【教えて!沿線のお医者さん!】正しく理解できていますか?メタボリックシンドローム(神戸大学+阪神電車)
生活習慣病による死亡者が増加し、2008(平成20)年から40歳以上を対象に、「メタボリックシンドローム」の特定健康検査が始まりました。「メタボ」という言葉は定着しましたが、正しく理解していない人も多いようです。そこで、神戸大学医学部附属病院の淺原俊一郎先生に詳しく伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2024年6月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/
<教えてくれた先生はコチラ!>
神戸大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科
病院講師 淺原 俊一郎先生
血糖値を下げる唯一のホルモン「インスリン」の産生・分泌を司る膵臓(すいぞう)の細胞「膵β細胞」を専門に研究。糖尿病患者の治療にも幅広く携わる。
『「メタボ=肥満」とは限らず、日本人は特に太っていなくてもメタボや糖尿病になる人がいます。気になることや不安なことがあれば医師に相談してください。』
●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/
Q メタボリックシンドロームとは?
内臓脂肪の蓄積が原因で、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を引き起こす状態を指します。健康診断などで、下記の診断基準に当てはまる場合に、メタボリックシンドローム(以下、メタボ)と診断します。「肥満」と混同されがちですが、肥満の指標となるBMI (体重kg÷身長m²で計算)25以上という基準は、メタボの診断には直接関係ありません。特に日本人は、BMIが25以下であっても内臓脂肪が溜まり、メタボになりやすい傾向にあります。
Q 内臓脂肪の蓄積が高血圧・糖尿病・脂質異常症の原因になるのはなぜ?
脂肪細胞からは「アディポカイン」と呼ばれる物質が分泌されています。これには多くの種類があり、体に良い効果をもたらすタイプと悪い影響をもたらすタイプがあります。内臓脂肪が増えると、脂肪細胞は分裂する過程で大きくなり、炎症を引き起こす悪いタイプのアディポカインの分泌が多くなります。この状態が続くと、体の中で炎症が広がり、高血圧・糖尿病・脂質異常症などを引き起こす原因になります。一方、内臓脂肪が少ない人は、脂肪細胞も小さく保たれ、体に良いアディポカインが活発に分泌されます。特に、「アディポネクチン」という物質は、血糖値を安定させたり、血管を健康に保ったりする効果があり、糖尿病や動脈硬化の予防に役立ちます。そのため、内臓脂肪を減らすことが、高血圧・糖尿病・脂質異常症を防ぐためにとても重要なのです。
Q メタボになるとどうなる?
メタボの状態が続くと、心筋梗塞(こうそく)や動脈硬化を引き起こすリスクが高まり、がんや脂肪肝、腎臓病など、様々な病気の原因になることもあります。
Q メタボだと診断されたら?
メタボと診断されると、高血圧・糖尿病・脂質異常症のいずれか2つ以上が当てはまっている状態ですが、原因は内臓脂肪の蓄積にあると考えられます。そのため、薬を使わなくても、内臓脂肪を減らすことで改善できる見込みが十分あります。治療は、食事療法、運動療法を中心に、良質の睡眠をとり、規則正しい生活を送ることが推奨されます。メタボと診断された多くの人は、あまり食べていないつもりでも、実は摂取カロリーが多かったり、たんぱく質が不足して栄養バランスが悪かったりと、問題点に気付いていません。自分で生活習慣を改善することは難しいので、栄養士がいる内科を受診し、専門的な栄養指導を受けることをオススメします。特に高齢者は、不適切な食事制限を行うと骨格筋量が減り、サルコペニア(筋力低下による身体機能の低下)やフレイル(要介護の前段階)になるリスクがあるため、専門の指導を受けることが重要です。また、遺伝的な要因でメタボになる場合もあります。その場合は、医師の指導のもと、薬による治療が必要になることがあります。
Q メタボにならないためには?
メタボを防ぐ場合も、治療と同様に規則正しい睡眠、バランスの良い食事、そして、運動習慣を持つことが大切です。運動は、ウォーキングやジョギングのような有酸素運動が効果的です。腹筋などの筋トレも、筋肉量を増やすことで基礎代謝が上がり、間接的に内臓脂肪の減少に役立ちます。しかし有酸素運動のほうが、直接的に内臓脂肪を燃焼させることができ、効果を早く感じることができます。ウォーキングの場合は、軽く汗ばんで、少し息が切れる程度の速歩きがオススメです。内臓脂肪は皮下脂肪よりも減らしやすいので、定期的に運動することで実感しやすくなります。一番大切なのは続けること。少しずつでも毎日続けて、健康的な生活を心掛けてください。
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