【健康・未病と毛細血管】第4回「糖化を抑えるためには」
糖化を抑制する食事習慣
前回は、糖化は「老化」の主な原因となることをお話ししました。<第3回「体の中のコゲと老化と毛細血管」>
糖化は糖質が原因ですが、人間に糖質は必須です。今回は、AGEsを増やさない食事習慣での工夫3つのポイントを紹介します。
筆者:伊賀瀬 道也 氏
愛媛大学医学部卒、同大学院医学系研究科修了(医学博士)、同附属病院、公立学校共済組合近畿中央病院勤務の後、愛媛大学医学部老年科助手、米国Wake Forest大学・高血圧血管病センター・リサーチフェロー、愛媛大学医学部加齢制御内科講師、同附属病院抗加齢予防医療センター長、同老年神経総合診療内科准教授、同特任教授を経て、同大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授(現職)Wake Forestリサーチデイゴールドアワード(第1位)、ノバルティスアワードなど受賞。原著英語論文287報など。
工夫1.食べ方に気をつける…セカンドミール現象で血糖値抑制
食物繊維豊富な朝食を取ると、食後の血糖値上昇が穏やかになり、さらに昼食後の血糖値まで上がりにくくなります。これは、1日の最初の食事の工夫が昼食後にも影響する現象で、セカンドミール効果と言います。血糖値の急上昇を抑えると、糖化に使われる糖質の量が減少します。糖尿病患者・予備軍では、血糖値スパイクという、食後血糖値の急上昇と急降下が起きやすく、糖化しやすい状況になるので、特に朝食の工夫をお勧めします。
図:血糖値スパイクの事例
ところで、「プチ断食」や「1日1,2食」がダイエットとして推奨されていますが、好ましくありません。絶食は糖質を消費する筋肉を落とすため、太りやすくなります。また、筋肉は糖質を備蓄する機能があるため、血糖値スパイクも緩和します。血管年齢が元気な若いうちは良いですが、60歳を過ぎてからのプチ断食は血管の健康上からもお勧めできません。腹八分目で、1日3食が最も健康的です。
工夫2.調理法を工夫する…肉は焼かない、揚げない
食事に含まれるAGEsの量は同じ食材でも調理法で変化します。より高温で調理されるほどAGEs量は高くなり、生の状態が最もAGEs量が低くなります。例えば、牛肉ならフライパンで焼くステーキより、茹でるしゃぶしゃぶの方がAGEs量を抑えられます。
図:食品別・調理法別AGE含有量
食事からのAGEs量は約7%程度が体内に取り込まれると言われています。上図のように調理法の違いで、AGEs量が10〜100倍も高くなるため、調理の工夫でAGEs量を削減できます。
ほとんどの食品に言えますが、AGEs量は、「生」→「蒸す」→「ゆでる/煮る」→「炒める/焼く」→「揚げる」の順番になります。
工夫3.食品をかしこく選ぶ…糖化・AGEsが少ない食品
糖化に良くないのが、ジュースやお菓子に含まれる「果糖液糖」、「果糖ブドウ糖液糖」などの甘味料です。果糖は、ブドウ糖の10倍のAGEsを生成すること、コラーゲン組織の糖化ではブドウ糖よりも老化を加速することが言われています。
ソーセージやベーコンの加工肉も、多くのAGE量を含みます。加工時の加熱がその理由ですが、特に、長時間高温で燻すベーコンはAGEが大変多く含まれていますね。
朝食の食物繊維が良いと紹介しましたが、グラノーラを朝食にする方も多いのではないでしょうか。グラノーラは、穀物に砂糖を混ぜて作るため糖質が多く、高温で焼いて作るのでAGEsを案外多く含みます。他にも、クッキー、デニッシュなどが同様の作り方で、AGE量を多く含みます。
グラノーラの代わりに、オートミールやミューズリーは、熱加工をしていないためAGEを気にしなくて良いこと、ドライフルーツやナッツなどを適量入れることで食べやすくなり、上手に食物繊維と栄養素を摂ることができます。
図:朝食の食べ方でAGEsの生成が変わります
老化を防ぐ生活習慣
今回は、食事習慣の工夫を中心に紹介しました。もちろん、糖化抑制には睡眠と運動も重要です。十分な睡眠と休息で疲労を溜めず、糖化に関与する酸化物質を抑制してください。喫煙は全くダメ、体内のコラーゲン生成にも多大なる悪影響を与えます。運動は、まずは手軽なウォーキングから始めてみましょう。継続できることが重要です。日々の運動で、体内の糖質を効果的に消費でき、さらに細胞に糖質が取り込みやすくなります。また、ストレスの解消に効果的ですし、全身血流を増加し効果的な血管改善を促進します。
老化への対処は、なるだけ早くから始めるのが最善です。早速、食物繊維の多い朝食をトライするのはいかがでしょうか。取り組みの継続は必要ですが、蓄積した糖化も改善します。また定期的に毛細血管を観察することで、そうした生活習慣取り組みの効果と改善の状況が可視化できます。
図:糖化・酸化にみられる血管と正常な血管
終わりに…
生きていれば必ず歳をとります。その中において、個々人が自分の年齢にあった健康増進の自覚をもち、状態に応じより具体的なアンチエイジングを試み、個々人のその時の最善の心身状態を目指していただければと思います。
この連載では、毛細血管スコープ、計測技術のあっと株式会社のコラムページと連携しています。毛細血管計測や、この記事について詳しい内容があっと社のコラムページで提供されています。
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