【教えて!沿線のお医者さん!】不意に起こるめまい、原因は何?(兵庫医科大学+阪神電車)

めまいは多くの人が経験する一般的な症状ですが、その原因や治療法は様々です。めまいの現れ方や頻度にも個人差があり、我慢したまま長引く症状に悩んでいる人がいるかもしれません。
そこで、代表的なめまいを伴う病気の原因や症状、治療法などについて、兵庫医科大学の大田重人先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2024年7月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
講師 大田 重人先生
めまい相談医であり、日本めまい平衡医学会の代議員も務める。難治性のめまいや難聴などの治療に多く取り組む。
『めまいがあると動くのが辛いですが、身体を動かしたほうが改善しやすいです。有酸素運動や睡眠時間の確保、ストレスや疲れの解消を心掛けてください。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q めまいを伴う病気とは?

めまいには、ぐるぐる回るように感じる回転性めまい、ふわふわする浮動性めまい、立ちくらみなど、様々なタイプがあります。原因も様々ですが、急に起こるめまいの約60%は耳に原因があります。主な病気には「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」「メニエール病」「前庭神経炎」があり、「突発性難聴」でもめまいが生じることがあります。耳以外の原因としては「貧血」「起立性調節障害(起立性低血圧)」「脳卒中」などがあり、全体の20%は原因不明のめまいです。最近では「持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)」という新しい病気も提唱されています。

●良性発作性頭位めまい症(BPPV
めまいの原因の20~30%を占める病気で、三半規管に耳石(じせき)(カルシウムの塊)が入り込み、回転性のめまいが生じます。めまいは数秒から数分で治まりますが、頭を動かすたびに繰り返し発症します。早ければ1日、長くても1か月以内に半数以上の人が自然回復します。更年期以降の女性に多く見られ、頭を高くして寝ることで予防できるといわれています。

●メニエール病
内耳(ないじ)のむくみによって発生し、じっとしていても激しい回転性めまいや耳鳴り、難聴が起こります。発作は数時間続き、むくみが取れると治まりますが、再びむくむとまた症状が現れ、繰り返されます。睡眠不足やストレスが原因で発症することもあります。

●前庭神経炎
三半規管や耳石器と脳をつなぐ前庭神経がウイルスなどに感染し、炎症を起こす病気です。突然の激しい回転性めまいが3~5日間続き、じっとしていても治まらず、救急車で運ばれるケースも少なくありません。回転性めまいが治まっても、ふらつきが残ることがあります。

●突発性難聴
突然、原因不明の難聴になり、約40%がめまいも同時に発症します。早期治療が重要で、2週間以内に副腎皮質ステロイド薬を投与すると4~6割が回復しますが、1か月以上治療を遅らせると回復の見込みが低下します。めまいの発作が繰り返すことはありません。

●起立性調節障害(起立性低血圧)
起き上がった時などに血圧が急激に低下し、脳への血流が減少して立ちくらみや浮動性めまいを生じます。同時に頭痛や腹痛を発症したり、乗り物に酔いやすくなったりすることがあります。子ども、若い女性、高齢者に多くみられます。

●脳卒中
脳の血管に障害が起こる病気です。めまいとともに、手足や顔面の痺(しび)れ、麻痺、言語障害などが現れる場合があります。命に関わることがあるため、早急に医療機関を受診する必要があります。

●持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)
急性のめまいが改善した後、回転性ではないめまいが3か月以上続く病気です。立ち上がったり歩いたりする時や、身体が動いた時、複雑な模様や動きのある映像を見た時などに悪化します。人混みやスーパーの陳列棚を見ると気分が悪くなる人が多いです。

Q どの病気かを見分ける目安は?

まずは、めまいに加えてほかにどのような症状があるかで鑑別します。痺れやろれつが回らないといった症状がある場合は、脳の病気が疑われるので、至急医療機関の受診が必要です。難聴や耳鳴りがある場合で、めまいが繰り返し起こるならメニエール病、そうでない場合は突発性難聴が疑われます。ただし、メニエール病の最初の発作時には突発性難聴との区別が難しいため、緊急性の高い突発性難聴をまず疑い、早急に治療を受けることが大切です。なお、メニエール病は、難聴や耳鳴りがなくても、繰り返しめまいが起こり、じっとしていても治まらない場合には疑われます。また、繰り返しめまいが起こるけれど、じっとしていると治まるなら良性発作性頭位めまい症、激しいめまいが継続して起こるなら前庭神経炎の可能性が高いです。立ち上がった時にめまいが起こる場合は、起立性調節障害の可能性があります。

Q 治療は必要?何科で診てもらうの?

早急に治療が必要なのは突発性難聴と脳卒中、症状がとても辛く、後遺症が残りやすい前庭神経炎です。それ以外のめまいなら緊急性はありませんが、治療をしたほうが早期に回復しやすくなります。良性発作性頭位めまい症は、頭を動かして耳石を元の位置に戻す浮遊耳石置換法や、自宅で頭を動かす寝返り体操が効果的です。メニエール病の治療には、原因となるストレスや睡眠不足などを解消する生活指導、利尿剤でむくみを取る治療が一般的です。前庭神経炎は、当院に救急で来院された場合、後遺症を防ぐために、まず副腎皮質ステロイド薬を投与し炎症を抑える治療を行います。ふらつきの後遺症が残ってしまった場合は、前庭神経以外で平衡感覚をつかさどる目や脳、足腰の深部知覚を鍛えることでふらつきを解消するリハビリを行います。特に高齢の方は、ふらつきがあると行動を制限してしまう傾向があるので、フレイル予防のためにもリハビリが大切です。いずれの治療も、めまい相談医がいる医療機関であれば、詳しい検査と適切な治療が受けられます。めまい相談医は「日本めまい平衡医学会」のホームページで検索できます。めまいでお困りの方は受診してみてください。

 

 

 

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