【教えて!沿線のお医者さん!】意外と知られていない「てんかん」の基礎知識(神戸大学+阪神電車)
てんかんは、脳神経の病気のなかでも有病率が高く、約100人に1人が発症する「身近な病気(コモンディジーズ)」です。これまでは小児や青年期に発症する病気と考えられていましたが、近年では高齢者にも新たに発症するケースが増えています。神戸大学医学部附属病院の永瀬裕朗先生に詳しく伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2025年2月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/
<教えてくれた先生はコチラ>
神戸大学医学部附属病院 小児神経学・発達行動小児科学部門
特命教授 永瀬 裕朗先生
小児のてんかんや発達障害を中心に診療。小児が成人期に移行するまで、長期的な視点での治療やサポートを行う。
『てんかんは正しい診断と治療で、発作をコントロールしながら日常生活を送ることができる病気です。治療法は個々に異なるため、専門医に相談してください。』
●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/
Q「 てんかん」とはどんな病気?
てんかんは、脳の神経細胞が過剰に興奮したり、一斉に同じ活動(同期)をしたりすることで、脳波に一時的な異常が起こり、「てんかん発作」がくり返される病気です。異常が起こる部位により症状は異なり、脳全体が関与する「全般発作」では、全身がけいれんし、意識を失うことがあります。脳の一部だけが関与する「焦点発作」では、例えば、後頭部の視覚野で異常が起こると視え方がおかしくなり、左手を動かす部位に異常がある場合は左手がけいれんします。また、数秒間ぼーっとする、ピクっとするなど軽微な部分発作もあり、長い間病気に気付かれないこともあります。
Q 原因と治療法を教えて!
原因は様々で、元々の体質や遺伝など先天性のこともあれば、脳卒中やケガによる脳の損傷や、過剰な免疫反応による炎症が原因になることもあります。治療法は、脳に腫瘍などの明らかな病変がある場合は取り除く手術を検討しますが、そうでない場合、まずは抗発作薬(こうほっさやく)で発作を減らすことを試みます。しかし、薬の服用では、約3割の患者さんは発作を完全に抑えられないため、外科治療もふまえた治療方針を検討します。身体が飢餓状態になると発作が減ることがあり、糖質を制限して脂質を多く摂る「ケトン食療法」という食事療法が有効な場合もあります。
Q 身近な人に発作が起こったらどうする?
全身けいれんを起こして意識を失っても、命にかかわることは少なく、秒単位で急ぐ必要はありません。嘔吐(おうと)することが多いので、患者さんの顔を身体ごと横向きにし、吐いたものを飲み込ませないようにしてください。スマートフォンなどで発作の様子を動画撮影しておくと診断に役立ちます。発作が5分以上続く場合は救急車を呼んでください。ぼーっとする、ピクっとするなどの軽微な発作の場合も、くり返すようであれば早期の診断と治療が必要です。子どもさんは小児科、大人の方は脳神経内科や脳神経外科を受診してください。
Q 周りの人が心掛けることは?
てんかんは、医療面だけでなく社会的な理解も必要な病気です。てんかん発作に対する偏見や過剰な心配から日常生活を制限し過ぎないよう、医師や保育園、幼稚園、学校、職場などと連携を図ることが大切です。発作の起こり方は個人差が大きいため、一律に制限を設けるのではなく、状況や発作の頻度に応じた柔軟な対応が求められます。てんかんをもっていても、スポーツを楽しんだり、問題なく働けたりする人は多く、その人ができることを尊重する姿勢をできる限り心掛けてください。てんかん治療には「バイオ(生物学的)」「サイコ(心理的)」「ソーシャル(社会的)」の三つの視点が必要です。病気の症状だけでなく、患者さんの心理面や社会的な環境まで考慮し、より良い生活を送れるよう支援することが社会全体の役割です。
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