【教えて!沿線のお医者さん!】その肩の痛み、専門治療が必要かも!?(神戸大学+阪神電車)

日本人は肩こりに悩まされている人が多く、肩の痛みがあってもただの肩こりと見過ごしてしまいがちです。しかし、専門的な治療を必要とする病気が隠れている可能性もあります。神戸大学医学部附属病院の美舩 泰先生に、肩の痛みを引き起こす代表的な病気とその治療法について、詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2024年4月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 整形外科
助教 美舩 泰先生
肩腱板(けんばん)断裂の内視鏡手術を行う数少ない医師のひとり。肩関節疾患の原因となる老化物質「糖化最終生成物(AGEs)」の研究も行う。
『肩の痛みを自己判断で五十肩と決めつけず、痛みが続く時は専門の医療機関を受診するようにしてください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 肩が痛くなる代表的な病気は?

肩は、首の筋肉と連動して重い頭を支えているうえに、体重の約6%もあるといわれる腕もぶら下がっているため、筋肉を常に使っている状態です。疲労から筋肉が硬くなり、血流が悪くなることで、肩周りの重だるさや痛みを生じます。肩が痛くなる病気で最も多いのは「肩関節周囲炎」です。いわゆる四十肩や五十肩のことで、骨や筋肉、腱(けん)に損傷はみられないものの、痛みや炎症があり、肩の動きが制限されます。夜間や動かした時に痛みが強くなることが多いです。痛みを避けるために肩を動かさなくなると、筋肉の内側の膜(関節包(ほう))が分厚く硬くなり、「凍結肩(肩関節拘縮(こうしゅく))」に進行することがあります。凍結肩は、頭や腕の負担が肩にかからない仰向けの状態でも、腕を挙げることが困難になるのが特徴的です。また、老化物質「糖化最終生成物(AGEs)」※が蓄積することでも、組織が硬くなり、凍結肩の一因になります。糖尿病患者さんはAGEsが溜まりやすいため、凍結肩になりやすいと考えられます。実際、30代未満の方が、肩の治療をきっかけに糖尿病が発覚した例もあります。

※糖化最終生成物(AGEs):砂糖を煮詰めるとカラメルになるように、糖がタンパク質や脂質と結びついて生成される物質で、コラーゲンに蓄積する。

Q 肩関節周囲炎や凍結肩の治療法は?

肩関節周囲炎の治療は、リハビリテーションが効果的です。動かすと痛みがある場合は、ブロック注射で痛みを和らげてから行います。凍結肩で肩がほとんど動かない場合には、マニピュレーション(非観血的関節授動術)や、内視鏡を利用した手術を検討します。マニピュレーションでは、麻酔を施した後、医師が肩関節を強制的に動かして、硬くなった関節包を剥(は)がし、可動域を広げます。関節包が破れる際にバリバリと大きな音がしますが、治療直後から腕が挙がるようになります。ただし、この治療を行う医師は限られており、手術歴やケガなどの既往歴がある場合は、骨折などのリスクが高まるため、患者と医師の間で十分なコミュニケーションを取ることが大切です。内視鏡手術では、硬くなった関節包を電気メスで切り開くことで肩の動きを改善します。手術後は、関節包が修復される過程でしっかりとリハビリテーションを行うことが重要であるため、2週間程度入院することをオススメしています。

Q 肩関節周囲炎や凍結肩以外に肩の痛みを伴う病気はある?

肩関節周囲炎に次いで多い病気に「肩腱板断裂」や「石灰沈着性腱炎」があります。肩腱板断裂は、肩のインナーマッスルが骨から剥がれてしまうことで、特に斜め上に腕を挙げる動作で痛みを生じるのが特徴的です。断裂はレントゲンに写らないため、MRIやエコーでの診断が必要です。一度断裂すると自然回復が難しく、トレーニングを受けた専門医による内視鏡手術が必要になる場合が多いです。石灰沈着性腱炎は、血液中のカルシウムが腱部分に沈着し(石灰化)、激しい痛みを引き起こします。鎮痛薬が効かないことも多いですが、注射で患部に麻酔薬を打ちながら、石灰を吸い出す治療を行えば、すぐに症状が改善します。石灰が固まっていて吸い出すことが難しい場合は、内視鏡手術で石灰を掻(か)き出します。また、痛みよりも痺れのほうが強い場合は、「変形性頚椎症(年齢とともに首の骨が変形する病気)」などの首が原因であるケースや、肺や心臓などの内科的な疾患が原因であることも考えられます。

Q 病院に行ったほうがいい症状は?

激しい痛みや、生活に支障があるほど動きの制限がある場合は、病院で診察を受けてください。また、整体や整骨院で五十肩の治療を続けても改善が見られない場合も、ほかの病気の可能性を考えて専門医の診察を受けることをオススメします。

Q 肩の痛みを緩和する方法や予防法は?

肩だけでなく、肩関節と連動している肩甲骨も意識して動かすことが大切です。背中が丸くなると、肩甲骨が肋骨(ろっこつ)に張り付くように押さえつけられ動きが制限されます。特にデスクワーク時は姿勢が悪くなりがちなので、胸を張って良い姿勢を保ち、定期的に肩甲骨を動かすストレッチや体操を取り入れましょう。

 

 

 

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