【教えて!沿線のお医者さん!】認知症を正しく知って、早期発見・予防を心がけよう!(兵庫医科大学+阪神電車)

昨今、増加の一途をたどる認知症患者。記憶障害だけでなく、段取りがとれなくなる実行機能障害が起こったり、不安症やうつ、家族につらく当たったりするなどの周辺症状が先に出る場合もあります。認知症疾患医療センターを設置している兵庫医科大学の芳川先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2017年1月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

「教えて!沿線のお医者さん!」のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学病院 神経内科 主任教授
芳川浩男先生
認知症疾患医療センターのセンター長を務める。「認知症の診断には、その方がどう生きてこられたかが関わってくる」と、診断には約1時間かけることも多いという。

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分 
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp/


●認知症の種類と症状
・アルツハイマー型認知症
認知症の中で一番患者が多く、脳にアミロイドβというタンパク質が溜まることで老人斑(しみ)ができ、神経細胞が壊れ、脳が萎縮してしまう。アミロイドβは、症状が現れる15~20年前から溜まり始めることが分かっており、検査による早期発見が進行を遅らせるカギ。
[症状]
記憶障害、判断能力の低下、今日の日付や季節が分からなくなるなどの見当識障害、物盗られ妄想など。

・血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳の血管障害や、外傷などによって、脳の細胞に酸素が送られず神経細胞が死滅
することで発症。アルツハイマー型認知症に次いで多い疾患だが、若年性認知症の場合は、血管性認知
症の例が多いのが特徴。
[症状]
車の運転中に話しかけるとうまく対応できないなど、複数の情報処理能力・集中力の低下が起こりやすい。

・レビー小体型認知症
レビー小体といわれるタンパク質が、脳のある部分にたくさん集まり、その場所の神経細胞が壊れて減少することで発症する疾患。パーキンソン病に似た症状が現れ混同されやすい。
[症状]
幻覚、妄想、失神発作など統合失調症や精神疾患と似た症状が現れやすい。

・前頭側頭型認知症
物を考えるなど中枢的な役割を持つ前頭葉と、言葉を記憶したり聴覚や嗅覚を司る側頭葉の萎縮によって発症。ほかと比べ発症例は少なく、原因など解明できていないことが多い。
[症状]
今いる場所を移動してもらうと突然怒り出すなど。記憶障害は軽い場合が多い。

Q 認知症ってどんな病気?

何らかの原因で脳に障害が起こり、これまで普通にできていたことができなくなる病気です。認知症は、原因によって主に上の4つに分類され、それぞれ症状も異なります。また、65歳未満の方に認知症の症状が現れた場合は若年性認知症と呼んでいます。

Q 認知症は治せるの?

認知症の前段階であるMCI(軽度記憶障害)は、かなりの確率で食い止めることができるといわれています。MCI患者は、認知症患者と同数いることが知られています。認知症にかかってしまうと、現在の医療では完治させることが難しいため、MCIの段階で阻止できるよう、早期発見・早期治療が大切です。物忘れが気になり始めた方、下のチェックシートの症状が当てはまる方は、受診を検討してみてください。

Q 認知症の進行を遅らせるには?

今までやってきたことをできるだけ継続してください。たとえば自営業をされている方なら、もう無理かなと思っても極力頑張ってやってみるとか、趣味やお稽古ごとなども、週1回から月1回にするなど、頻度を落としてもいいので続けるようにしてください。また、人付き合いができなくなることも、認知症に陥りやすい原因のひとつですので、できるだけ人と交流する機会を持つ方がいいですね。

Q 認知症を予防するには?

最近の研究で、生活習慣と認知症には大きく関わりがあることが分かってきました。糖尿病や高血圧などの生活習慣病にかかっている方は、認知症にかかりやすいという統計が出ていますし、血管性認知症の場合は、発症の原因となる脳梗塞などを防ぐ(=動脈硬化を抑制する)ことが認知症の予防につながります。喫煙、暴飲暴食、睡眠不足を控え、適度な運動を取り入れるなどの生活習慣の改善は最も大切です。食事は、青魚に含まれるDHAやEPA、亜麻仁油などに含まれるオメガ3脂肪酸は、動脈硬化の抑制に有効だといわれています。地中海料理や日本食がおすすめですね。

Q 受診したい場合は?

当院の認知症疾患医療センターを受診されたい場合は、お近くの医療機関の紹介状が必要です。「受診した方がいいかな?」というご相談は、電話でソーシャルワーカーが対応します。また、すでに認知症が進行している方にも、症状をお伺いして、地域包括ケア支援センターなどの施設を紹介するといったご相談に応じています。

 

 

~ホッと!HANSHINとは~
グルメやカルチャー、エンターテインメント、観光スポットに関する情報など阪神沿線の様々な「魅力」をぎゅっと紹介する沿線情報紙。阪神電車の各駅や阪急電鉄や近鉄(奈良線)の主要駅などで無料配布しています(毎月25日発行)。
▶「ホッと!HANSHIN」で紹介している今月の特集や駅周辺のスポット、イベント情報はWEBでもご覧いただけます。
https://www.hanshin.co.jp/area/

阪神電気鉄道(株)は、阪神間において安全で質の高い医療の提供に取り組む神戸大学・兵庫医科大学と連携し、沿線住民の健康増進への貢献を通じた沿線の活性化を推進しています。2016年からは、子どもから大人までが健康や医療について楽しく学べる「HANSHIN健康メッセ」を開催しています。
▶「HANSHIN健康メッセ」WEBサイトはこちら
https://www.kenko-messe.com/