wellness講座「春は花粉症対策から」

春の日差しも心地よくなってきました。でも、花粉症のことを考えると気が重いという方も多いのでは? 日本人の30%近くが花粉症で、今後も増加傾向にあると言われます。花粉を避けられない現代社会を生きる私たちは、どんな対策を立てればいいのでしょうか。

花粉症はアレルギー疾患の一種

私たちの体には、「免疫」といって、細菌、ウイルス、食物、花粉などの異物が体内に入るとこれを攻撃し排除する仕組みがあります。免疫は生存のために大切な仕組みですが、普通なら問題のない物質に対して過剰に反応して自分の体を傷つけてしまうのがアレルギー疾患です。アレルギー疾患には、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどがありますが、花粉を原因物質とするアレルギー疾患が花粉症です。

花粉症の原因となる植物は?

日本で花粉症を引き起こす植物は60種類以上あり、どの植物の花粉に反応するかは人によって異なります。よく見られるのはスギやヒノキ、カモガヤなどのイネ科の植物、ブタクサやヨモギなどのキク科の植物です。中でもスギは、花粉症全体の約70%と推定されています。これは戦後、スギの植林が盛んに行われた結果と考えられています。関西ではヒノキの植林も多く、スギよりヒノキの花粉のほうが多く飛散する年もあります。

花粉が多く飛散する時期や時間帯は?

花粉が飛散する時期や程度は地域によって違いますが、下の図のように、2月から5月頃はスギやヒノキ、4月から10月頃までイネ科、そして8月から10月頃までブタクサやヨモギなどキク科の植物の花粉が増えます。地球の温暖化や大気汚染、ストレスの影響などによって、花粉症の患者は今後さらに増加すると予測されています。一般的に、スギ花粉が多くなる時間帯は、午前中に飛び始めた花粉が都市部に到達する昼前後と、上空に舞い上がった花粉が地上に落ちてくる日没後と考えられています。

花粉症の症状は?

原因となる花粉が花粉症の人に侵入すると、連続するくしゃみ、鼻水、鼻づまりが起こります。また、眼がかゆい、充血する、涙が出る、といった症状も現われます。さらに、咳が出たり、顔が赤くなったりかゆくなったりする、微熱、頭痛などの症状が出る人もいます。

治療法は?

花粉症の治療は対症療法と根治療法に分けられます。対症療法は薬によって症状を一時的に抑えるもので、薬物治療とも呼ばれています。花粉症の主な症状を引き起こすヒスタミンの働きを抑えたり、その分泌を抑えたりする薬などがあります。
根治療法は、原因である花粉を取り除いたり接触しないようにする方法と、アレルゲン免疫療法と呼ばれるものがあります。アレルゲン免疫療法は原因になる花粉の抽出液を皮下や舌下に投与するもので、低い濃度から次第に濃度を上げていき、原因物質に慣れさせる方法で、減感作療法とも呼ばれています。しかし効果が出るのが遅く、長期間治療を続ける必要があります。詳しくはアレルギー専門医に相談しましょう。
花粉症の治療は、症状が出なくても花粉が飛散しだす時期から始めるほうが効果が大きく、早めの対処を心掛けましょう。

セルフケア-自分でできる花粉症対策

大原則はなるべく花粉に触れないことです。そのため、次のような対策がおススメです。

①花粉が多い日には外出を控える

花粉情報をまめにチェックし、花粉の多い日には不要な外出は控えましょう。花粉が飛散する季節になるとテレビや新聞で花粉情報が伝えられますが、近年、環境省花粉観測システム「はなこさん」が登場しました。各地域の1時間毎の花粉飛散数を分布図で表示するものでパソコンや携帯電話で見ることができます。
※環境省花粉観測システム「はなこさん」はこちら ≫

②外出の時にはメガネ、マスクを忘れずに

メガネやマスクは、花粉症用のものでなくても、眼や鼻に入る花粉をある程度減らすので、外出の際は忘れないようにしましょう。
マスクについては、インナーマスクを自分で作って装着すれば99%の花粉がカットされます(下図参照)。コンタクトレンズはレンズと結膜の間に花粉が入って擦れるので、花粉の多い時期はメガネにしましょう。

③ウール素材の衣服は避ける

ウール素材の衣類は花粉が付着しやすく、家に花粉を持ち帰ることになるので、表面がなめらかな化学繊維がおすすめ。また、髪への付着を防ぐため、つばの広い帽子を被りましょう。

④家に花粉を持ち込まない

帰宅したら玄関先で衣服や髪に付着している花粉を払いましょう。手洗い、うがい、洗顔を励行し、鼻をかみましょう。

⑤花粉の多い日には洗濯物や布団を外に干さない

屋外で洗濯物や布団に花粉が付着するのを避けましょう。窓は掃除の時も大きく開けないでカーテンを閉めます。家の床にも花粉は落ちているので、まめに掃除をしましょう。

家庭で簡単にできるインナーマスク

市販のマスクとガーゼ、化粧用コットンで花粉をシャットアウト!

  1. ① ガーゼを横縦約10cmに切った物を2枚用意する

  2. ② 1枚のガーゼを二つ折りにし、コットンを丸めてそのガーゼでくるむ

  3. ③ もう1枚のガーゼを四つ折りにし、マスクにあてる。②で作ったものをマスク内に置く

  4. ④ ②で作ったものが鼻の下にくるようにマスクを装着

Point!

鼻の下は、マスク、ガーゼ、コットンと何重にも防御されるので、吸い込む花粉が格段に減ります。息が苦しい時はコットンの厚さを調整します。

*環境省「花粉症環境保健マニュアル2014年1月改訂版」を参照
監修:平田結喜緒ひらたゆきお先生

(公財)兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ参与。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

Well TOKK vol.9 2018年4月3日発行時の情報です。