【教えて!沿線のお医者さん!】乳がんの早期発見につながるブレスト・アウェアネスとは?(神戸大学+阪神電車)

乳がんは女性のがんの中で最も発症数が多い疾患です。その早期発見に役立つ「ブレスト・アウェアネス」が、世界でも注目を集めています。乳房を常に意識し、自分自身の身体と向き合うことの重要性について、乳がん診療の専門家である神戸大学医学部附属病院の三木万由子先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年8月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科
三木 万由子先生
乳がんの診察・治療に数多く携わる。病院の広報誌でブレスト・アウェアネスについて執筆するなど普及にも務める。
『郵便局などに乳がん触診用の模型が置いてあることがあります。乳がんがどんな感じか分かるので、見つけたら触れてみてください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q ブレスト・アウェアネスとは?

乳がんの早期発見につながる「乳房を意識する生活習慣」のことです。1990年代に英国で提唱され、世界保健機関(WHO)も乳がん対策の一環として、ブレスト・アウェアネスの普及を推進しています。以前は、乳がんの早期発見には自己触診が大切だといわれていましたが、方法が分からない人が多く、ハードルが高いと感じられていました。実際に、乳がんを触診で見つけるには、医師でも経験と知識が必要になる難しい技術です。ブレスト・アウェアネスは、触診して「自分で病気を見つける」のではなく、「乳房の状態に常に気を配る」という意識を持ち、変化に気づいたら医師に相談することを重視しています。具体的には以下の4つのポイントがあります。

Q 自分の乳房の状態を知り変化に気づくオススメの方法は?

ブラジャーを着ける時に胸を触ったり、お風呂に入る時に鏡で胸を見たりといった、日常生活のなかで少しだけ乳房のことを気にする習慣を持っていただくとよいと思います。一番のオススメは、お風呂に入る時に、手で胸を洗ってみることです。全体を触るので、変化に気づきやすいでしょう。恐らく、普段から自分自身の乳房をじっくりと見たり触ったりする人は少ないと思います。乳がんが増えてくる40代以降になると、特にそのような傾向にあるようですので、まずは、普段の状態を知ることが大切。乳房を意識する生活習慣を始めると、胸に左右差があったり、乳腺がコリコリしていたりなど、今まで気づかなかったことがたくさんあるはずです。このように「乳房を意識する生活習慣」を実践していただくことで、乳がんの早期発見、早期治療につながります。

Q 医師に相談したほうがいい変化とは?

どんなことでも、気になることがあれば相談してください。特に「乳房のしこり」「乳房の皮膚のくぼみやひきつれ」「乳頭からの分泌物」「乳頭や乳輪のびらん(ただれ)」に気づいたら、速やかに乳腺外科や乳腺クリニックを受診してください。近くに乳腺クリニックがない場合は、乳腺診療をしているレディースクリニックなどもありますので、問合せてみてください。

Q 乳がん検診も受けたほうがいいの?

普段意識している乳房の状態が問題ないかを確認するためにも、定期的な検診は必要です。40歳以上の人は、最低2年に1度のマンモグラフィ検査が推奨されています。乳がんは、乳腺にできる病気です。乳腺は乳頭から放射状に広がり、ワキのあたりまで延びています。マンモグラフィとは、乳房のX線撮影のことで、乳房を圧迫して薄く伸ばして撮影する検査です。触診では気づかない小さなしこりや石灰化を映し出すことができるため、乳がんの早期発見に有効です。ただし、がんも乳腺もマンモグラフィでは白く映るため、乳腺量が多い人はしこりがあっても乳腺に隠れてしまい、見つからないことがあります。症状がない人は検診で構いませんが、気になる症状がある場合は、検診ではなく必ず診察を受けるようにしてください。

 

Q 乳がんが見つかったら?

治療には、手術、薬物療法、放射線療法があります。薬物療法だけでもホルモン剤、抗がん剤、分子標的薬など様々な選択肢があるため、個別に治療法を決定します。乳がんにかかる人は年々増加しており、日本人女性の9人に1人が生涯で乳がんにかかるといわれています。ですが、早期発見して治療を行えば、完治できる可能性が高い病気です。「自分は大丈夫だ」と過信せず、ブレスト・アウェアネスをぜひ心がけてください。

 

 

 

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