【教えて!沿線のお医者さん!】コロナ禍でも元気に! 食生活で免疫力を上げるには?(兵庫医科大学+阪神電車)

“免疫”とは、異物(細菌・ウイルス・病原体など)が体内に入ってきた時に見つけ出して排除しようとする、体に備わった機能のこと。コロナ禍の今、免疫力を上げて、病気に対する抵抗力をつけることが注目されていますが、食生活で免疫力を上げることはできるのでしょうか。栄養についての基礎知識も併せて、兵庫医科大学の荒木一恵先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2021年7月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>
兵庫医科大学病院 臨床栄養部
課長 荒木 一恵先生

子育て世代から高齢者まで、幅広い患者の食事療法を行う。糖尿病療養指導士として、糖尿病患者の食事指導にも携わる。食事療法の必要性を分かりやすく伝え、簡単に日々の生活に取り入れられるような、個々に応じた的確なアドバイスが好評。
「旬野菜は栄養が豊富。今の時期ならトマト、しらす、ネギを2杯酢で和えて冷やした副菜などがおすすめです。」

●兵庫医科大学病院 武庫川→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 栄養素とは?

食物から摂取できる体に必要な成分のことをいい、大きくは炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルの5つに分類されます。それぞれの栄養素は絡みあって働いているので、どれかが不足しても摂り過ぎても問題です。例えば糖質や脂質を体内でエネルギーに変えるためには、ビタミン類、特にビタミンB1・B2の助けが必要です。これらが不足すると、たとえ糖質や脂質が足りていてもエネルギー不足になって、体が疲れるなどの不調を起こしやすくなります。また、糖質や脂質は体に悪いと思って控える人が多いようですが、どちらも生きていく上で大切なエネルギー源。脂質は、細胞膜や血管壁を丈夫にする働きもあります。動脈硬化につながるのは飽和脂肪酸(肉の脂身や乳脂肪などの動物性の脂)。植物性オイルや魚に含まれる油は血液をサラサラにする効果がありますので、食事にうまく取り入れましょう。

●五大栄養素
炭水化物 … 食物繊維と糖質に分けられ、糖質は(他のエネルギー源に比べ)体内で最も効率良くエネルギーに変換される。
脂質 … (他のエネルギー源に比べ)少量で最大量のエネルギーに変換される。また、体の組織をつくる材料にもなる。
たんぱく質 … 筋肉、血液、ホルモンなど、体を作る材料になる。
ビタミン … 他の栄養素の働きを助け、体の調子を整える。
ミネラル … 他の栄養素の働きを助け、歯や骨の材料にもなる。

Q 免疫力を上げる栄養素はある?

免疫に重要な役割を持つのが、体内に入ってきた細菌やウイルスをやっつけてくれる白血球です。この白血球の元になるのがたんぱく質で、筋肉量を維持するためにも必要な栄養素。筋肉量の低下は低体温につながり、免疫機能がうまく発揮されない原因になります。これらの観点から、たんぱく質は、免疫力を上げるために大切な役割を持っているといえます。ただし、糖質が不足していると、せっかくたんぱく質を摂っても、筋肉や血液を作る前にエネルギー源として消費されてしまいます。そのため、お茶碗1杯程度の炭水化物を一緒に摂取するようにしてください。また、たんぱく質の他に、ビタミンA、C、D、Eが、免疫力を上げる働きがあるといわれています。

●免疫力を上げるビタミン類
ビタミンA … レバー、カボチャ、ニンジンなどに含まれる。油と一緒に食べると消化・吸収が良くなる。
ビタミンC … 野菜や果物全般に含まれる。水に溶けやすいので無水調理をするか、スープにして汁も飲むのがベスト。
ビタミンD … 干ししいたけなど、太陽下で干したものや小魚などに含まれる。魚を意識して食べることで不足を回避できる。
ビタミンE … ナッツ類、ゴマ類に含まれる。ゴマは殻のまま食べると消化されないため、すりゴマ、練りゴマがおすすめ。

Q バランスの良い食事を考える秘訣は?

日本古来の「一汁三菜」をベースにして献立を考えると、栄養バランスが整いやすくなります。一汁三菜とは、メインとなるおかず(主菜)1品と小さなおかず(副菜)1~2品、それに汁物と主食(ごはんやパン)を組み合わせること。主菜に魚、肉、卵を使うとたんぱく質が摂れ、副菜や汁物に、野菜、いも、きのこ、海藻類、大豆、乳製品などを使えば、ビタミンやミネラル、食物繊維を摂ることができます。おかず3品が難しいなら、肉や魚と野菜数種を使った料理1品(八宝菜など)に置き換えても構いません。大切なことは、できる限り毎食内容を変えること。ひとつの食品でも複数の栄養素が含まれているので、多種類の食品を食べれば、幅広い栄養素を摂ることができます。もし、1食で何かの栄養素が足りていなかったとしても、次の食事で全く違う料理を食べれば、栄養素が偏ることはありません。また、1日30品目を摂取することが望ましいといわれますが、まずは1日20品目でも構いません。1食や1日で完璧を目指さなくても、3日間くらいのスパンで多種類の食品が摂れていれば大丈夫です。

Q 野菜の上手な摂り方は?

野菜には、抗酸化作用のある色素成分「ポリフェノール」が含まれています。赤(トマト、赤パプリカなど)はリコピン、オレンジ(ニンジン、カボチャなど)はカロテノイド、紫(ナス、サツマイモなど)はアントシアニンというように、色によって成分が異なりますので、様々な色の野菜を食べると良いでしょう。また、野菜にはビタミンCを含むものが多いのですが、ビタミンCは水に溶けやすく、酸素や熱に弱いという特徴があります。野菜室に入れたままにしていると、ビタミンCの量はどんどん減っていきますので、すぐに食べ切れない場合は電子レンジや無水調理で加熱してから冷凍保存するようにしてください。冷凍食品を利用するのもおすすめ。野菜の栄養豊富な旬の時期に収穫して急速冷凍しているので、ビタミンCが失われていないものが多いです。

Q 免疫力を上げる食習慣を教えて!

3食しっかり食べることです。食事をすると栄養素が摂取できるのはもちろんですが、消化する過程で熱をうみ出しますので、体温低下を防ぐ効果があります。朝は1日のうちで体温が一番低いので、朝食をしっかり取ることがとても大切。栄養素のなかでは、特にたんぱく質を消化する時に最も熱をうみ出します。一汁三菜が難しい場合は、卵かけご飯や納豆ご飯だけでも構わないので、たんぱく質を糖質と一緒に食べるようにしてください。

 

 

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