Wellness講座「若々しさのカギ『ホルモンバランス』を整えよう!」

Wellness講座「若々しさのカギ『ホルモンバランス』を整えよう!」
Wellness講座「若々しさのカギ『ホルモンバランス』を整えよう!」

「体力が落ちた」「やる気が出ない」「肌のハリが無くなった」など、年齢を重ねるにつれ増えてくる悩み。その原因は、体内にあるホルモンの分泌量やバランスが崩れることにより引き起こされた、いわゆる老化現象かもしれません。そこで今回は、加齢に伴うホルモンの変化による影響や、ホルモン分泌を良い状態に保ち、心身ともに若々しくあるために知っておきたいポイントを解説します。
監修:関西健康・医療創生会議

<教えてくれるのは>

平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生
(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生

(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

知っておきたい、ホルモンの働きとその影響

ホルモンが生涯にわたり適切に分泌されていれば、若さや健康は保たれます。しかし、ホルモンの種類によっては20歳代をピークに分泌量が減り始め、40歳代で急激に減少、50歳代半ば以降は20歳代の半分程度になってしまうものもあります。ホルモンバランスの崩れや減少は、血糖や血圧の異常、ホルモンの種類によっては特定の臓器や組織または全身に影響を与えるものもあります。
ここからは、加齢によって分泌が減少することが知られている3つのホルモンの働きを見ていきましょう。

成長ホルモン(GH)

脳の下垂体前葉から分泌されるホルモンで、子どもでは体の成長(骨の伸長・筋肉発達)を促進することから「成長ホルモン(GH)」と呼ばれます。GHは直接的な作用もありますが、多くの成長促進作用は肝臓で「IGF-1(インスリン様成長因子-1)」を作らせることです。IGF-1は、骨や軟骨の増殖を促して身長の伸びを助け、筋肉量を増やすといった、体の発育や成長に重要な働きをしています。わかりやすく言えば、GHが「指令役」で、IGF-1が「実行役」といったところでしょうか。
GHは大人になってからも脂肪の分解促進や糖代謝の調節、筋肉量の維持など、さまざまな代謝調節に関わる大切なホルモンです(図1)。GH・IGF-1ともに20歳代をピークに分泌量が減少していきます。そのため、高齢者では骨や筋肉量が徐々に減ってきたり、脂肪組織が増えて肥満やメタボになりやすくなったりします。

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また、頭部外傷や脳腫瘍、脳外科手術や放射線治療など何らかの原因で、脳下垂体からGHが分泌されない病気(GH分泌不全症)があります。子どもでは身長が伸びない(低身長)ために親が気づくことが多いですが、大人の場合はコレステロールや中性脂肪などの脂質異常症、内臓脂肪が増える、骨が弱くなる、筋肉量や筋力が低下する、疲れやすくなるなど、老化現象と区別しにくい症状も多いため、気になる場合は内分泌代謝専門医に相談してください。内分泌検査など精密検査でGH分泌不全症と診断されれば、指定難病としてGH補充療法が認められています。

性ホルモン

性ホルモンは、生殖機能だけでなく筋肉や骨、皮膚など見た目の若々しさに関与するステロイドホルモンです。男性なら精巣から分泌される男性ホルモンの「テストステロン」、女性なら卵巣から分泌される女性ホルモンの「エストロゲン」がありますが、いずれも加齢に伴って分泌量が減少します(図2)。男性では筋肉量や骨密度を保っていたテストステロンが徐々に減少することで、サルコペニアや骨粗しょう症を発症しやすくなります。女性では、閉経期になりエストロゲンの分泌が急激に低下すると、発汗やほてりなど更年期症状が起きやすくなるほか、肥満やメタボ、高血圧、動脈硬化、骨粗しょう症の発症リスクが高くなります。また、コラーゲンの産生を促進する働きが弱まって、肌のハリやみずみずしさを保つことが難しくなるといった影響も。いずれも症状がひどい場合にはホルモン補充療法で改善が期待できますので、専門医(男性は泌尿器科、女性は婦人科)に相談することをおすすめします。

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出典:日本内分泌学会ホームページ掲載図をもとに作成・加工

DHEA(DHEA-S)

「DHEA」は“Dehydroepiandrosterone”の略で、副腎で産生されるステロイドホルモンです。血液中では安定したDHEA-Sの形で存在しています。DHEAは体内で女性ホルモンや男性ホルモンに変換されるため、性ホルモンの前駆物質といえます。DHEAの分泌は20歳代をピークに加齢とともに徐々に減少し、70歳代では20歳代の3分の1から5分の1くらいになります。高齢者において血液中のDHEA-Sが少ないと糖尿病のリスクや生活の質の低下、加齢により心身が衰えるフレイル、認知症などに関連し、逆に多いと長寿や健康につながるという疫学研究があります。また、動物実験で免疫機能を高めたり、骨や筋肉を維持したりなどさまざまな働きも報告されていることから、“若返りホルモン”と呼ばれることもありますが、その有効性に関しては、必ずしもヒトで証明されたわけではありませんので注意が必要です(下コラム参照)。

ホルモンバランスを保つために

年齢を重ねてもホルモンバランスを良い状態に保つためには、生活習慣の改善が大切です。

①運動

GHやIGF-1の分泌を促すには、ウォーキングやジョギングに加えて、筋力トレーニングがおすすめです。特にスクワットは、太ももやお尻など大きな筋肉がある下半身を鍛えることができ、骨も丈夫にするので効率的です。バランスが不安な方は、椅子に座った状態から、ゆっくりと立つ・座るを繰り返すだけでも効果があります。骨粗しょう症やサルコペニア、フレイルの予防にも役立ちます。

②食事

良質なたんぱく質を取ることも大切です。アルギニンやグルタミン酸といったアミノ酸は、GHの分泌を促します。逆に血糖や遊離脂肪酸は分泌を抑えてしまうので、糖質の取りすぎには気をつけましょう。また、亜鉛・マグネシウム・ビタミンC・ビタミンB群などは、ステロイドホルモンの合成に必要な補酵素として働く重要な栄養素です。それらを意識してバランスの良い食事を心がけてください。

③睡眠

深い睡眠(ノンレム睡眠)はGHの分泌を促します。また、規則的な睡眠は副腎から分泌されるストレスホルモンであるコルチゾールの日内リズム(早朝に高く、夕方に低くなる)の維持に重要で、ホルモンバランスを安定させることにつながります。7〜8時間を目安に質の高い睡眠を取りましょう。

④ストレス管理

精神的・肉体的ストレスは、コルチゾール分泌を慢性的に増加させ、肥満・高血圧・糖尿病などの生活習慣病やうつ病のリスクを高め、老化を促進します。心身を健やかに保つために、十分な休息を取り、日々の生活の中で、幸福感や生きがいを実感することが大切です。瞑想(めいそう)や呼吸法、ヨガなどにチャレンジするのも良いでしょう。

\ COLUMN /
使用に注意! DHEAサプリメント

海外では、「アンチエイジング」や「若返りホルモン」と称してDHEAサプリメントが販売されています。骨密度の維持、うつ症状や疲労感の軽減、更年期症状や性機能の改善などが一部で報告されていますが、臨床研究の結果は一貫しておらず、その有効性は担保されていません。また副作用には、ニキビや油性肌、多毛あるいは脱毛、肝機能障害、女性では月経異常や乳房の張り、卵巣がん・乳がんのリスク、男性では前立腺肥大、前立腺がんのリスクなどがあり、安全性の面からも日本では市販されていません(未承認医薬品)。気軽に海外から個人輸入などで入手をすることは避け、使う必要があるかどうかは、必ず内分泌専門医に相談してください。

「寝る子は育つ」は本当だった!!

日本には昔から「寝る子は育つ」ということわざがあります。このことわざが科学的に正しいことが、ヒトによる1日のGH分泌パターンの研究によって証明されました。GHの分泌量は、起きている日中に比べ睡眠中が多く、特に入眠後の最初の深い睡眠(ノンレム睡眠)の間に最も多くなります。前述のとおりGHは骨や筋肉の発達を促しますから、よく寝る(ノンレム睡眠に伴うGHの分泌が何度もピークを繰り返す)ことで、GHが多量に分泌され体が成長する、というわけです。経験から真実を見つけていた先人たちには驚きしかありませんね。

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老化を遅らせる「クロトー(KLOTHO)遺伝子」

老化を遅らせて長生きすることは人類の夢ですが、その夢をかなえるキーの1つとして話題なのが「クロトー遺伝子」です。1997年、日本の黒尾誠・鍋島陽一両博士らによって発見され、その名称はギリシア神話に登場する生命の糸を紡ぐ女神に由来します。クロトー遺伝子によって作られるクロトーたんぱく質は、カルシウムやリン、糖、脂質などの代謝を調節するFGFと呼ばれるホルモンの受容体の一部で、動脈硬化や骨粗しょう症の進行を抑え、糖尿病や認知症のリスクを抑える可能性が示唆されています。また、血中にも分泌されて、加齢とともに減少します。マウスの実験では、クロトー遺伝子を欠損させると早老症のような症状を示して寿命が短くなる一方、過剰発現させると寿命が延びることが確認されています。ヒトでも、クロトー遺伝子が認知機能の維持や健康寿命に関係するという研究成果から「老化抑制遺伝子」として注目されています。

Well TOKK vol.40 2026年1月8日発行時の情報です。