【教えて!沿線のお医者さん!】糖尿病の最新治療薬について教えて!(神戸大学+阪神電車)

厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、5~10人に1人が「糖尿病が強く疑われる者」とされています。しかし早期に治療を開始すれば、重大な合併症を防ぐことができます。神戸大学医学部附属病院の坂東弘教先生に、糖尿病と治療法の最新情報について伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年10月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科
特定助教 坂東 弘教先生
成長ホルモンや甲状腺ホルモンなど、生活習慣以外が原因の糖尿病治療にも詳しい。
『糖尿病の最新治療薬は優れたものがたくさんありますが、必要以上に効果が出て低血糖を招くリスクもあります。専門医の適切な指導の下で服用してください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 糖尿病とは?

糖尿病は、血液中のブドウ糖が過剰(高血糖)になる病気です。本来ならブドウ糖は、膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモン「インスリン」の作用により、エネルギー源として血液中から肝臓や筋肉に取り込まれるべきものです。しかし、インスリンが十分に分泌されない、あるいはインスリンの効きが悪いと、ブドウ糖が取り込まれずに高血糖の状態が続き、長期化すると様々な合併症を引き起こすことが知られています。糖尿病の名前は、もともと尿中に糖が混ざっていたことから来ています。しかし現代は、尿中の糖の有無だけではなく、血液検査の結果をもとに糖尿病と診断します。

Q 糖尿病の症状と合併症とは?

糖尿病の初期段階では自覚症状はほとんどありません。進行すると喉が渇く、疲れやすい、多尿、体重減少などの症状が現れることがあります。さらに高血糖が続くと、血管内にブドウ糖があふれた状態になり、血管を傷つけるようになります。細い血管がダメージを受けると、失明の原因となる網膜症、腎臓の機能低下を招く腎症、足の切断にもつながる神経障害など、重大な病気を合併する恐れがあります。大きな血管が傷つくと、動脈硬化が進行し、脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞を起こすリスクが上昇します。また、糖尿病患者は、がんや認知症になるリスクも高まるといわれています。

Q 糖尿病の原因は?

運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が影響し、インスリンの働きを低下させてしまうことが最も一般的な原因です。インスリンは余ったブドウ糖を脂肪として蓄える役割もあるため、肥満の人は分泌量が多い傾向があります。しかし、過度な分泌が続くと膵臓が疲弊し、やがて十分に分泌できなくなってしまうのです。また、内臓脂肪の増加もインスリンの効果を低下させます。日本人は欧米人に比べ、インスリンの分泌量が少ないとされています。そのため、日本人はわずかな肥満でも糖尿病のリスクが高まると考えられます。そのほか、遺伝、免疫の異常、血糖値上昇やインスリンの働きを抑制する特定のホルモンの分泌異常、ステロイド薬の影響、妊娠などが原因になることもあります。

Q 最新の治療法とは?

内服薬では、インスリンの分泌を促進するGLP-1受動体作動薬や、尿と一緒に糖を排出させるSGLT2阻害薬などの進歩が見られています。どちらも以前からある治療薬ですが、GLP-1受動体作動薬は、服用回数が週1回程度で済むように進化しています。また、SGLT2阻害薬は、腎臓や心臓の機能を改善する効果もあることが最近明らかになってきました。ほかに、小型のポンプを装着してインスリンを注入する療法も進歩してきています。このように治療は進歩していますが、新しい薬を選択するだけではなく、患者さん別に適切な薬剤を選択することが最も大切です。また、免疫異常やほかの疾患を原因とする糖尿病については適切な診断が必要なことがあります。そのため、原因を突き止める専門医の診察を受けることが重要です。

 

 

 

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