【教えて!沿線のお医者さん!】子どもだけじゃない「りんご病」 大人がかかるとどうなる?(神戸大学+阪神電車)

子どもがかかる病気と思われがちな「りんご病」。しかし、2024年末には東京都内で流行が報告され、大人の感染や妊婦への影響があらためて注目されました。そこで今回は、りんご病の症状や予防法、病院を受診すべきサインなどについて、神戸大学医学部附属病院の岩田健太郎先生にお話を伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2025年6月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ>

神戸大学医学部附属病院 感染治療学
教授 岩田 健太郎先生
感染症医療の第一線で活躍。著書『ワクチンを学び直す』(光文社新書)などを通じて、感染症対策の重要性を広く発信する。
『りんご病は、かかっても多くの場合は自然に治る病気。焦らず、自宅で安静にして過ごしましょう。必要以上に心配せず、落ち着いて対応することが大切です。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q りんご病とはどんな病気?症状は?

正式には「伝染性紅斑(こうはん)」と呼ばれるウイルス感染症で、子どもに多くみられる病気です。小さなお子さんがかかると、発熱や鼻水などの風邪に似た症状が数日間続いたあと、頬がりんごのように赤くなることから、一般的に「りんご病」という呼び名が広まりました。大人がかかることもあり、その場合、頬の赤みはほとんど現れません。よく見ると、お腹や背中にうっすらとブラシでなぞったような赤みが出ることがありますが、医師でも見分けがつかないほど目立ちません。大人は、風邪のような症状が現れないことも多く、その代わり、膝・肘・肩など全身の関節が強く痛むのが特徴的で、特に20~30代の方に多くみられます。関節の痛みは、数日間から数週間続くこともあり、リウマチと誤診されてしまうケースもあります。また、まれに「再生不良性貧血(赤血球の産生が著しく低下する病気)」を引き起こすことがあり、特に妊婦は注意が必要です。りんご病の原因となるウイルスは「ヒトパルボウイルスB19」で、咳やくしゃみによる飛沫、または鼻や口を触った手を介して広がります。インフルエンザや新型コロナウイルスほどの感染力はありませんが、数年に一度の周期で流行する傾向があります。

Q 妊婦がかかると危険なの?

特に妊娠初期(20週未満)の妊婦が感染し、再生不良性貧血を起こした場合、胎児が酸素不足に陥り、心不全や死産につながる恐れがあります。感染が疑われた場合は、産婦人科を定期的に受診し、超音波検査で胎児の様子を継続的に確認することが大切です。ただし、りんご病は無症状のことも多く、感染に気づかず対応が遅れる可能性もあります。そのため、妊娠の予定がなくても、妊娠可能な年代の女性は日頃から感染症対策を意識することが重要です。妊婦が重症化しやすい感染症には、りんご病のほかに、風疹、麻疹(はしか)、リステリア、百日咳などがあります。りんご病には有効なワクチンがありませんが、これらの一部はワクチンで予防が可能です。ワクチンの種類によっては妊娠中に接種できないものもあるため、一定の年齢になったら、パートナーも含めて予防接種を検討すると安心です。

Q どうすれば防げるの?

りんご病には有効なワクチンがないため、予防には基本的な感染対策がとても重要です。ただ、原因となるヒトパルボウイルスB19は、アルコールに強いため、消毒液だけでは不十分とされています。石鹸と流水で手洗いを行い、マスクの着用を心がけましょう。実際、コロナ禍で全国的に感染対策が強化された時期には、りんご病の流行はほとんど見られませんでした。ところが、りんご病は自覚症状がないまま感染していることがあり、知らずに他人にうつしてしまうこともあります。特に、妊娠の可能性がある若い女性が近くにいる場合は、周囲の人が感染対策を徹底する配慮が必要です。こうした対策は、りんご病に限らず、ほかのウイルス感染症の予防にもつながります。なお、お子さんの場合は、頬が赤くなる頃には感染力はほぼなくなっているため、過度に心配する必要はありません。体調が良ければ学校や保育園に行っても大丈夫です。

Q 医療機関に行ったほうがいい?

多くの人は、自宅で安静にしていれば自然に回復します。ヒトパルボウイルスB19に対する特効薬はなく、医療機関でも基本的には解熱剤や痛み止めなどの対症療法が行われます。発熱や関節痛があっても、市販薬を使って休養すれば十分です。薬を選ぶ際は、総合感冒薬よりも症状に合わせた成分に特化した薬を選びましょう。たとえば関節痛がつらい場合は、アセトアミノフェンが主成分の鎮痛剤を。判断がつかないときは、薬剤師に相談してください。ただし、りんご病に限らず、以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

 

 

 

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