【教えて!沿線のお医者さん!】症状がなくても要注意!慢性腎臓病は万病のもと(神戸大学+阪神電車)

尿検査で、尿にたんぱく質が混じっている「たんぱく尿」を指摘されても「痛みなどの症状がないから平気」と、再検査を受けていない人はいませんか?腎臓は「沈黙の臓器」といわれ、慢性腎臓病になっても症状が現れないことがほとんど。そこで、神戸大学医学部附属病院の西 愼一先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2022年2月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 腎臓内科
診療科長/教授 西 愼一先生
腎機能を低下させないための初期段階の治療から、悪化した人の人工透析、腎臓移植まで、慢性腎臓病の治療に幅広く携わる。
『特に65歳以上の高齢の方は腎臓の働きが徐々に低下していきますので、毎年健康診断を受けて早期発見に努めてください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 腎臓ってどんな働きをしているの?

腎臓は尿をつくる大事な器官です。心臓から腎臓に送られてきた血液は、腎臓の中の糸球体(しきゅうたい)という部分で濾過(ろか)されて身体に必要な成分が残り、それ以外の老廃物(尿毒素)を含んだ水分(原尿)が尿細管という管に流れ込みます。原尿は1日で150Lもの量があり、すべてを排出すると身体が脱水状態になるので、尿細管で大部分の水分が再吸収され、余分な水分(1日約1.5L)だけが膀胱(ぼうこう)に溜まり、尿毒素と一緒に尿として排出されます。その他、腎臓では血圧を調整するレニン、赤血球を作るエリスロポエチン、骨を強くする活性型ビタミンDといったホルモンもつくられています。

Q 慢性腎臓病とはどんな病気?

腎臓の障害もしくは腎機能の低下が続く病気です。具体的には、たんぱく尿が+1以上か、血液検査で血清クレアチニン値をもとに算出する「推算糸球体濾過量(eGFR<イージーエフアール>)」が60未満のいずれか、または両方が3か月以上続く場合、慢性腎臓病と診断します。慢性腎臓病患者は、日本に約1,330万人(成人の約8人に1人)もいるとされ、新たな国民病といえます。

Q 慢性腎臓病の症状は?

慢性腎臓病はeGFRの値によってステージ1~5に分類されます。eGFRが90以上の場合がステージ1(正常)、60~89がステージ2、30~59がステージ3、15~29がステージ4、15未満がステージ5です。慢性腎臓病の主な症状は、むくみ、高血圧、貧血(腎性貧血)、夜間の頻尿などですが、これらが現れるのは通常ステージ5になってから。eGFRが10未満になると人工透析や腎臓移植が必要なレベルなので、症状が現れたときには、病気がかなり進行している可能性があります。そのため、症状がない段階から検査で病気を発見し、治療を開始する必要があります。

Q 治療を開始するタイミングは?

健康診断の尿検査でたんぱく尿が+1以上か、血液検査でeGFRが60未満になった場合は、腎臓内科か内科で再検査を受けてください。同じ検査結果が続くようであれば、慢性腎臓病の治療を開始します。腎臓は血圧のコントロールや造血、骨の強化などに関係しています。そのため、慢性腎臓病は万病のもとといわれ、治療せずにいると、人工透析や腎臓移植が必要な末期の腎不全になる可能性があるだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞、心血管疾患、貧血、骨粗しょう症、視力低下など、様々な病気の原因になることが知られています。早期治療で、そういった病気も予防できます。

Q どんな治療をするの?

慢性腎臓病を引き起こした原因が何かを調べ、その原因を改善する治療を行います。原因で多いのは、糖尿病、高血圧、肥満などの生活習慣病です。生活習慣の改善やお薬でこれらをコントロールすれば、腎機能の低下を食い止めることができます。特に糖尿病の方が慢性腎臓病でもある場合は、インスリンという血糖値を下げるお薬を使用すると、血糖値が下がり過ぎて低血糖を起こしやすくなります。管理が難しくなるので、専門の先生のもとでしっかりと診療を受けていただく必要があります。また、糸球体の炎症が1年以上続く慢性腎炎が原因で腎機能が低下していることもありますので、腎生検(腎臓に針を刺して腎組織を取って検査する)を行って慢性腎炎が確認された場合は、免疫抑制薬やステロイド薬で治療します。

Q 人工透析は必要になるの?

人工透析とは、腎臓の機能を体外の透析機で代わりに行う治療のことで、現在日本で約34万人の方が受けていて、毎年約4万人が新たに治療を開始しています。人工透析の患者さんは、心臓病や脳卒中、感染症などにかかりやすく、人工透析を受けていない方よりも寿命が短いのが現実です。しかし、腎機能が10%以下まで低下しなければ、人工透析を行う必要はありません。時々、eGFRが50前後で「透析になるのですか?」と不安がる患者さんがいらっしゃいますが、早期に発見でき治療をすれば、人工透析を受けずに生活することができます。

Q 慢性腎臓病を防ぐには?

慢性腎臓病の原因になりやすい高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病を予防することが、慢性腎臓病を防ぐ第一歩です。そして、何より大切なことは毎年健康診断を受けて、腎臓の障害や機能の低下を見逃さないこと。腎臓の働きは、どうしても加齢により低下していきますが、たんぱく尿やeGFRの数値の変化を早期に見つけて診療を受ければ、悪化を防ぐことができます。症状がないからと軽視しないようにしてください。

 

 

 

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