【教えて!沿線のお医者さん!】花粉症のメカニズムを知って、早期に症状緩和を目指そう!(兵庫医科大学+阪神電車)

2月中旬頃から4月初旬頃までスギ花粉、その後GW頃まではヒノキ、初夏のイネ、秋のブタクサなど、日本は年中花粉が飛散しているといっても過言ではありません。昨年まで大丈夫でも、突然発症してしまうこともあり、注意が必要です。症状から治療法まで、兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科准教授の都築建三先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2017年3月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 准教授
都築建三先生
日本耳鼻咽喉学会認定専門医。日本アレルギー学会アレルギー専門医。特に鼻科学が専門。月・木曜日に診療を担当。音楽を愛し、バンド活動も行っていて、院内コンサートでは医師によるバンドでボーカル、ギター、キーボード演奏を披露した。

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp/


Q 花粉症はどうして起こるの?

花粉症は、花粉によって発症するアレルギー性鼻炎で、「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」という3つの主症状が現れます。人体は、異物(花粉、ダニ、ウイルスなど)が入ってくると、これを攻撃して排除しようと働きます(免疫反応)。鼻は口腔とともに、最初に外界と接する場所(粘膜)として、外界から身を守るフィルターの役目を担っています(免疫機構)。異物が鼻に入ると、跳ね返そうと「くしゃみ」の反射が生じ、「鼻水」で洗い流そうとします。その後、鼻の粘膜を腫らし、体内への進入路を狭くして遮断しようとします。これが「鼻づまり」です。これらの症状は誰にでもある正常な防御反応ですが、必要以上に起こってしまうのがアレルギーです。口腔から花粉が侵入すると喉のイガイガ感や咳などの咽喉頭症状も起きます。防御しているはずが、かえって自分の体を苦しめてしまうため、治療が必要となります。詳しくは次をご覧ください。

●花粉症が起こる仕組み
1 異物が侵入
アレルゲン(抗原)という。花粉症の場合、アレルゲンは花粉。

2 抗体を作る
抗体とは異物を排除する物質で免疫グロブリンと呼ばれる。この抗体の一種「IgE」が産生される。

3 感作が起こる
次回同じ抗原の侵入に備えて攻撃準備を整えている状態。具体的には肥満細胞と呼ばれる細胞に2で産生されたIgE抗体が結合して、抗原の侵入に反応する状態になっている。

4 発症する(くしゃみ・鼻水・鼻づまり)
同じ抗原が侵入すると、IgE抗体と結合して肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出されて攻撃開始。

Q 花粉症との見極め方は?

風邪(感冒)は急性上気道炎とされ、異物は病原体であるウイルスです。発熱や体の節々の痛み、体がだるいなどの症状が起こります。さらに細菌感染を伴うと濁った鼻水になります。花粉症のみではこのような症状はありません。ウイルスのサイズは0.1~0.2マイクロメートル(µm)に対して、花粉は30~40µmです。サイズの大きい花粉は最初のフィルターである鼻でほぼ吸着されるため、鼻炎が生じるのです。典型的な花粉症の症状は下図をご参照ください。また、スギ・ヒノキ花粉の飛散と同じ時期に飛来する黄砂のサイズは約4µm、カビ(真菌)は約5µmで、これらは鼻にも吸着しますが、鼻をすり抜けて肺や気管支にも入りやすいサイズです。そのため咳などの症状が強く現れます。

●典型的な花粉症の症状

Q 根治はできるの?

現在根治が期待されているのは「アレルゲン免疫療法」という治療です。皮下および舌下からアレルゲン(花粉)を摂取して、体質改善につなげる治療法です。アレルゲンを体内に入れることに不安を感じる方もいらっしゃいますが、極少量から始めるので、体に害がないという研究結果も出ていますし、初回は30分間の医師の立会いの下で行いますので安心です。現在は、スギとダニに対する舌下免疫療法に保険が適用されています。ただ、既に症状が出ている状態で、さらにアレルゲンを体内に入れることは症状を悪化させる可能性があるため、症状がない時期、スギ花粉症の方はスギ花粉の非飛散期から始める必要があります(夏頃の開始が理想)。効果が出るまでには1年半~3年かかるため、症状がない時期も根気よく毎日続けることが肝心です。

Q 花粉症にかかったらどうすればいい?

花粉症を放っておくと、副鼻腔炎を発症するなど、第2、第3の症状を引き起こす可能性があります。また、花粉症は、日中の集中力低下による学力低下や経済的生産性の大幅な悪化、夜間の睡眠障害の原因となります。症状がまだ軽いうちから症状を緩和させる治療を行うことをおすすめします。耳鼻咽喉科で診断され、症状に合わせて、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻に直接噴霧するステロイド薬などが処方されます。目の症状がひどい場合は、眼科にもかかってください。当院では、重症の方に症状を改善させる手術治療を行っています。治療成績を向上させることを目標とする研究も行っています。

Q 予防はできるの?

花粉情報に気を配ってください。イネ科花粉症の方は、スギ・ヒノキ花粉の飛散が終わったGWの後から発症しますので、注意してください。外に物を干したら、花粉をよく落としてから取り込んでください。
外出時はマスク、ゴーグル、ツルツル素材の衣類を着用するなど、花粉が体内に入らないようにできる限りシャットアウトすることが必要です。帰宅時は衣類や髪についた花粉を落として、うがい、鼻かみなどを行うとよいでしょう。

 

 

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