【教えて!沿線のお医者さん!】風邪なのに重症化するリスクも!RS(アールエス)ウイルス感染症とは?(兵庫医科大学+阪神電車)
風邪ウイルスの一種であるRSウイルスが引き起こす「RSウイルス感染症」は、風邪の症状から悪化する可能性がある呼吸器疾患です。どのようにして広がり、どのような人が重症化しやすいのでしょうか。そこで、治療法や予防策について、兵庫医科大学の木島貴志先生に伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2024年1月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/
<教えてくれた先生はコチラ!>
兵庫医科大学 呼吸器・血液内科学
主任教授 木島 貴志先生
肺がん、中皮腫、喘息(ぜんそく)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸器感染症などの治療に取り組む。
『乳幼児や高齢者、喫煙者、呼吸器や循環器の基礎疾患がある人、ステロイド薬を飲んでいる人、糖尿病の人は、RSウイルス感染症が悪化することがあるため、特に注意してください。』
●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp
Q RSウイルス感染症とは?
RSウイルス感染症は、RSウイルスが主に上気道(鼻や喉)に感染して起こる呼吸器の感染症で、いわゆる風邪(風邪症候群)の一種です。風邪の大半はウイルスが原因で発症し、風邪を引き起こすウイルスは200種以上も存在するといわれています。RSウイルスのほかには、ライノウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどが代表的です。RSウイルスは世界中に広がっており、主な感染経路は、感染した人からの飛沫や接触による感染で、空気感染はしないとされています。飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみ、会話中に口から飛び散るしぶきを吸い込むことで起こります。接触感染は、感染者と直接接触したり、感染者が触れたものを触ることで起こります。特に乳幼児は、物を舐める行為でリスクが高まります。RSウイルスに感染しても、水疱瘡(みずぼうそう)やはしかのように体内に強く永続的な免疫ができないため、多くの人が生涯にわたって複数回感染する可能性があります。特に2歳までの子どもは、ほぼ全員が少なくとも1度は感染するとされています。日本では、通常11~12月に感染のピークがみられますが、2021年以降、春から初夏にかけて感染の増加がみられ、夏にピークを迎えています。
Q RSウイルス感染症の症状は?
軽度の発熱、せき、喉の痛み、鼻汁などの症状が3日から1週間程度続き、多くは軽症で終わります。しかし、乳幼児、高齢者、呼吸器や循環器の基礎疾患がある人、喫煙者、糖尿病の人、ステロイド薬で治療中の患者さんなど、免疫力が低下している場合は、重症化して肺炎や気管支炎などを引き起こし、ウイルスが体内から排除されても、呼吸機能が回復しにくいことがあります。
Q 診断方法は?
RSウイルス感染症かを見極める特定の検査(抗原検査やPCR検査)は、現在の日本では成人が保険適用外となっています。そのため、混合診療(公的な保険の適用を受ける保険診療と、適用を受けない自由診療を併用した診療)を行っていない医療機関では、これらの検査を通常行うことはありません。代わりに、医師は患者の症状や、その時期に流行している感染症の情報を基に診断を行います。また、必要に応じて保険適用のある検査(例えばインフルエンザの検査)を実施し、別の疾患の可能性を除外することで、RSウイルス感染症の可能性をある程度予測し、適切な治療を提供することが可能です。
Q 治療方法は?
RSウイルス感染症には特効薬がないため、症状を和らげるための対症療法(解熱剤、鎮痛剤、酸素投与、必要に応じて点滴など)が一般的です。軽症の場合は、通院せずに市販薬の服用や自宅療養で、自然に回復することが多いです。ただし、軽症であっても、水分補給や十分な栄養摂取を行い、完全に回復するまで注意深く経過観察し、他人との接触を控えて、感染拡大を防ぐことが重要です。重症化リスクの高い乳幼児、高齢者、基礎疾患がある人は、症状が悪化する兆候(例えば、ぐったりする、食欲不振など)が見られた場合、すぐに医療機関を受診するようにしてください。
Q 予防方法は?
一般的な風邪の予防と同じように、手洗いやうがいを徹底することが大切です。特に外出先から帰宅した際には、ウイルスが付着した外着から部屋着に着替えるようにしましょう。また、自分自身が感染しないように予防するだけでなく、重症化のリスクが高い人への感染拡大を防ぐためにも、風邪の症状がある際には人混みを避け、マスクを着用するなどの配慮が大切です。ワクチンについては、60歳以上の高齢者向けが承認されており、積極的な接種が推奨されます。(2023年9月時点)
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