【教えて!沿線のお医者さん!】正しい知識があれば家庭での食中毒は防げる!(神戸大学+阪神電車)

食中毒といえば冬場のノロウイルスが有名ですが、実は気温が高くなる季節も要注意!梅雨から夏にかけて起こりやすい家庭での食中毒とその対策について、神戸大学医学部附属病院 感染制御部部長・特命准教授の時松一成先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2017年6月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 感染制御部 部長・特命准教授
時松一成先生
病院感染を未然に防ぎ、安心・安全な医療を担うために日々務める
「家族全員、手を洗う習慣が大事です。特にトイレの後、家に帰った時、食事の前には、しっかり手を洗いましょう。」

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
http://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 夏場に発生しやすい食中毒って?

一般的には、口から摂取した細菌やウイルスが、お腹の中で毒素を発生し、なんらかの中毒症状が起こることを食中毒といいます。毒素が増殖する時間によって潜伏期間が異なり、食べてすぐ2~3時間で発症するケースから、長ければ1週間後に発症する場合もあります。
病院物質は下の通りです(カッコ内は原因となる主な食品)。

●ブドウ球菌(おにぎり、サンドイッチなど)
[特徴]
傷口、鼻水の中などに存在。ケガをした手で調理した料理から感染しやすい。加熱で毒素は壊れない。
[症状]
食後3~4時間で腹痛・下痢・嘔吐などを発症。1~2日で治るケースが多い。
[予防法]
調理前には必ず手を洗い、調理した料理は清潔な器に入れ、すぐに冷やして保存する。

●カンピロバクター(主に鶏肉)
[特徴]
生や加熱不足の鶏肉が原因となることが多い。熱に弱い。
[症状]
嘔吐・腹痛・下痢など。潜伏期間は1週間と長い場合がある。重症化するケースは稀だが、「ギラン・バレー症候群」(※1)を合併するケースがある。
[予防法]
鶏肉はなるべく生で食べずに、加熱調理する。生肉を触ったら手を洗う。生肉をカットしたまな板や包丁で、サラダなどの生食を調理しない。

●腸炎ビブリオ(魚介類)
[特徴]
海水の中に存在し、水揚げされた魚に付着。室温で増殖。高温では死滅する。
[症状]
潜伏期間は10~20時間。激しい腹痛や下痢が主な症状。肝臓が弱い人は、腸炎ビブリオの親戚「ビブリオ・バルニフィカス(※2)」の感染にも要注意!
[予防法]
加熱調理する。生食したい場合はすぐに冷蔵庫に保存して早めに食べ切る。生魚を触ったら手を洗う。生魚をカットしたまな板や包丁で、サラダなどの生食を調理しない。

●ウェルシュ菌(カレー、シチューなど)
[特徴]
土や水、健康な人や動物など、至る所に存在。熱に強く、無酸素状態を好むため、煮込料理の鍋底に発生しやすい。
[症状]
食後、半日以内に腹痛・下痢などが出現する。症状は比較的軽く、2~3日で治るケースが多い。
[予防法]
鍋底までよくかき混ぜて、空気を入れること。調理後は室温で放置せず、小分けにして冷蔵または冷凍保存を。温め直しても滅菌できないため、2日目のカレーは要注意。

●病原性大腸菌(肉類)
[特徴]
様々な動物が保有しており、精肉作業中に肉に付着しやすい。高熱に弱い。
[症状]
潜伏期間は比較的長く、3~6日程度。ひどい場合は出血を伴う下痢や、合併症で腎障害を起こすことも。
[予防法]
肉は加熱調理してから食べる。生肉を触ったら手を洗う。生肉をカットしたまな板や包丁で、サラダなどの生食を調理しない。

●サルモネラ菌(卵)
[特徴]
鶏に存在するため、卵に付着しやすい。カメなど爬虫類にも存在する。熱に弱い。
[症状]
食後、半日~2日間で嘔吐・腹痛・発熱・下痢など、ひどい症状が出ることが多い。
[予防法]
卵は購入したらすぐに冷蔵庫で保存し、できる限り加熱して食べる。殻に付いているので、割れた卵は食べない。ペットを触った後はよく手を洗う。

●ボツリヌス菌(自家製の瓶詰め料理、はちみつなど)
[特徴]
自然の至るところに存在。毒性の強い毒素を産生するが、高温で分解する。
[症状]
4~36時間で、めまいや頭痛、冷や汗をかく、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることも。乳児がはちみつを摂取すると「乳児ボツリヌス症」(※3)を発症する場合が。
[予防法]
瓶詰め料理をするときは、容器を10分間煮沸消毒する。乳児は、はちみつを絶対に摂取しない(大人の摂取は問題ない)。

※1 ギラン・バレー症候群
カンピロバクターに対する抗体が自分自身の運動神経を攻撃し、食中毒が治まった後、手足が動きにくい、呼吸がしづらいなどの症状が現れることがある。

※2 ビブリオ・バルニフィカス
肝臓に持病がある人が感染すると、死亡率50%と重症化するケースが。傷口から感染することもあるので、ケガをしている時は海水に触れないこと!

※3 乳児ボツリヌス症
1歳未満の乳児がボツリヌス菌を摂取することで重症化する感染症。呼吸ができないなどの症状が起こり、致死率は25%。

Q 食中毒にかかったらどうすればいい?

辛いですが、下痢止めは服用せず、悪いものは下からも上からも出すようにしてください。脱水症状になりやすいので、スポーツ飲料を飲み、1~2日は絶食して腸を休めた方がいいでしょう。二次感染を防ぐために、トイレや嘔吐した場所は清潔に拭き取り、手を石鹸でよく洗うことも大切。アルコールやハイターによる消毒も有効です。下のような場合は重症化する恐れがありますので、必ず病院に行ってください。当院では、ギラン・バレー症候群や小児の重篤な食中毒の症例が豊富です。また、検査室ですぐに原因菌を調べることができるほか、感染症内科がありますので、海外で感染症にかかった方のご相談にも応じます。まずは、かかりつけの病院で紹介状をもらってください。

重症化の恐れあり!こんな状況ならすぐに病院へ!!
●乳幼児や高齢者、体力のない方、肝臓が悪い方
1~2日で急に悪化するケースがあるため、症状が軽くても病院にかかった方がベター。

●高齢者が嘔吐した際、吐物が喉につまった
吐物で窒息する可能性があるため、手袋をするか、手にビニール袋を巻いて吐物を掻き出したあと、救急車を呼んで!

●水が飲めずぐったりしている、おしっこが半日出ない、1日10回以上下痢がある
脱水症状を起こす可能性があるため、病院で点滴を受けた方が安心。

●血便が出る
大腸ガンやポリープなど、他の病気の可能性も考えられるので検査を受けて。

●体がふらふらする、手足がしびれる
合併症を起こしていたり、毒素型の可能性があるので、受診して原因の解明を。

●じんましんや水ぶくれ、発疹などが全身に現れる
強いアレルギー反応が出ている可能性があるため、すぐに受診を。

Q 食中毒を予防するには?

先にお伝えしたように原因菌によって予防法は異なります。共通して言えることは、手洗いを徹底すること、食材の中心部の温度が75度以上で1分間以上加熱すること、食品や料理はすぐに冷蔵庫で保存し早めに食べ切ることです。解凍は室温でなく冷蔵庫で行ってください。

 

 

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