wellness講座「タイプ別頭痛の対処法」

日本人の3人に1人は頭痛持ちと言われ、頭痛は男性より女性に多いとされます。原因は様々で、ストレスなど精神的な要素が関係する頭痛もあります。中には生命に関わる病気もありますから、その原因をしっかり見極めて対処する必要があります。

頭痛の種類

頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。同じような頭痛を繰り返す慢性頭痛は一次性頭痛と呼ばれ、その多くは生命の危険はないと考えられます。一方、二次性頭痛と言って、これまで経験したことがないようなひどい頭痛が急に起こった場合や短時間でひどくなる頭痛、手足のまひやしびれを伴うような場合には、くも膜下出血、脳腫瘍(のうしゅよう)、髄膜炎(ずいまくえん)などが原因となっていることがあります。これらの病気は生命に関わることもありますので、見逃さず、すぐに医師に相談することが大切です。
それでは、頭痛についてもう少し詳しく見ていきましょう。

代表的な一次性頭痛

一次性頭痛としては、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛が代表的なものとして挙げられます。この3つの頭痛はそれぞれ次のような特徴があります。

片頭痛 ズキンズキンという痛み

他の症状:発作中に吐き気や嘔吐を伴い、光や音・においに過敏になる。頭痛が起こる前に、目の前に光がチカチカ見える特徴的な前兆が出ることがある(閃輝暗点〈せんきあんてん〉)。

  • 日常生活への影響
    動くと痛みが増すので日常生活に支障をきたす。
  • 頻度・持続時間
    多い人は週に1回、少ない人は年に数回、頭痛発作が起こる。 4時間~72時間持続する。
  • 痛みの程度
    中程度〜重度。
  • 性別・年代
    20~40歳代の女性に多い。
片頭痛の原因・治療・予防

原因はよく分かりませんが、神経伝達物質のセロトニンが関与していると言われてきましたが、最近では「三叉神経(さんさしんけい)血管説」が有力です。片頭痛を引き起こす誘因には、精神的ストレス、不規則な睡眠、月経、天候の変化、アルコールなど多岐にわたります。これらをできるだけ避けることが片頭痛の予防につながります。
片頭痛には市販の頭痛薬が有効な場合もありますが、医師の処方が必要なトリプタン系薬剤がより有効です。しかし、頭痛薬を飲み過ぎて起こる薬物乱用性頭痛もありますので、必ず医師の診察を受けて適切な治療を行いましょう。

緊張型頭痛 頭が締めつけられるような痛み

他の症状:肩こり、首筋の筋肉の緊張、めまいなどを伴う。

  • 日常生活への影響
    動いても痛みはひどくならないので、日常生活への影響はあまりない。
  • 頻度・持続時間
    月に数回から毎日。30分〜数日間持続する。
  • 痛みの程度
    比較的軽度〜中程度。
  • 性別・年代
    慢性頭痛の中で最も多く、10〜50歳代の女性によく見られる。
緊張型頭痛の原因・治療・予防

精神的ストレスや、長時間のパソコン作業や無理な姿勢を続けるなどの身体的ストレスが原因と考えられています。 慢性緊張型頭痛の薬物療法には鎮痛薬、非ステロイド性消炎薬、筋弛緩薬、抗不安薬などが用いられます。非薬物療法には心理療法のリラクセーションやバイオフィードバック*など、理学療法として鍼灸や頸部指圧などがあります。
ストレスをためない、異常な姿勢を長時間続けない、頭痛体操(ほぐして痛みを和らげる頭痛体操ページ参照)を行うなどを心掛けましょう。
*認知行動療法の一種で、通常では自覚や制御が難しい生理活動をセンサー等で測定して音や光などに変換し対象者に自覚させる方法

群発頭痛 目の奥がえぐられるような激しい痛み

他の症状:目の充血。涙が出る。まぶたが下がったり腫れたりする。鼻水・鼻づまり。額(ひたい)や顔から汗が出る。落ち着きがない。興奮した様子。

  • 日常生活への影響
    痛みが非常に激しくてじっとしていられない。
  • 頻度・持続時間
    2日に1回から1日に8回くらいまで様々。15分〜3時間持続する。1年の特定期間に集中する(群発期)。
  • 痛みの程度
    重度〜極度。
  • 性別・年代
    20~40歳代の男性に多く、女性の 3〜4倍。患者数は比較的少ない。
群発頭痛の原因・治療・予防

原因はまだよく分かっていませんが、脳内にある内頸動脈(ないけいどうみゃく)の異常な拡張が関係していると言われています。
急性期の治療薬としてはトリプタン系薬剤の皮下注射が行われます。また純度100%の酸素を吸入する方法も有効です。
予防的には末梢血管を拡張させるカルシウム拮抗薬などが使われます。
発作はアルコールにより誘発されるので、群発期には必ず禁酒しましょう。喫煙も誘因とされるので控えましょう。

見逃してはいけない危険な二次性頭痛

次のような場合、一次性頭痛より二次性頭痛が疑われます。

❶ 突然の、今まで経験したことがない激痛
❷ いつもと様子の異なる頭痛
❸ 頻度と程度が増していく頭痛
❹ 50歳以降に初めて起こった頭痛
❺ 手足のまひや歩きにくい、しゃべりにくい、ものが見えにくいなどの神経症状がある頭痛
❻ 会話が成り立たない、認知症の傾向があるなど精神症状のある頭痛
❼ 発熱、吐き気・嘔吐、項(うなじ)が硬直するなどの髄膜(脳を保護する膜で、硬膜・くも膜・軟膜の三層からなる)刺激症状がある頭痛

二次性頭痛の原因の中には見逃してはいけない危険なものがあります。
  • くも膜下出血(脳動脈瘤が破れてくも膜の下にある脳内に出血する)
  • 慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ) 〈頭を打った衝撃で脳を包む硬膜の下に血腫が溜まる〉
  • 脳出血、脳梗塞(のうこうそく)
  • 脳腫瘍
  • 髄膜炎

これらの病気(特にくも膜下出血)は発症して放置すると致命的となります。このような頭痛があれば、すぐにかかりつけ医に相談したり脳神経内科や脳神経外科を受診しましょう。

監修:平田結喜緒ひらたゆきお先生

(公財)兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ参与。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

Well TOKK vol.12 2019年1月8日発行時の情報です。