【教えて!沿線のお医者さん!】血糖値が正常でも油断は禁物!「食後高血糖」に要注意(兵庫医科大学+阪神電車)

近年、マスコミで「グルコーススパイク」や「血糖値スパイク」などの名称でも話題になっている「食後高血糖」。普段、血糖値が正常な人でも発症する可能性があり、“隠れ糖尿病”“糖尿病予備軍”である危険も!兵庫医科大学の楠 宜樹先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2017年7月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 内科学 糖尿病・内分泌・代謝科
講師 楠 宜樹先生
内科一般、糖尿病、特に糖代謝異常合併妊娠の管理、インスリン治療(頻回注射療法、CSII、SAP)、糖尿病急性合併症の管理を専門とする。
「現在糖尿病とは無縁だと思っている方も予防が大事。私も普段から食事の際には野菜から食べて、糖質の吸収を抑えるようにしています。」

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 「食後高血糖」って何?

食後、急激に血糖値が上昇し、2時間経過しても血糖値が140mg/dl以上ある場合に、食後高血糖と診断します。健康な方は食後血糖値が上昇するとインスリンが分泌され、その働きによって血糖値は低下、食後2時間後には空腹時の値にまで下がります。食後高血糖の場合、このインスリンの働きが弱くなっていることなどが考えられ、原因は肥満、運動不足、加齢、遺伝、ストレスなど様々。普段から血糖値が高い人だけでなく、空腹時の血糖値が正常域の方でも食後高血糖になる可能性があるのが特徴です。

Q 食後高血糖になったらどうなるの?

血糖値が急激に上昇すると、酸化ストレスなど血管の内側を傷つける様々なストレスがかかります。その結果、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクを高めます。近年では、認知症のリスクも高めることが分かってきました。また、食後高血糖の人は、インスリンの働きが悪いことから、「隠れ糖尿病」や「糖尿病予備軍」である可能性も高く、症状が進行して糖尿病を発症すると、神経障害や網膜症、腎症など、様々な合併症を併発するリスクが高まります。

Q 自覚症状はある?

食後高血糖は、ほとんど自覚症状はありません。検診でも、通常は空腹時の血糖値を測定しますから、食後高血糖かどうかを知る術がなく、気づかないうちに動脈硬化が進んでいる恐れもあるのが現状です。

Q 食後高血糖かどうかを調べるには?

通常の健康診断では空腹時の血糖値を測定するため、食後高血糖があるかどうかはわかりません。また、ここ1~2か月の平均血糖値の指標となるHbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)が血糖管理指標として用いられますが、HbA1cが正常範囲内でも食後高血糖がないとは言い切れません。食後高血糖が気になる場合は医療機関に相談して、食後の血糖値を検査してもらうか、必要に応じて経口ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖を飲んで血糖値の上昇度合いをみる検査)を行う必要があります。日本人は欧米人と比べてインスリン分泌が少ないといわれており、2014年の国民健康・栄養調査によると糖尿病と糖尿病予備軍を合わせると2,050万人にも上ると推計されています。つまり、誰でも血糖値が上昇するリスクがあると考えて、日頃から予防しておくことが得策です。

Q 予防するにはどうすればいいの?

次の【食後高血糖の予防】を参考にしてください。3大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)のうち、食後もっとも血糖値を上げやすいのが糖質です。まずは糖質を食べすぎないようすることが重要です。また、糖質の吸収速度の速い白米から、吸収速度がおだやかな玄米や雑穀ごはんなどに変えてみることも有効です。ただし、糖質を極端に制限し、脂質摂取量を増やすことはやめましょう。日本では、動脈硬化を進めるといわれているトランス脂肪酸(マーガリン、インスタント食品、ジャンクフードに多く含まれる)の使用に制限がありません。血糖値に気を使っていても、質の悪い脂を摂取していると、結果的に動脈硬化のリスクが上がってしまいます。ですので食事をする際は、トランス脂肪酸が含まれる食品は出来るだけ控え、EPA(青魚の脂に多い)など、動脈硬化を予防する脂を意識して摂取するとよいでしょう。

【食後高血糖の予防】
●食事は野菜→おかず→主食の順番で
食物繊維を先に摂ると、糖の吸収が緩やかになる。糖質の高い炭水化物を食べる前に、野菜→肉・魚の順に食べることで血糖値の上昇が抑えられる。

●早食いは禁物!よく噛んでゆっくり食べる
早食いすると、血糖値を下げるインスリンの分泌が間に合わず、急激に血糖値が上がりやすい。

●食事は抜かずに3食バランスよく
食事の間隔が空くと、血糖値が急激に上昇しやすくなることが知られている。

●毎日軽い運動を取り入れる
食後しばらくしてから、15~30分程度の軽い運動をするのがベスト。激しい運動は、体にストレスがかかって逆効果になる場合も。散歩や柔軟体操など、無理なく続けられる運動を取り入れることが大事。

Q 血糖値についてもっと知りたい!

当院では、2号館2階西の集団栄養指導室にて、毎週金曜(15:00~)、第2・4週の火曜(15:00~/14:00~)、第3週の水曜(15:00~)に糖尿病教室を無料で実施しています。金曜日は当科の医師が、その他は眼科医、看護師、薬剤師が担当します。参加申込みは不要で、患者さん以外の方も参加できますので、お気軽にお越しください。
※糖尿病教室は、学会出席などの関係で開催しない場合もあります。

 

 

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