【教えて!沿線のお医者さん!】悪玉コレステロールの治療に薬は必要?(神戸大学+阪神電車)

「コレステロール値が高い」と健康診断などでいわれても、症状がないためそのままにしている人は少なくありません。しかし、悪玉コレステロールが多い状態を放置すると、心筋梗塞や脳梗塞など深刻な病気につながることがあります。神戸大学医学部附属病院の大竹寛雅先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2025年8月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

「教えて!沿線のお医者さん!」のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ>

神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野
教授 大竹 寛雅先生
高コレステロール血症などを原因とした動脈硬化による心臓疾患の治療を専門とする。カテーテル治療や心血管疾患の予防管理に従事。
『コレステロール値が高くても自覚症状はありませんが、放置すると心筋梗塞などを起こす恐れがあります。指摘されたら、早めに医師に相談してください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 悪玉コレステロールとは何ですか?

悪玉コレステロールは、正式にはLDLコレステロールといい、細胞膜やホルモン、胆汁酸などの原料となるコレステロールを肝臓から全身の細胞へ運ぶ役割があります。しかし、増えすぎると血管の壁に付着してしまい、狭くなったり詰まりやすくなったり、しなやかさが失われたりすることで、動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの重大な病気(心血管疾患)につながる恐れがあります。糖尿病や高血圧、喫煙習慣も動脈硬化を進める要因ですが、LDLコレステロールは、それらと関係なく単独でも大きな原因になることがわかっています。一方、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールは、余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す役割があり、多いほど血管を健康に保つ働きが期待できます。

Q LDLコレステロールの基準値は人によって違いますか?

一般的な健康診断による血液検査では、LDLコレステロール値が140mg/dL以上の場合、高LDLコレステロール血症と診断され、医療機関への受診が勧められます。ただし、これはあくまでも目安であり、将来的に心血管疾患を起こしやすいかどうかを考えたときの管理目標値は人によって異なります。例えば、心筋梗塞や狭心症といった冠動脈の病気を患ったことがあり、さらに糖尿病、慢性腎臓病、脳梗塞、末梢動脈疾患(脚の血管の病気)のいずれかがある人は、管理目標値を70mg/dL未満にすることが推奨されています。また、冠動脈の病気の経験がなくても、年齢や性別、喫煙習慣、高血圧、糖尿病があるかどうかでも目標値が異なります。例えば健康診断では、135mg/dLは正常範囲とされますが、管理目標値が70mg/dL未満の人にとっては、心血管疾患のリスクが非常に高いと考えられるため、コレステロールの治療を検討する必要があります。管理目標値の目安は下表のとおりですが、心血管疾患経験、高血圧、高血糖、喫煙習慣のいずれかがある方、高齢の方は、循環器の専門医に相談して確認することをお勧めします。

Q LDLコレステロールが増える原因は?

LDLコレステロールが増える原因は、遺伝(家族性高コレステロール血症)のほか、食肉の脂、バターや卵などに含まれる飽和脂肪酸を過剰に摂取するような食事、そして運動不足が大きく関わっているとされています。また、肥満や喫煙習慣、過剰な飲酒、年齢の影響も受けやすいと考えられています。

Q LDLコレステロール値が高い場合、薬による治療は必要?

まず生活習慣の改善から始めます。飽和脂肪酸やアルコールの摂取を控え、青魚やオリーブオイルなどに含まれる不飽和脂肪酸、食物繊維を積極的に摂ること、一日30分以上の有酸素運動を週5日以上(または筋トレを組み合わせて週3日程度)行うことなどを指導します。こうした取組みが続けられない場合や、数値の改善がみられない場合は、薬による治療を検討します。薬は毎日服用する飲み薬のほか、2週間に1回自分で打つ注射や、半年に1回医療機関で打つ注射もあり、いずれもコレステロール値を下げる効果がとても高いとされています。高コレステロールは、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高める大きな要因ですが、薬でしっかり下げることができるため、糖尿病や高血圧に比べてコントロールしやすい面があります。コレステロール値が高くても自覚症状はないため放置しがちですが、検査で指摘されたときは医療機関で相談し、治療を検討することが大切です。

 

 

 

~ホッと!HANSHINとは~
グルメやカルチャー、エンターテインメント、観光スポットに関する情報など阪神沿線の様々な「魅力」をぎゅっと紹介する沿線情報紙。阪神電車の各駅や阪急電鉄や近鉄(奈良線)の主要駅などで無料配布しています(毎月25日発行)。
▶「ホッと!HANSHIN」最新号をWEBでもご覧いただけます。
「ホッと!HANSHIN」デジタル版

阪神電気鉄道(株)は、阪神間において安全で質の高い医療の提供に取り組む神戸大学・兵庫医科大学と連携し、沿線住民の健康増進への貢献を通じた沿線の活性化を推進しています。2016年からは、子どもから大人までが健康や医療について楽しく学べる「HANSHIN健康メッセ」を開催しています。
▶「HANSHIN健康メッセ」WEBサイトはこちら
https://www.kenko-messe.com/