【教えて!沿線のお医者さん!】膵臓(すいぞう)の役割と病気のリスクについて(兵庫医科大学+阪神電車)

膵臓は身体の中で重要な役割を果たす臓器ですが、病気の早期発見が難しく、特に膵臓がんは進行が早いため、5年生存率が約8%と低くなっています。膵臓について、その役割や主な病気、早期発見が難しい理由、予防策を兵庫医科大学の廣野誠子先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2024年9月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 消化器外科学講座肝・胆・膵外科
主任教授 廣野 誠子先生
肝胆膵外科治療の専門医で、膵臓がんや肝臓がん、胆道がんの手術を多く手掛ける。日本の膵臓がん研究の発展に貢献し、最新の治療法の研究にまい進する。
『膵臓がんは、手術の技術のみならず薬物治療が非常に進歩しています。医師は全力で治療にあたりますので、心の健康を保ち、一緒に立ち向かいましょう。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 膵臓とはどんな臓器?

膵臓は胃の裏側、つまり背中側に位置する約15cmの横長の臓器で、右側は十二指腸、左側は脾臓(ひぞう)につながっています。膵臓には重要な役割が2つあり、ひとつは膵液(すいえき)という消化液を作って十二指腸に送り、食べ物を消化・吸収する役割(外分泌機能)、もうひとつは様々なホルモンを作る役割(内分泌機能)です。作り出されるホルモンの中で特に重要なのが血糖をコントロールするインスリンで、これは膵臓でしか作れません。膵臓が病気になるとインスリンの量が低下し、糖尿病を発症したり、糖尿病が急に悪化したりすることがあります。血液検査でHbA1cの値が急に高くなった方は、注意が必要です。

Q 膵臓の主な病気は?

一番重要なのが「膵臓がん」です。膵臓がんは今非常に増えており、約60年前の日本のがん死亡者数順位では8位でしたが、現在は4位、2040年には2位になると予測されています。ほかには、治る膵臓がんといわれる「膵嚢胞(すいのうほう)性腫瘍」、ホルモン分泌細胞が発生する「神経内分泌腫瘍(NEN(ネン))」、炎症性の「慢性膵炎」や「急性膵炎」が代表的です。膵嚢胞性腫瘍のうち、もっとも頻度が高い「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」は、膵管で粘液を産生する腫瘍で、膵管が太くなるため、健康診断のエコー検査で見つかることがあります。IPMNは良性と診断した場合は半年に1度の経過観察、悪性(がん)と診断した場合は手術の治療方針となります。IPMNは、たとえがんになっていても早期に見つけられる可能性があり、治る膵臓がんともいわれています。ただ、専門的な領域の疾患なので、膵嚢胞と診断された場合は、専門機関での精査を受けていただき、治療方針を決めることをオススメします。

Q 膵臓がんの早期発見は難しい?

膵臓がんの早期発見が難しい要因は、特異的な症状が現れないため、背部痛があれば整形外科でレントゲン検査を、腹痛があれば胃カメラ検査を受ける方が多く、結果、痛み止めを処方されて少し治まると見過ごすケースがあるからです。胃カメラやレントゲンで膵臓がんを見つけることは難しく、胃がんや大腸がん検診のように高い確率でがんを見つけられる検査が身近にないことも、早期発見が難しい一因です。治療を受けても痛みが治まらない場合や、家系に膵臓がんの人がいる場合、急に糖尿病を発症・悪化した場合は膵臓がんのリスクが高く、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)の測定、「超音波検査」、「造影CT」、「超音波内視鏡検査」など膵臓がんを専門とする施設で精密検査を受けてください。

Q 膵臓の病気にならないためには?

膵臓がんが増えてきた要因のひとつに、食事の欧米化と食事量の増加が考えられます。また、肥満や糖尿病のある方は膵臓がんになるリスクが高いので、動物性脂肪の摂り過ぎに注意し、食物繊維や乳製品を摂って腸内環境を整えるようにしてください。喫煙やアルコールを原因とする慢性膵炎もがんのリスクを高めるので気をつけましょう。

 

 

 

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