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Wellness講座「『幸せホルモン』を知ってハッピーな毎日を!」


最近よく聞く「幸せホルモン」という言葉。「幸せホルモン」とは、脳内で生成され、幸福感や満足感といったポジティブな感情に関与する様々な活性物質のこと。ストレス軽減、睡眠の質の向上などが期待できるため、現代人の健康維持には欠かせない要素と言えるでしょう。今回は、いくつかの「幸せホルモン」を取り上げてご紹介します。
監修:関西健康・医療創生会議

平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生
(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。
平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生
(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。
ホルモンとは?
ホルモンとは、もともと“特定の内分泌腺で生成・分泌され、血流を介して運ばれ、標的細胞にあるレセプター(受容体)に結合すると特定の作用をもたらす化学物質”と定義されていました(図1-①)。しかしその後、脳や消化管など生体内の様々な部位で作られ、必ずしも血流を介さずに局所で作用する活性物質が次々に見つかってきました。例えば神経細胞(ニューロン)と神経細胞の間での情報伝達はシナプスを介した神経伝達物質(図1-②)、また分泌した細胞の近辺に作用するパラクリン(傍(ぼう)分泌)や自分自身に作用するオートクリン(自己分泌)といった局所ホルモン(図1-③)です。したがって現在では“生体内での細胞間の情報伝達物質”を広くホルモンと呼ぶようになりました。


人間の脳には100種類以上のホルモンが見つかっていますが、このうち、いくつかの脳内ホルモンは精神的な健康や行動、社会的な関係にも影響することが徐々にわかってきました。
今回は「幸せホルモン」と呼ばれる脳内ホルモンのうち、代表的な神経伝達物質の「セロトニン」「ドーパミン」、そして脳下垂体で分泌される「オキシトシン」について見ていきましょう。
【セロトニン】

セロトニンは幸福感や安定した気分をもたらし、リラックスした気分にしてくれる神経伝達物質です。睡眠や食欲、消化機能にも関係しています。セロトニンの約10%は脳で、約90%は腸内で生成され、それぞれ異なる役割を果たしています。
脳内でのセロトニンは、他の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンをコントロールしてストレスを軽減し、気分の安定や幸福感をもたらします。また、セロトニンは夜になると、脳内の松果体でメラトニンという睡眠ホルモンに変換され、睡眠サイクルを調整します。そのため脳内のセロトニンが低下すると、抑うつ、不安、イライラ、不眠などの精神症状を引き起こすと言われています。
一方、腸内のセロトニンはぜん動運動を促進し、血管の収縮・拡張や痛みの調節にも関係しています。
【ドーパミン】

ドーパミンは、やる気や快感をもたらす神経伝達物質の1つで、「快感ホルモン」とも呼ばれます。おいしい食事、目標達成、ほめられることなどによってドーパミンが分泌されると、喜びや達成感がもたらされます。このような快感や幸福感は“ほうび”として行動への動機づけとなり、やる気やモチベーションを高めたり、集中力を持続させる効果があります。他にも、筋肉の動きや体のバランスを制御することで、スムーズな運動機能にも関わっています。
脳内のドーパミンが低下すると、無気力や興味喪失などやる気の低下、注意力散漫や決断力の欠如を招くほか、抑うつ状態になり、楽しみを感じにくくなることがあります。
逆に、ドーパミンの働きが高まりすぎると、過食、ギャンブルや薬物依存など、過剰な報酬を求める行動につながることにもなります。
【オキシトシン】

脳の視床下部で生成されるオキシトシンは、出産時や授乳時に多く分泌され、子宮の収縮や射乳を促進する脳下垂体ホルモンです。「愛情ホルモン」や「絆ホルモン」とも呼ばれるように、スキンシップによっても分泌が促されます。感情的な安らぎや幸福感、社会的なつながりを形成するうえで重要とされ、母親と子どもの絆を強化するほか、恋人やパートナー、親しい友人との信頼関係を築くのに役立つと言われています。
一方、脳内のオキシトシンが低下すると、孤独感や不安感の増加、他者との関係性の希薄化など、社会的なつながりや感情的な安定が損なわれる可能性が示唆されています。
幸せホルモンをうまく働かせるためには
【セロトニン】
セロトニンの材料となる必須アミノ酸のトリプトファンは、体内で生成することができません。したがって、トリプトファンを多く含むバナナ、ナッツ類、卵、大豆製品(豆腐、味噌など)といった食品を普段から摂ることが大切です。また、その生成には様々な栄養素も必要で、特にミネラル(鉄、亜鉛、マグネシウム)、ビタミン(B₆・C)、葉酸が不可欠です。野菜、果物、レバーなど、多様な栄養素を含む食品もバランスよく摂りましょう。



しかし、トリプトファンをサプリとして過剰摂取すると、無気力、吐き気、頭痛などの副作用が表れることが報告されているので、摂りすぎには注意が必要です。
また、ウォーキング、ジョギングなどの運動や日光を浴びることも、セロトニンを増やすのにおすすめ。瞑想や深呼吸などをしてストレスを軽減するのも良いでしょう。

【ドーパミン】
ドーパミンの原料となるチロシンというアミノ酸を多く含む食品(例えばチーズ、魚、肉、卵、大豆製品、ナッツ類など)のほか、様々な栄養素をバランスよく摂りましょう。
セロトニンと同様、適度な運動や十分な睡眠を取ることも重要です。
また、小さな目標でも達成すると、ドーパミンが活性化されてやる気が起こりますので、自分に合った趣味や新しい挑戦に取り組むことも良いでしょう。
【オキシトシン】

スキンシップやハグ、手をつなぐ、ペットと遊ぶなど、普段から他者とのポジティブな交流や親切な行動が大切です。他者と目を合わせる、笑顔を交わすだけでも分泌が促進されるという報告もあります。
「幸せホルモン」は、どれか1つが多く分泌されれば良いというわけではありません。それぞれが適切に分泌され、相互に関連して効果的に作用することが重要なのです。そのためには、先に述べたようなバランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠、人との関わりなど、日頃からきちんとした生活習慣を心がけるようにしましょう。
「ホルモン」とはギリシャ語で“奮い立たせる”あるいは“興奮させる”物質を意味する造語です。1902年、イギリスの生理学者であるアーネスト・スターリング博士は犬に十二指腸組織のエキスを投与すると膵液の分泌が多くなる活性物質を発見し、セクレチンと命名しました。スターリング博士は1905年、このような血流を介して別のところで働く活性物質を総称して「ホルモン」と呼ぶことを提唱しました。しかしそれ以前の1901年、日本人科学者である高峰譲吉博士は牛の副腎から血圧を上げるホルモン、アドレナリンを発見していました。世界に誇れるホルモンの最初の発見者は、実は日本人なのです。
「ランナーズハイ」は、マラソンなどを長時間、苦痛をこらえて走っている最中に、幸福感や恍惚感を覚えるという体験のことで、登山では「クライマーズハイ」とも言います。過度なストレスや苦痛が続くと、脳内でβ-エンドルフィンというモルヒネに似た内因性の物質や、大麻に含まれる成分のカンナビノイドに似た物質が分泌され、鎮痛や鎮静、幸福感をもたらすために起こると考えられています。いずれも脳内の「幸せホルモン」の働きによるものと言えます。

関西では牛や豚などの内臓(モツ)を焼いたものを「ホルモン焼き」と呼びます。かつては捨てられたものなので、関西弁で「放(ほう)るもん」(捨てるもの)から「ホルモン」という言葉になったと言われています。内臓はホルモンを作る内分泌腺ではありませんが、栄養が豊富でホルモンの働きのように活力がつくことから、「ホルモン焼き」と呼ばれた…という一面もあるのかもしれません。
Well TOKK vol.37 2025年4月2日発行時の情報です。