【教えて!沿線のお医者さん!】ペインクリニックってどんな治療をするところ?(神戸大学+阪神電車)

日本人の大半は、何らかの慢性の痛みを抱えて生活しているといわれています。痛みは、ときに日常生活に大きな支障を来し、耐え難い状態にもなります。そんな痛みを治療するのがペインクリニックです。具体的にどんな治療を行うのでしょうか。神戸大学医学部附属病院の上野喬平先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2024年2月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 麻酔科
助教 上野 喬平先生
MRIで脳の活動を調べながら治療する「fMRI」や「脊髄(せきずい)刺激電極療法」など、痛みを緩和するための最新の治療や研究に取り組んでいる。
『今抱えている痛みは、本当に治らない痛みなのでしょうか?痛みを諦める前に、ぜひ専門の医療機関で診察を受けてみてください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q ペインクリニックとは?

ペインクリニックは、痛みに特化した医療機関です。特に日常生活に支障を来す神経痛や、ズキズキとした慢性の痛み(疼痛(とうつう))を抱える患者さんが多く来院します。神経痛は、机の角に肘をぶつけたときに生じるようなしびれが継続的にあり、日によって、または1日の中でも痛みの強度が変わります。このような“耐え難い痛み”と形容されるほどの重篤な痛みを緩和する治療を主に行います。具体的には、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」や「帯状疱疹後神経痛」、「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」、「三叉(さんさ)神経痛」などです。ほかにも、手術後に痛みが続く「脊椎(せきつい)手術後疼痛症候群」や「開胸術後疼痛症候群」、外傷後の患部周辺に痛みやしびれが表れる「複合性局所疼痛症候群」(CRPS)、肩こりや腰痛の原因になる「筋・筋膜性疼痛症候群」、首や手足がしびれる「頚椎(けいつい)症性神経根症」など、非常に多岐にわたります。ペインクリニックでの診察や治療は主に麻酔科医が担当します。麻酔科医は、エコーガイド下や透視画像を用いた注射・カテーテル治療を行う技術、手術中の痛みのコントロール、緊急時の対応に長けており、これらを治療に活かすことができます。また、整形外科医が治療を担当するクリニックもあります。

Q どんな治療をするの?

主な治療法は、痛みの伝達を遮断する神経ブロックと内服です。これらで痛みを完全にカバーできない場合は、脊髄の硬膜外腔に電気を流して痛みを緩和する「脊髄刺激電極療法」を行うこともあります。また、明らかな痛みの起点がなく、脳の誤作動が原因と考えられる場合(痛覚変性疼痛)には、臨床心理士とともに認知行動療法を用いた治療も行います。

Q 脊髄刺激電極療法について教えて!

硬膜外腔に特殊なリード(電極)を挿入し、脊髄に微弱な電気を流して痛みを和らげる治療法です。外傷が完治しても痛みが続く「複合性局所疼痛症候群」(CRPS)などに有効とされています。治療には太い針を用いたり、最終的に機器をお尻に埋め込んだりするため、患者さんにある程度の負担がかかります。そのため3週間のトライアルを設けており、効果を確認してから正式な治療に進むことができます。

Q ペインクリニックで治療するメリットは?

ペインクリニックでは、痛みを緩和するだけの対症療法ではなく、痛みの根本的な原因を診断してから治療することを重視しています。まず、治る痛みなのかどうかをしっかり分析して、患者さんに伝えます。治る痛みであれば、痛みの原因やメカニズムを理解し、それに対応した治療を進めることで、根本的な改善を目指します。もし、かかりつけのクリニックで大きな改善がみられない場合は、より高度な検査や治療が可能な専門機関への紹介を受けることが可能です。例えば当院の場合は、薬剤の幅を広げたブロック注射や内服治療、ドラッグチャレンジテスト(点滴を投与して痛みを素早く除去しながら、痛みの強さや薬の量を見極め、副作用の確認を行う)などを行います。

Q 痛みは治るの?

ペインクリニックの治療で、神経の炎症を取り除き、血流と神経の活動性を高めることで、痛みを改善できることは多いです。特に、初期の脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの患者さんは、運動療法を組み合わせることで、痛みを改善することができます。しかし、神経痛が繰り返し起こると、感作(かんさ)という反応が生じ、触れただけでも痛みを感じる感覚異常(アロディニア)を発生するなど、難治性の痛みに変わることもあります。慢性痛に悩んでいる方は我慢せず、早期に治療を始めることが大切です。「痛みがいつか治るかもしれない」「痛みが一生続くのではないか」などの思考も、痛みをさらに強くするといわれています。まずは治る痛みなのか、ペインクリニックで診断を受けてみてください。

 

 

 

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