【教えて!沿線のお医者さん!】冬によく聞く“ヒートショック”はどう予防する?(兵庫医科大学+阪神電車)

寒い時期には、入浴中に気を失い浴槽で溺れる事故が多発します。厚生労働省の人口動態統計(令和4年)によれば、65歳以上における浴槽内での不慮の溺水による死亡者数は5,824人で、交通事故の2倍以上。その一因とされるヒートショックについて、兵庫医科大学の河合健志先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2025年1月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ>

兵庫医科大学 循環器・腎透析内科学
講師 河合 健志先生
虚血性心疾患の診療を専門とし、心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの冠動脈疾患に対するカテーテル治療に精通している。
『胸痛が20分以上続く場合や、冷や汗を伴う耐えられない痛みがある時は、緊急性が高いので、すぐに救急車を呼び受診してください。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q ヒートショックとは?

急激な温度変化によって引き起こされる健康被害のことです。人間の身体には体温を調節する機能が備わっています。暑い環境では、血管を拡張させて血流を増やし(これにより血圧が低下)、皮膚の近くを通る血管から身体の熱を放出して体温を下げています。一方、寒い環境では、体温を保つために血管を収縮させて血流を減らし(これにより血圧が上昇)、熱が体外に逃げるのを防ぎます。これらの体温調節の反応が急激に起こると、血流の変化に敏感な心臓や脳に大きな負担がかかり、様々な症状が生じることがあります。

Q どういう状況で起こるの?

ヒートショックが起こりやすいのは、冬場の浴槽やトイレです。たとえば、暖房の効いたリビングから、暖房のない脱衣所や浴室に移動すると、体温の低下を防ぐために血管が収縮して血圧が上がります。さらに、衣類を脱いだり、冷たい床に足裏が触れたりすることで、血圧の上昇が一層大きくなります。その状態で湯船に浸かると、今度は血管が拡張して血圧が急激に低下するため、脳や心臓への血流が不足し、ヒートショックの原因となるのです。また、お風呂で身体が十分に温まった後、寒い脱衣所に移動した際などにも、血圧が急上昇することがあります。このような場合にも心臓や脳に大きな負担がかかり、ヒートショックを起こすことがあります。

Q どんな症状が現れるの?

血圧が急低下すると脳や心臓への血流が不足し、一時的なめまい、立ちくらみ、息切れが起こるほか、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こし、意識喪失や麻痺、強い胸痛を生じることがあります。また、血圧が急上昇した場合にも、心臓や血管に過剰な負担がかかり、心筋梗塞や心不全を起こすことがあります。重篤(じゅうとく)な症状が現れた場合は素早い対応が必要ですので、すぐに医療機関を受診してください。

Q どんな人に起こりやすい?

ヒートショックは、血圧の急激な変化によって発生するため、血圧を調整する自律神経の機能が低下している高齢者や、血管の柔軟性が低下している基礎疾患(動脈硬化、高血圧、糖尿病など)のある人に特に多いとされています。なかでも高齢者は、体温感覚が低下して温度差に気付きにくい傾向があり、注意が必要です。また、飲酒後や食後は血管が拡張して血圧が低下しているため、ヒートショックのリスクが高まります。

Q ヒートショックを防ぐには?

急激な寒暖差を避けることが重要です。特に冬場の浴室や脱衣所では、以下の対策を心掛けましょう。

 

 

 

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