【教えて!沿線のお医者さん!】スマホの使いすぎでも発症!?腱鞘炎(けんしょうえん)ってどんな病気?(兵庫医科大学+阪神電車)
腱鞘炎は、楽器演奏者やスポーツマンに発症しやすい病気という印象があります。しかし、パソコンやスマートフォンの普及に伴い、日常生活の中でも手を酷使するシーンが増え、腱鞘炎を発症する人が増えています。腱鞘炎について、その原因や対処法などを兵庫医科大学の樋口史典先生に詳しく伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年11月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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<教えてくれた先生はコチラ!>
兵庫医科大学 整形外科学
助教 樋口 史典先生
手の神経を圧迫する「手根管症候群」や関節症、複雑な骨折、脱臼など幅広い治療に取り組む。基礎疾患のある患者の腱鞘炎治療や手術にも対応する。
『腱鞘炎が悪化して、指が曲がりにくくなってしまうと、手術をしても改善しないことがあります。我慢せず早めに医療機関で受診してください。』
●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp
Q 腱鞘炎とは?
腱鞘炎は、機械的な刺激の繰り返しで引き起こされる炎症のことで、一般的に「使い痛み」といわれます。「腱鞘」とは、骨と筋肉を結ぶ「腱」を覆う筒状の組織のことで、手のひら側の指先から付け根まで各指に複数あります。前腕の筋肉が収縮すると、腱が引っ張られ、腱と接続している骨が動くことで指が曲がります。この際に、腱鞘は腱が骨から浮き上がらないように押さえる役割を果たしています。しかし、何度も同じ動作を繰り返すと、腱や腱鞘にむくみが生じ、炎症を起こすことがあります。特に指の根元にある腱鞘は大きな負担を受けるため、腫れて痛みを生じやすくなり、炎症が続き、腱鞘のむくみが続くと指を動かす時に、ばねが付いたように引っかかりを感じ、力を加えるとガクンと弾けたように動くことがあります。この状態を「ばね指」と呼びます。ときには指の第二関節が腫れて痛む場合もあります。一方、親指側の手首が腫れて痛む状態を「ドケルバン病」と呼びます。ドケルバン病は、親指を曲げたり広げたりする時に使う腱を通す「伸筋支帯(しんきんしたい)」というトンネル状の組織が炎症を起こすもので、親指の使い過ぎが原因です。親指を握って小指側に曲げると痛みを感じることが特徴です。
Q どんな人が腱鞘炎になりやすい?
日常生活や仕事で指や手を酷使する人が腱鞘炎になりやすいです。具体的には、パソコンやスマートフォンの作業、ピアノやギターなどの楽器の演奏、テニスやゴルフのようなスポーツを頻繁にする人、赤ちゃんを抱っこする時間が長い方などです。また、更年期の女性は、親指や手首を酷使していなくても腱鞘炎になる場合があります。これは、炎症を抑える働きのある女性ホルモンが、閉経前後に急激に減少することが関係していると考えられます。そのほか、糖尿病や甲状腺の疾患がある人は、むくみが生じやすいため、腱鞘炎になるリスクが高まります。
Q 自分でできる対処法はある?
軽症であれば安静にすることで症状が治まってきます。痛みを感じる部位を冷やしたり、ストレッチを行うことも効果的です。市販の指や手首を固定するサポーターは、症状の改善につながることがありますが、24時間装着すると指が曲がりにくくなる恐れがあります。装着は夜間だけにするなど、長時間の使用は避けるようにしてください。また、40~50代の女性で、手を酷使していないにもかかわらず腱鞘炎の症状がある場合は、女性ホルモンの減少が関係していることが考えられます。この場合「エクオール」という、女性ホルモンに似た作用を持つ成分のサプリメントが症状の改善に役立つことがあります。ただし、これらの対処法はあくまで軽症の場合です。就寝時や起床時にも痛みを感じたり、日常生活に支障がでる場合は、症状が悪化している可能性があります。放置していると、痛みが増して、手が動かなくなることがあり、完治するまでに長い期間を要するようになります。早めに医療機関で診察を受けるようにしてください。
Q 医療機関ではどんな治療をするの?
軽症の場合、まずは湿布剤で炎症を抑えます。湿布剤にはシートタイプのほかに、患部に薬剤を浸透させる塗り薬タイプのものもあります。痛みが強い場合には、痛み止めの飲み薬を処方したり、炎症を抑えるステロイド注射を行います。これらの治療で症状が改善しない場合や再発をくり返す場合は、むくみを起こしている腱鞘を1cmほど切開する手術を検討することもあります。
Q 腱鞘炎を防ぐには?
腱鞘炎は手や指を酷使することで発症しますので、同じ動作を長時間続けることは避けるように心がけてください。特に近年は、スマートフォンの過度な使用により、腱鞘炎を発症するケースが増加しています。スマートフォンの長時間に及ぶ使用は避けるようにしましょう。また、仕事や育児で手を頻繁に使わなければならない人は、定期的に休憩を取るなどして、手を休める時間をつくることが大切です。もし症状が現れた場合は、早めに対処し、悪化しないうちに医療機関を受診することをオススメします。
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