【教えて!沿線のお医者さん!】口内炎の原因や治療法、放置してはいけない症状とは?(神戸大学+阪神電車)

痛くてつらい口内炎。多くの方は自然に治るまで我慢しがちですが、実は、別の病気が原因で治りにくく、治療が必要な疾患だったというケースがあります。そこで、口内炎の原因や治療法、放置してはいけない症状について、神戸大学医学部附属病院の明石昌也先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2025年4月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

「教えて!沿線のお医者さん!」のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ>

神戸大学医学部附属病院 歯科口腔外科
診療科長 明石 昌也先生
口内炎や口腔(こうくう)粘膜疾患の診断・治療に携わり、特に口腔潜在的悪性疾患(扁平苔癬(へんぺいたいせん)、白板症(はくばんしょう)など)を専門とする。
『口内炎の痛みは、体調を整えれば自然に治ることがほとんどです。ただし、1か月以上続く場合は別の病気の可能性があるため、専門医に相談してください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 口内炎はなぜ起こるの?

口内炎は、口腔内粘膜の表面(上皮)が傷ついて欠損したり、炎症を起こして赤くなったりする症状の総称です。炎症が深部に及ぶと1cm以上の潰瘍になり、強い痛みを伴うこともあります。口内炎にはアフタ性、カタル性、ウイルス性、真菌(カンジダ)性などがあります。最も多いのはアフタ性口内炎で、口腔内の様々な場所にできるのが特徴です。明確な原因は不明ですが、免疫力の低下やストレス、栄養不足、睡眠不足が関係している可能性があります。カタル性口内炎は、入れ歯や矯正器具の接触、熱湯や薬品の刺激のほか、頬の内側や舌を噛むことなど、物理的刺激が原因で発症します。ウイルス性口内炎は、単純ヘルペスウイルスなどのウイルス感染が原因です。この場合の口内炎(ヘルペス性口内炎)は、小さな水疱が多数できるのが特徴で、同じウイルスに感染して唇や周囲に水疱ができると「口唇ヘルペス」と呼ばれます。真菌(カンジダ)性口内炎は、抗生物質の長期使用や免疫力低下でカンジダ菌(カビ)が異常増殖し、口腔内に白い苔状の斑点ができるのが特徴です。ほかに、アレルギーや喫煙、ビタミンB12不足、鉄欠乏、全身の病気などが影響して発症することもあります。

Q 治療は必要?

口内炎は、特別な治療をしなくても1~2週間で自然に治ることがほとんどです。 しかし、真菌(カンジダ)性口内炎は放置すると長引くことがあるため、抗真菌薬による治療が必要です。また、ヘルペス性口内炎のように抗ウイルス薬による治療ができるものもありますが、アフタ性口内炎やカタル性口内炎は、飲み薬の有効性が確立されていないため、通常、医療機関で治療薬は処方されません。痛みがひどい場合は、主にステロイド薬(塗り薬や貼り薬)が使われます。 市販の薬局でも購入できますが、ステロイド薬は口内炎を治す薬ではなく、炎症を抑えて痛みを緩和するための対症療法です。傷の治りを遅らせることもあるため、痛みが治まったら使用を中止しましょう。もし、1か月以上同じ場所の傷が治らない場合は、口腔がんなど別の病気の可能性もあるため、専門医の診察を受けてください。

Q 口内炎が治らない場合って?

口内炎が1か月以上治らない場合、自己免疫疾患(ベーチェット病など)やビタミンB12欠乏症にかかっている、または真菌(カンジダ)性口内炎が長引いている可能性があります。自己免疫疾患は、免疫異常のために口腔内粘膜が炎症を起こしやすく、治ったと思っても口内炎が繰り返し発生することがあります。ビタミンB12欠乏症は、舌の表面に多数ある小さな突起(乳頭)が萎縮し、舌全体が赤くなってツルツルした「平滑舌」になることがあります。貧血を伴うことも多く、ビタミンB12を補給することで改善が期待できます。真菌(カンジダ)性口内炎も、適切な治療を行わず免疫力が低下していると治りにくいことがあります。また、口内炎に見えても、実は悪性化する病変の場合もあります。

Q がん化する可能性のある病変とは?

口腔内粘膜に異常が生じ、がん化のリスクを伴う病変のことを「口腔潜在的悪性疾患」といい、代表的な疾患に「扁平苔癬」があります。頬の粘膜にレース状(網目模様)の白斑ができるのが特徴で、炎症を伴うと赤くなって痛みが生じ、口内炎と見分けがつきにくい場合もあります。銀歯による金属アレルギーなどが関与すると考えられていますが、詳しい原因は不明です。慢性的な炎症と角化(粘膜が厚く硬くなる)を伴い、約1割ががん化する可能性があるとされています。扁平苔癬は完治が難しく、定期的な経過観察が必要です。もう一つの代表的な疾患に「白板症」があります。歯茎や舌に白い斑点(角化)が生じ、痛みがなく、放置するとがん化するリスクが高まります。口腔潜在的悪性疾患は、自覚症状が乏しいことが多いです。歯科検診を定期的に受けることをオススメします。

 

 

 

~ホッと!HANSHINとは~
グルメやカルチャー、エンターテインメント、観光スポットに関する情報など阪神沿線の様々な「魅力」をぎゅっと紹介する沿線情報紙。阪神電車の各駅や阪急電鉄や近鉄(奈良線)の主要駅などで無料配布しています(毎月25日発行)。
▶「ホッと!HANSHIN」最新号をWEBでもご覧いただけます。
「ホッと!HANSHIN」デジタル版

阪神電気鉄道(株)は、阪神間において安全で質の高い医療の提供に取り組む神戸大学・兵庫医科大学と連携し、沿線住民の健康増進への貢献を通じた沿線の活性化を推進しています。2016年からは、子どもから大人までが健康や医療について楽しく学べる「HANSHIN健康メッセ」を開催しています。
▶「HANSHIN健康メッセ」WEBサイトはこちら
https://www.kenko-messe.com/