【教えて!沿線のお医者さん!】中高年になると誰でも発症!?ひざ・腰の痛みとその対策法(神戸大学+阪神電車)

中高年になると、ひざや腰の痛みを訴える人が増えてきますが、その多くは「変形性ひざ関節症」と「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」が要因であるとされています。どちらも加齢が主な原因ですが、適切な治療と予防で、高齢になっても痛みを感じずに済むことが可能だといわれています。これらの病気の原因、症状、治療や予防法について、神戸大学医学部附属病院の松下雄彦先生と角谷賢一朗先生にお聞きしました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年6月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 整形外科
准教授 松下 雄彦先生
ひざの治療に詳しく、サッカーJリーグクラブなどのチームドクター、(公財)日本サッカー協会(JFA)の医学委員も務める。
『ひざの痛みは原因が様々ですが、半月板を損傷すると、急に悪化する場合があります。早めに専門医に相談してください。』

神戸大学医学部附属病院 整形外科
准教授 角谷 賢一朗先生
脊椎(せきつい)や脊髄(せきずい)の病気に詳しい。パ・リーグの関西球団のチームドクターや、兵庫県テニス協会のスポーツ医科学委員も務める。
『生活習慣病は腰の痛みを悪化させます。禁煙や肥満防止に努め、適度な運動を続けることで腰痛を予防できます。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q「 変形性ひざ関節症」とは?

松下 変形性ひざ関節症は、ひざ関節の軟骨が摩耗し、骨に棘(とげ)[骨棘(こっきょく)]ができたり、ひざ関節の隙間が狭くなったりする状態を指します。多くの場合、ひざの内側に痛みが生じたり、お皿に水が溜まったりしますが、症状が現れないこともあります。軟骨の摩耗は加齢とともに誰でも起こりますが、発症には個人差があり、体重や筋力、脚の骨格(O脚やX脚)、過去のケガなどが影響します。症状が現れた場合でも、初期段階では立ち上がる瞬間に痛みが生じる程度で、見過ごされがちです。しかし、病気が進行してしまうと、少しの動作でも激痛が発生するようになります。早期であれば対処できるケースもありますので、症状が現れたら専門医に相談し、適切な治療を受けることが重要です。

Q「 変形性ひざ関節症」の治療・予防法は?

松下 症状が軽い場合は、痛みを和らげる内服薬やヒアルロン酸の注射を使用します。また、太ももの筋肉を鍛えることで、痛みを軽減することが期待できます。症状が改善しない場合は、手術を検討することもあります。肥満はひざに大きな負担を与えるため、適切な体重を維持することが重要で、筋力トレーニングや体重のコントロールが、そのまま予防法にもつながります。痛みが出ないうちから予防に努めることで、高齢になるまでひざの痛みに悩まされずに過ごすことも可能です。

ひざの痛み対策に効果的なトレーニング
【ひざ痛体操】左右とも10回で1セット、1日3セット

大腿四頭筋訓練(だいたいしとうきんくんれん)
仰向けに寝て、片方のひざをしっかり伸ばして太ももに力を入れたまま、ゆっくりと上げ、5~10秒間止めて、ゆっくり下ろす。

※「ロコモONLINE」公式WEBサイト(https://locomo-joa.jp/)から

Q「 腰部脊柱管狭窄症」とは?

角谷 腰部は5個の骨[腰椎(ようつい)]が連なってできており、その中心部には管状の空洞[脊柱管]があり、中に神経[馬尾(ばび)]が通っています。腰椎間の前方には、クッションの役割をする椎間板(ついかんばん)があり、これが加齢などで変性すると、安定性を保つために靭帯が厚くなり、さらに周囲から骨棘が生じます。その結果、脊柱管が狭まり、神経が圧迫されます。この状態を腰部脊柱管狭窄症といいます(椎間板ヘルニアとは異なります)。多くの場合、腰痛や、圧迫された神経に関連する部位で神経痛を発症します。典型的な症状は、歩行時にお尻から太もも裏にかけて痛みや重だるさが現れ、休憩すると和らぐ間欠跛行(かんけつはこう)です。病気が進行すると、最悪の場合、麻痺症状が出たり、排便・排尿のコントロールが困難になることがあります。

Q「 腰部脊柱管狭窄症」の治療・予防法は?

角谷 治療法には、保存的治療と手術療法があり、8~9割の患者さんが保存的治療で症状が改善するといわれています。保存的治療では、消炎鎮痛剤や、血流をよくする血管拡張薬、神経痛を抑える薬などの様々な薬を、内服や、患部に直接注入するブロック注射で投与します。また、糖尿病の方や肥満・喫煙者は症状が悪化しやすいため、生活習慣の改善や運動療法をオススメします。特に、股関節を柔軟に保つストレッチ(前屈やあぐらの姿勢でひざを開くなど)や、ハムストリングを鍛える筋力トレーニング(スクワットなど)は、腰への負担を軽減し、予防にも役立ちます。日本整形外科学会で開発した、「ロコモONLINE」で紹介しているトレーニング「ロコトレ」もオススメです。

腰の痛み対策に効果的なトレーニング
【腰痛体操】それぞれ10回で1セット、1日3セット

背筋体操
うつぶせに寝ておなかの下に枕をはさみ、背中に力を入れて上半身をゆっくりと持ち上げ、5~10秒間止めて、ゆっくり下ろす。

腹筋体操
仰向けに寝てひざを曲げ、おなかに力を入れ、背中を丸めるようにゆっくりと頭と両肩を持ち上げ、5~10秒間止めて、ゆっくり下ろす。

※「ロコモONLINE」公式WEBサイト(https://locomo-joa.jp/)から

 

 

 

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阪神電気鉄道(株)は、阪神間において安全で質の高い医療の提供に取り組む神戸大学・兵庫医科大学と連携し、沿線住民の健康増進への貢献を通じた沿線の活性化を推進しています。2016年からは、子どもから大人までが健康や医療について楽しく学べる「HANSHIN健康メッセ」を開催しています。
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