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wellness講座「これでむくみを解消!」
むくみは、血液中の水分が血管の外に過剰にしみ出し、皮膚の下にたまった状態です。健康な人でも立ち仕事などで足がむくむことがあります。一晩で治るものなら心配いりませんが、時には重い病気が潜んでいることがあるので軽視することはできません。
むくみのメカニズム
むくみは血液の流れが関係しています。心臓から動脈を通って全身に送り出された血液は、末端にある毛細血管に入り、静脈を通ってまた心臓に戻ります(図1)。毛細血管では、血液中の酸素や栄養素を含んだ水分が体の細胞と細胞の間にしみ出しています(図2)。これを間質液(かんしつえき)と言います。間質液は細胞に酸素や栄養素を与え、逆に細胞から二酸化炭素や老廃物を受け取ります。その大部分は毛細血管に戻り、一部はリンパ管を通って静脈に流入します。
通常、毛細血管から出入りする水分の量は一定に保たれていますが、何かの原因でこのバランスが崩れ、皮膚の下に間質液が過剰にたまることがあります。これがむくみです。つまり、むくみは、毛細血管からしみ出る水分が多くなる、あるいは毛細血管へ戻る、またはリンパ管に流れる水分が減ることによって起こるのです(図2の右)。
(毛細血管では図2のように水分が出入りしている)
病気によるむくみ(浮腫)
むくみに関連する病気を表1に挙げます。
心臓や腎臓、肝臓、甲状腺などの病気が原因で全身がむくむことがあります(全身性浮腫)。また、静脈やリンパ管の病気が原因で手や足のむくみが引かないことがあります(局所性浮腫)。全身性浮腫は放っておくと命に関わることもありますので、むくみが何日も取れない、だんだんひどくなる、息切れや動悸を伴う、尿の出が悪い、痛みがある、などの症状がある場合は早めに医師の診察を受けましょう。
*ムコ多糖類:糖質、アミノ酸などからなる粘液質の多糖の総称(ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸など)
病気以外のむくみの原因
健康な人でも、長時間同じ姿勢で立ち仕事やデスクワークをしたり、飛行機や車で長距離の移動をしたりしていると、重力の影響で足に水分がたまり、足がむくんできます。そのほかのむくみの原因として、水分や塩分の取り過ぎや過度の飲酒などがあり、女性では月経前や妊娠中、更年期で女性ホルモンのバランスが乱れるなどが挙げられます。また、薬の副作用でむくむこともあります。たとえば、副腎皮質ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(鎮痛薬や風邪薬など)、降圧薬(カルシウム拮抗薬)、漢方薬(特に甘草が含まれるもの)などです。
むくみの予防法
<身体編>
❶ オフィスでできるむくみ予防
心臓より低く遠いところにある足は、毛細血管から水分がしみ出しやすく、また毛細血管内に水分が戻りにくくなっています。立ちっぱなしや同じ姿勢を長時間続けている人は、ときどき姿勢を変えたり、ストレッチをしたりしましょう。また、ふくらはぎの筋肉を動かす簡単な運動(図3)をすると足のむくみの予防になります。
不安定なら壁に手をついたり、机に手を置いて行いましょう。
つま先を上げる、を交互に数回行います。
図3 むくみ予防の運動
❷ 普段から適度な足の運動を
足のふくらはぎの筋肉は足の静脈の血液を心臓に戻すポンプの役割をしています。しかし、女性などふくらはぎの筋肉量が少ない人や普段運動をしていない人はこのポンプの力が弱いため、むくみやすくなります。普段からウォーキングやジョギングをしたり、駅ではエスカレータをやめて階段を使うなど、足の筋肉を衰えさせないようにしましょう。
❸ お風呂、マッサージ、十分な睡眠
仕事を終えて帰宅したらお風呂に入ってリラックスし、足をマッサージするといいでしょう。夜は規則正しく床に就いてぐっすり眠ることがむくみ解消につながります。
*参考:こちらでむくみに有効なツボを紹介しています。
<食事編>
❶ 水分の取り過ぎ、控え過ぎも要注意
水分の取り過ぎや逆に控え過ぎもむくみの元になります。水分を取るときは一度にがぶ飲みするのではなく、こまめに何度も取るようにしましょう。また、特に寝る前は水分を取り過ぎないように注意してください。
❷ 塩分やアルコールは控えめに
塩分の取り過ぎもむくみに直結します。毎日の食事を見直して、塩分を取り過ぎている場合、味付けは減塩に心掛け、塩より酢や香辛料で風味をよくするなどの工夫をしましょう。
アルコールには利尿作用があるため、お酒を飲み過ぎると脱水状態になり、喉が渇くので水分を取り過ぎてしまいます。むくみ予防のためにもお酒は控えめに。
❸ たんぱく質、ビタミン、ミネラルの豊富な食事を
血液中にはたんぱく質の一種であるアルブミンがあります。これが不足すると水分が毛細血管の外にもれやすくなるため、むくみが起きます。また、カリウムやカルシウム、マグネシウムといったミネラルが不足するとむくみやすくなると言われています。肉、魚、豆腐などのたんぱく質や、ミネラルが多い野菜や果物を積極的に食べるようにしましょう。
たんぱく質やミネラルが多く含まれる食品を取りましょう。また、減塩食をおいしく食べる工夫をし、塩分の多いスープなどは飲み干さないようにして、お酒は控えめに。
(公財)兵庫県予防医学協会理事・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。
Well TOKK vol.14 2019年7月2日発行時の情報です。