かい内装に至るまで趣向が凝らされている。緑豊かな山の中の坂道を登ってたどり着く、山荘の2階テラスからの壮大な眺めは見応えあり!

庭を含めた景観全体を考えてデザインされた、自然と調和した建物。イギリス建築を参考にしつつも東洋風の装飾要素も加えるなど、様々な手法が折衷的に取り入れられている。

a. 加賀が栽培していたランの温室へと続いていた通路の外にある睡蓮池。初夏には睡蓮の花が静かに咲き、彩りを添える。
b. 天井に美しい小屋組みが見られる、本館2階の吹き抜け。

アサヒビール大山崎山荘美術館 <阪急京都線>
料金
大人900円、高大生500円
時間
10:00~17:00(入館は~16:30)
休館日
月曜休(祝日の場合は開館、翌日休。ただし11月18・25日は開館。12月2~13・26~31日は休)
問い合わせ
075・957・3123(総合案内)
アクセス
阪急大山崎駅下車 徒歩約10分
住所
京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3【Google Map】>
URL
https://www.asahibeer-oyamazaki.com/

昭和 小説「細雪」の舞台となった、昭和初期の日本家屋
倚松庵いしょうあん

文豪・谷崎潤一郎が昭和11(1936)~18(1943)年までの7年間、松子夫人やその妹たちと暮らした旧邸。平成2年、住吉川沿いのこの地に移築復元された。代表作「細雪」の舞台としても知られ、作品世界を彷彿とさせる雰囲気が漂う。木造瓦葺2階建てだが、1階の半分近くは洋風になっていて、応接間には作品の中に描かれたステンドグラスや三枚扉がある。

「倚松庵」とは、松に寄りかかっている住まいという意味で、松子夫人への愛情も表しているとされる。

a. 応接間には谷崎潤一郎の著書や直筆の手紙などが展示されている。
b. 2階の和室には谷崎潤一郎が最後の家で使っていた座卓のレプリカが置かれている。

倚松庵いしょうあん <阪神本線>
料金
入館無料
時間
10:00~16:00
開館日
土・日曜のみ開館(ただし12月28・29日は休)
問い合わせ
078・842・0730(※開館時間内のみ応対)
アクセス
阪神魚崎駅下車 徒歩約6分
住所
兵庫県神戸市東灘区住吉東町1丁目6-50【Google Map】>

大正 大正ロマンの趣を残しつつ、現代に息づく木造の洋館
【文椿ビルヂング】

大正9(1920)年に建てられた、珍しい木造の洋館。当初は貿易会社の社屋として使われ、その後、繊維問屋や呉服商社など様々に利用された。15年前に外観はほぼ建築当時の状態で、商業施設として再生。中は、約5メートルもの高い天井や、梁をそのまま活かすなど、雰囲気に合うようにリノベーションされている。

タイル張りの外壁や石造りの門柱、屋根から突き出した小さな窓など、当時のままの面影を残す外観。

a. 2004年に複合商業施設としてリノベーションされ、飲食店や雑貨店、ヘアサロンなど多彩な店が軒を連ねる。
b. 入口の上部に施された銅製の飾りや、レンガタイルの上の石に刻まれた意匠などのディテールにも注目。

文椿ビルヂング <阪急京都線>
料金
入館無料
時間
11:00〜20:00 ※店舗により異なる
定休日
無休 ※詳細は下記ホームページへ
問い合わせ
075・231・5858
アクセス
阪急烏丸駅下車 徒歩約10分
住所
京都府京都市中京区三条通烏丸西入る 御倉町79【Google Map】>
URL
https://www.fumitsubaki.com/

明治 京都の街中に堂々と建つ、赤レンガ造りの美しい洋館
【中京郵便局】

明治35(1902)年に竣工した、近代建築が多く残る三条通の南北角に建つ、ネオルネサンス様式の本格的な洋風建築。外壁を残したまま内部のみを新築する手法を用いて、約40年前に改築された。現在この方法は歴史的建造物の保存などに多く用いられているが、中京郵便局が日本で最初に実施された建物なのだそう。

外壁の赤レンガと白い隅石のコントラストが映える外観。

a. 中央入口が左右の入口に比べて高いところにあるのは、当時郵便輸送に使われていた馬車の高さに合わせて郵便受け渡し口が設置されていた名残。
b. 約120年前の面影を残しながら、今も郵便局として活躍。窓や屋根など至るところに繊細なあしらいが見られる。

中京郵便局 <阪急京都線>
時間
8:00~23:00(土・日曜・祝日は~22:00)
定休日
無休
問い合わせ
075・255・1121
アクセス
阪急烏丸駅下車 徒歩約8分
住所
京都府京都市中京区三条通東洞院東入る 菱屋町30番地【Google Map】>
URL
https://www.post.japanpost.jp/cgi-shiten_search/shiten.php?id=11928

大正 かつて大阪にあった居留地に残る、唯一の建物
【川口基督教会】

大阪開港に伴ってできた外国人居留地「川口居留地」に、長崎から大阪にやってきたアメリカ人宣教師によって明治3(1870)年に最初の教会が設立され、大正9(1920)年に現在の聖堂が建てられた。阪神・淡路大震災では大きな被害を受けたが、大修復を経て、今もほぼ当時のままの姿を残す。大阪府の登録有形文化財に指定されている。

ヴィクトリアン・ゴシック様式の美しい礼拝堂が有名な、赤レンガ造りの大聖堂。

a. 荘厳な雰囲気を感じる礼拝堂。大きな窓から光が差し込み、ステンドグラスが輝く。奥には一段高くなった祭壇部が設けられている。
b. 日本画家が製作したという、珍しいステンドグラス。聖書に出てくる花々が色鮮やかに絵画的にあしらわれている。

川口基督教会 <阪神本線>
拝観自由
時間
9:00~18:00
定休日
月曜休
問い合わせ
06・6581・5061
アクセス
阪神野田駅より大阪シティバスのりかえ川口1丁目停下車すぐ
住所
大阪府大阪市西区川口1丁目3-8【Google Map】>
URL
http://www.nskk.org/osaka/church/kawaguchi/

Well TOKK vol.15 2019年10月2日発行時の情報です。

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