【教えて!沿線のお医者さん!】意外に多くの人が悩んでいる!多汗症は治療できるの?(兵庫医科大学+阪神電車)
平成21(2009)年度の特発性局所多汗症研究班がまとめた全国疫学調査で、手のひらに原因不明の汗をかく多汗症患者が、約20人に1人いることが判明しました。しかし、医療機関にかかる人の割合は、そのうちの1割以下といわれています。多汗症は治療できるのか、兵庫医科大学の和田吉弘先生に詳しく伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年7月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/
<教えてくれた先生はコチラ!>
兵庫医科大学 皮膚科学
助教 和田 吉弘先生
皮膚がんなどの皮膚病治療に取り組む。ほかの診療科と連携し、多汗症から基礎疾患を発見することも。
『汗をかくことは健康にとって良いことですが、多量の汗で困っている方は、体質だとあきらめずに治療を検討してみてください。』
●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp
Q 多汗症とは?
汗の量が異常に多い状態を指し、全身に汗をかく「全身性多汗症」と、手のひら、ワキの下、頭部・顔面、足の裏といった特定の領域に限定される「局所多汗症」に分類されます。さらに、何らかの疾患によるなど原因が明らかな場合を「続発性多汗症」、原因不明の場合を「原発性多汗症」と呼んでいます。続発性多汗症の原因では、バセドウ病、パーキンソン病、更年期障害、自律神経失調症、悪性リンパ腫、薬の副作用などがあり、多汗症の治療をきっかけに、これらの病気が見つかることもあります。原発性多汗症には下記のような診断基準があります。
Q どんな人が多汗症にかかりやすい?
多汗症は誰でも発症する可能性があり、男女差もありません。ただ、原発性の局所多汗症は、発汗部位によって症状が現れる平均年齢が異なることが分かっています。手のひら・足の裏は低年齢から、ワキの下は思春期頃から、頭部・顔面は成人してからといわれています。これらは、あくまで平均年齢なので、幼少期や大人になってから発症する人もいます。また、家族に重症な多汗症の人がいる場合、自身も多汗症にかかりやすい傾向があるようです。
Q 多汗症の治療は必要?
多汗症は、絶対に治さなければならない病気ではありません。日本人の7人に1人が汗により生活に支障をきたしているといわれていますが、実際に病院受診をしていない方がたくさんいるのが現状です。
しかし、最近保険適用の治療法が増えてきたことや、多汗症治療の啓発活動が行われるようになったこともあり、ただの「汗かき体質」として見過ごしてきた方たちが、診察・治療を受ける例も増えてきました。
Q 多汗症の治療法は?
全身性多汗症に対しては内服抗コリン薬※が用いられますが、局所多汗症では発汗部位によって治療法や保険適用が異なります。最近、手のひら・ワキの下の治療には保険適用の外用抗コリン薬※が用いられるようになりました。それ以外の部位では、保険適用外の「局所制汗剤(塩化アルミニウム製剤)」が治療の第一選択になります。これはアルミニウムが汗腺の出口部分をふさぎ、発汗を抑える薬で、副作用の心配がほとんどありません。独自で製剤を調合されている医院もあり、市販品もあります。局所制汗剤で効果がない場合、手のひらや足の裏には「水道水インフォレーシス」という、弱い電流を流した水道水に患部を浸して発汗を抑える治療法が選択されます。さらに重症な場合の治療には、A型ボツリヌス菌毒素製剤の局注療法(保険適用は腋窩(えきか)のみ)や交感神経遮断術などの治療があります。しかし、すべての医療機関が治療薬剤や治療機器を備えているわけではありません。そのため、多汗症の治療を行いたい場合は、事前に専門の治療が行えるかを調べておくとよいでしょう。
※抗コリン薬:汗を作る物質をブロックする薬ですが、閉塞隅角緑内障や前立腺肥大症など、疾患によっては使用できません。腋窩には外用剤として塗り薬とシート形式があり、手のひらには塗り薬があります。目や口に入ると副作用が起きる可能性があるため、使用方法には注意が必要です。
Q 汗をかかない方法はある?
汗は、暑い時や運動時のほか、恐怖や緊張などの過度なストレスを受けた時、辛いものを食べた時、水分を摂り過ぎた時などにもかきやすくなります。これらを避けることで、汗の量を減らすことはできます。しかし、汗は身体にとって必要なもので、体温が上がりすぎた時に、皮膚の表面に汗をかいて蒸発させ、体温を下げて調整する働きがあります。もし、体温が下がらなければ、例えば脳などの大事な臓器の細胞が、高熱で障害を受けてしまい、生命維持に問題が生じる場合があります。夏場には、熱中症のリスクも高まります。また、汗は皮膚表面のウイルスや細菌から身体を守る自然免疫の機能もあり、保湿剤の役目も担っています。汗をかくことは、健康にとって大切なことです。もし、その汗で困っているなら自身の判断だけで解決せず、医療機関を受診するようにしてください。
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