心に耳を傾ける

春の訪れに、漸く世の中が、少しずつ明るい気配を取り戻し始めた3月。
新しく何かが始まるこの季節に目を向けたいこと、それは健康でいるために一番大事な “心の表情” です。
ここまで “顔の表情”や “声の表情”についてお話ししてきましたが、最後は、新たな時代の新たな音楽の取り入れ方をみなさんと一緒に考えていければいいなと思います。
　

【fitnessとwellnessの違い】

このWellness PLUS +のコラムを通じて歌を歌いながら楽しく顔や声の表情を鍛える「うた声フィットネス」というオンラインレッスンを開催することになり、
“Fitness”と“wellness”の関係性について考える機会となりました。

Fitnessの語源は、英語の “fit”で、「適合」という意味があります。。

これまでの傾向として、体づくりや、音楽を聞いたり奏でたりすることに対して、私たちは外に向けて“フィット(適合)” させていく要素が強かったように感じます。
例えば、流行りの音楽に乗るのもそうですし、人付き合いの為にカラオケで上手に歌いたいという気持ちもそう。
そういった生徒さんに対して、私も「これを歌えばウケるよ」とか、
「今これが流行っているよ」というような提示をしてきたような気もしますし、
さらに私自身もシンガーとして活動する中で、自分が発信したいものより「誰にどう見られるか」そんなことに囚われていたようにも感じます。
もちろんその感情は誰しもが持ち得るもので、決して悪いことだと思わないのですが、このコロナ渦、「本当の健康」について考えた時、変わりゆく時代や、外部にフィットしていくことが重要なのではなく、変わりゆく時代とともに、自分自身にフィットしていくことが大事で、それが、 “自由で心が生き生きしていること” つまりは、“wellness”に繋がっていくのではないかと思うのです。

※wellnessとは、健康を身体の側面だけでなくより広義に総合的に捉えた概念で、米国のハルバート・ダン医師が『輝くように生き生きしている状態（1961）』と提唱したのが最初の定義です。

「うた声フィットネス」は、そんな自分自身の中にもともと備わっているものにフォーカスをあてて、笑顔や、輝く声を引き出していきたい。
レッスン中のみなさんの表情や声を聞き、回を重ねるごとにそんな気持ちが強くなっていきました。

【取り入れるのではなく引き出す音】

今は、いろんな方法で音楽を聴ける時代になって、SpotifyやApple Musicなんかのサブスクに登録していれば、ライフスタイルや、住んでいる場所、その日の気分や天気で、自分に合った音楽がすぐに探せます。
だからこそ誰かが提案したプレイリストに頼るのではなく、心は何を求めて、何を感じていたいのか “今” に耳を傾け自分自身にフィットする音選びをしていきたい。
日々、様々な場所から勝手に入りこんでくる情報に少しだけ目をつむったら、
1人で部屋にいる時、散歩をする時、どんな音が心に響くかどうか、問いかけてみて欲しいのです。

たとえば私の場合、疲れを感じた時、水を欲するように聴きたくなるのが、
「サラ・マクラクランのAngel」という曲。部屋を暗くして、キャンドルを灯して聴くと、美しく優しい声とピアノの音が部屋中に広がって、心がどんどん潤っていくのがわかります。
そんな自分の為の時間ってとても贅沢で素敵ですよね。
もし音楽を聞いていてついつい鼻歌を口ずさんだとしたなら、その曲があなたにとって“必要” だということに気付いてあげる。そんなサウンドに乗せて心地よく歌っている時間が、“本当に音を楽しんでいる”瞬間なのかも知れませんね。

このリレー形式のコラム企画も、今回が最終回。
私はボイストレーナーやシンガーとして「音楽」と「健康」の関わり合いについて考え、言葉にしてきましたが、
同時にこの企画を通して様々な角度から、健康で、楽しく、美しくいるためのヒントを知ることが出来ました。
自分の体と対話したり、香りで五感を研ぎ澄ませたり、はたまた内面とじっくり向き合ったり。
自分の機嫌の取り方の幅が広がることで、それをチョイスできる自由や余白が生まれ、今までより少し、毎日が楽しく過ごせそう。
皆さんにとってもそうだったら嬉しいな。

3ヶ月間お付き合いいただきありがとうございました。

～清水愛さんご出演情報～
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