【教えて!沿線のお医者さん!】原因不明の熱や咳が続く…。もしかして過敏性肺炎かも?(兵庫医科大学+阪神電車)

風邪でもないのに、咳や発熱、息切れが続く…それは、古い木造建築に発生するカビや、加湿器の蒸気に含まれるカビ・細菌などが原因で発症する過敏性肺炎かもしれません。予防法や治療法など、兵庫医科大学病院の高橋良先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2025年9月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ>

兵庫医科大学 呼吸器内科学
講師 高橋 良先生
過敏性肺炎を含む間質性肺炎や気管支喘息、長く続く原因不明の咳「難治性咳嗽(がいそう)」などの診療にあたり、生活の質向上をめざした医療に取り組む。
『過敏性肺炎は、原因となる環境にさらされ続けると慢性化することもあります。咳が続くなど、気になる症状があれば、早めに専門医にご相談ください。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 過敏性肺炎とはなんですか?

空気中の抗原(カビや細菌など)を吸い込んでしまうことで、肺にアレルギー反応が起こり、炎症が生じる病気です。肺の奥にある「肺胞」(微小な袋が集まった、酸素と二酸化炭素のガス交換を行う場所)の周りにある「間質」という組織が炎症を起こすため、医学的には「間質性肺炎」の一つに分類されます。アレルギー反応なので、同じ場所にいても全員が発症するわけではなく、体質によって反応する人としない人がいます。アレルギー反応と聞くと花粉症を思い浮かべる人も多いと思いますが、過敏性肺炎は花粉症とは発症する仕組みが異なります。花粉症では「IgE(アイ・ジー・イー)」という抗体が働き、花粉を吸った直後にくしゃみや鼻水などの症状が現れます。一方、過敏性肺炎ではリンパ球の働きを促す「IgG(アイ・ジー・ジー)」という別の抗体が関わっており、原因物質を吸い込んで数時間~半日ほど経ってから症状が現れます。

Q 過敏性肺炎の原因は?

過敏性肺炎は、空気中の化学物質などの「無機物質」が原因になることは少なく、カビや細菌、動物の排泄物などの「有機物質」を吸い込むことで起こることが多いです。なかでもよく見られるのが、古い木造住宅などに発生するカビ(トリコスポロン・アサヒ)が原因となる「夏型過敏性肺炎」で、湿度が高くなる6~9月ごろに多く見られます。ほかにも、鳥の羽毛やフンによる「鳥飼病」、キノコ栽培中の胞子などによる「職業性過敏性肺炎」、掃除されていない超音波式加湿器でカビや細菌が繁殖し、それを吸い込むことで起こる「加湿器肺炎」などがあります。

Q どんな症状が現れますか?

過敏性肺炎は、症状が現れる早さによって「急性」か「慢性」、また、肺の組織が硬くなるかどうかで「線維性」か「非線維性」に分類されます。急性型だと、原因物質を吸い込んで数時間~半日ほどで、発熱、空咳、息切れなどを発症します。夏型過敏性肺炎や加湿器肺炎、職業性過敏性肺炎はこのタイプが多く、環境から離れると症状が落ち着きます。一方、鳥飼病に多い慢性型は、何年もかけて肺が徐々に硬くなり、息切れしやすくなります。加湿器肺炎は、アレルギーだけでなく細菌のエンドトキシンが原因の場合もあり、痰や胸痛など通常の感染症肺炎に近い症状が現れ、環境から離れるだけでは治りにくいことがあります。

Q どんな検査をするの? 治療法は?

胸部レントゲンやCT検査で特徴的な所見が見られることがあります。さらに気管支鏡を使用して肺を洗浄し、回収液や肺の細胞を検査したり肺組織そのものを採取します。過敏性肺炎と診断できれば、血液検査で原因物質に対するIgG抗体を調べ、急性型の場合には、原因と思われる環境から離れて症状が改善するかを観察するために、入院してもらうこともあります。治療で最も大切なのは原因を突き止めて離れることです。掃除を業者に依頼したり、場合によっては、転居や転職が必要になることもあります。症状が重い場合にはステロイド薬を、慢性型で線維化が進行している場合は、抗線維化薬で進行を抑えることもあります。

Q 予防することはできますか?

加湿器肺炎では、こまめなタンクの水の入れ替えと洗浄で予防できますが、それ以外の過敏性肺炎は原因を取り除くのが難しく、体質にも左右されるため、症状が現れたら専門医の診察を受けて、予防法や対処法を相談してください。なお、咳が三週間以上続く場合は、過敏性肺炎のほかに喘息、肺結核、肺がんなどの可能性もあるため注意が必要です。急性の場合でも、症状が一度治まった後に、肺の線維化が進んで元に戻らなくなる慢性型へ移行することがあるため、早めに受診し、適切な治療を受けることが大切です。

 

 

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