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Wellness講座「高血圧対策にはなぜ“減塩”?」
健康診断や人間ドックで「血圧が高め」と言われたのに、「特に不調も感じないし、まだ大丈夫」と
生活習慣の改善を先延ばしにしている人は案外多いのではないでしょうか?
なんといっても高血圧対策には塩分の取りすぎを防ぐことが重要です。
早いうちから減塩を心掛ければ、高血圧はもちろん生活習慣病の予防にもつながります。
減塩のコツを学んで、健康な身体づくりを目指しましょう。
平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生
(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。
平田結喜緒(ひらた ゆきお) 先生
(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。
Q.血圧が高いとなぜ塩分を控えないといけないのですか?
高血圧はほとんど自覚症状がないために、治療を受けずに放置してしまう人も多く、気づかないうちに進行して脳卒中や心筋梗塞、慢性腎臓病などの合併症を引き起こすリスクが大きくなります。
高血圧の大部分は原因が不明の「本態性高血圧」です。この本態性高血圧の発症には遺伝因子と環境因子が関係しており、環境因子のなかで特に大きな要因となるのが塩分の取りすぎです。塩分を取りすぎ血液中の塩分濃度が高くなると、身体はこれを薄めるために水分を多くため込もうとします。すると、血液量が増えて血管壁にかかる圧力が増し、血圧が上昇するからです。
食塩に対する血圧の反応には個人差がありますが、特に高齢者や腎機能が低下している人、肥満・メタボリック症候群の人などでは、反応が高い(食塩感受性と呼ばれています)とされていますので、注意が必要です。
日本の高血圧患者数は人口の3割以上にあたる4,300万人と推計されています。このうち服薬などの治療で血圧をコントロールできているのはわずか1,200万人で、治療は受けているものの血圧をコントロールできていない人が1,250万人、自身が高血圧だと認識しているのに医療機関を受診していない人と、そもそも高血圧だと認識していない人を合わせた未治療の人は1,850万人に上ります。
Q.減塩のコツを教えてください。
日本人は日常の食生活で、塩分を取りすぎているといわれています。そこで下記のチェック表を使い、自分が日々摂取している塩分量の程度を知ることから始めてみましょう。
合計が9点以上なら、塩分を控える食生活に変えることを考えてみてください。減塩のコツは大きく4つあります。
- 塩気の強い漬物や干物などの加工食品は控えめにする
- うま味や酸味、香辛料を活用して薄味で食べる工夫をする
- 食卓で使う調味料は「かける」より「つける」ことで控える
- みそ汁は1日1回までにし、めん類のスープは残す
小さな工夫を積み重ねて、薄味に慣れることも重要です。
Q.「排塩」ってどういう意味ですか?
高血圧の予防に、塩分(塩化ナトリウム)の摂取量を減らすだけでなく、排泄量も増やすという意味で最近「排塩」という言葉が使われています。
塩分の排泄効果が期待されるミネラルとして、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあります。特にカリウムは、ナトリウムの尿中排泄を促進する作用が大きく、カリウムの摂取量を増やすことで血圧の低下が期待できます。腎機能が低下している場合を除いて、野菜や果物、大豆製品などカリウムを多く含む食品を積極的にメニューに取り入れるようにしましょう。
カリウムは水に溶けやすい性質があるため、生野菜をそのまま食べるサラダや、調理する場合はスープやみそ汁など煮汁ごと食べられるメニューで取るのが効率的です。ただし、果物を多く食べると果糖の取りすぎに、汁物は塩分の取りすぎにつながりますので、気をつけてください。
世界保健機構(WHO)が推奨する塩分摂取量は1日あたり5.0g未満ですが、日本人の食塩摂取量は1日あたり男性10.9g、女性9.3gと約2倍の数値となっています(下図)。塩分の過剰摂取が健康に悪いことが広く知られるようになり数値は徐々に下がってきてはいますが、依然として世界との差は大きく、厚生労働省の推奨基準(1日男性7.5g未満、女性6.5g未満)や、日本高血圧学会の目標値(1日6.0g未満)も上回っている状況です。
普段使用している調味料にはどれくらいの塩分が含まれているか知っていますか? 減塩のためには、調味料を計量スプーンやカップで計り、それぞれの食塩量を把握しておくことも大切です。
また、加工食品には必ず栄養成分表示があります。購入する際にはナトリウム量を示す「食塩相当量」表示を確認する習慣をつけましょう。「減塩」「塩分控えめ」などの表示がある減塩食品もありますので、活用してみてください。
加えて食生活で塩分を控える際に見落としがちなのが、魚介の練り製品やパン類、麺類などです。これらの食品は製造工程で意外と多くの塩を使用している場合がありますので注意しましょう。ちなみに、白米は塩分量ゼロ、蕎麦もほぼゼロのため、パンか白飯かを選ぶなら白飯、うどんか蕎麦なら蕎麦にするほうが良いです。ただし、白飯や蕎麦には塩分の多い漬物や汁物、つけ汁が添えられているので、注意が必要です。
Well TOKK vol.30 2023年7月4日発行時の情報です。