【健康・未病と毛細血管】第2回「疲れと未病~②疲れに効く栄養素~」

新学期もすぎGW後のこの季節に、疲れが取れない…ことはないですか?疲れているとはどういう状態なのか?今回は、疲れのメカニズムとその対策をお話しします。


筆者:渡辺 恭良 氏
京都大学医学部卒、京都大学大学院医学系研究科修了(医学博士)、大阪バイオサイエンス研究所・研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科・教授、同健康科学イノベーションセンター・所長、理化学研究所分子イメージング科学研究センター・同ライフサイエンス技術基盤センター・双方のセンター長、理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックスプログラム・プログラムディレクターを経て、現職(理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー、大阪公立大学健康科学イノベーションセンター・顧問、大阪公立大学名誉教授など) ベルツ賞、文部科学大臣表彰科学技術賞など受賞。原著英語論文512報、特許出願94件など。


“疲れ”のメカニズム

地球上のほとんどの動物は酸素を使ってエネルギーを作ります。その過程では副産物として多くの「活性酸素」が発生しています。活性酸素は、免疫機能維持や感染防御に働きますが、その一方で過剰な産生により細胞内の重要な部品を障害し、疲労や老化の原因ともなります。細胞が障害の修復に必要なエネルギーを十分に生み出す状態であれば、活性酸素が発生しても細胞中の抗酸化物質が処理し健全な状態を保ちます。ところが、オーバーワークや過労などで処理が追いつかなくなると、結果的に細胞機能が落ち込んでしまいます。そして、全身をパトロールしている免疫細胞が、ダメージの厳しい細胞を見つけ、免疫系のサイトカインと呼ばれる物質を介して脳に知らせることで、人は“疲れ”を感じることになります。

図:疲労のコアメカニズム

疲労は意欲があり何かに夢中な時には「疲労している感覚(疲労感)」がマスクされて感じませんが、新しい学校や職場で気持ちが高まり頑張りすぎて気づかないうちに…そんな今頃に、蓄積した疲労をどっと感じることもあります。細胞ダメージからのメッセージとして脳が感じとったら、軽く考えず、疲労を適切に対処しましょう。

疲労回復のポイント

疲労回復のポイントは、①細胞を傷つける活性酸素の発生を抑えること、②発生した活性酸素を解消すること、③傷ついた細胞内部品や細胞を修復し活性化する栄養素を摂ること、その3つからなる「疲労回復システム」です。

活性酸素による細胞ダメージは、指先の毛細血管でも検出できます。健康的な毛細血管はまっすぐ伸びたヘアピン状血管が規則正しく並ぶ状態ですが、過労やストレスなど活性酸素が多い状況が続くとこのようなねじれた形状になることがあります。

図:活性酸素による毛細血管のダメージ

疲れの回復や予防には、適度な運動で活力と恒常性を維持し、質の良い睡眠や休息を十分取り、酸化物に対応する成分の多い食事を取ることで、活性酸素の発生抑制と解消に上手に対応することが重要です。

疲れに効く栄養素

さて、日々の食事からの対策として、疲れに効く栄養素を多く含む料理レシピを、あっと社の宮良さんが紹介してくれます。

渡辺:
宮良さんは、毛細血管計測のあっと社に所属する管理栄養士として、毛細血管と健康・未病の関連情報を生活者の皆さん向けに発信しているんですよね。

宮良:
はい!
私は健康カウンセラーとして、長年予防医療分野で活動してきました。皆様の最も多いお悩みが “疲れ”でしたが、先生方の神戸リサーチコンプレックスの研究をあっと社を通じ学びました。今回、疲労研究の第一人者の渡辺先生とご一緒できることをとても光栄に思います。

渡辺:
こちらこそ。
私達の研究では、イミダゾールジペプチド、還元型コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、ポリフェノール類、システイン(アミノ酸の一つ)などが抗酸化作用のある栄養素として確認されてきました。あっと社では、毛細血管測定でこれら栄養素を含む食品の機能検証の研究もしているのですね。

宮良:
はい。お手伝いした研究では、ある抗酸化栄養素の摂取で毛細血管が正常な形状に近くなる結果が得られたそうです。あっと社で論文を準備中です。

渡辺:
なるほど… 毛細血管の細胞は血液中の栄養素や機能成分の影響を受けやすいから、障害された細胞が改善する様子を見やすいということですね。効果が目で見えるのはわかりやすいので、有効な栄養素をとり入れるきっかけにもなりますね。

宮良:
今回は疲れに有効な栄養素をたくさん摂取できるレシピとして、炊飯器で簡単にできる鶏ハムを考えました。鶏胸肉22gで1日に必要なイミダゾールジペプチド200mgを取ることができます。修復エネルギーを作るのに必須のビタミンB1や、アミノ酸も豊富です。

みやらの健康レシピ「疲れに効く“しっとり鶏ハム”」

渡辺:
鶏胸肉は、私たちが研究したイミダゾールジペプチドが多く含まれているいい食材です!ただし、調理方法に気をつける必要がありますね。

宮良:
はい、その通りです!これらの栄養素は水溶性で、茹でると折角の成分が流出します。鶏胸肉はパサつき易いので、そうならない簡単な調理法を選びました。シンプルなのでチーズを乗せたり、サンドイッチにしたり、合うソースも多くて幅広い応用ができます。

渡辺:
美味しそうですね。また、飽きずに食べられるということですね。

宮良:
はい!栄養素の細かい作用、今回のレシピと調理のポイントは、あっとのページに載せていますのでご覧ください。
→レシピはこちら(あっと株式会社ウェブサイト)

渡辺:
疲労に効果のある栄養素に限らず、栄養素は組み合わせることでお互いに助け合ってより効果を発揮します。その作用点をよく知った上で、一つの栄養素に偏らず、いくつかの栄養素をバランス良く摂るようにするのがおすすめです。

終わりに

「疲労感」は、痛みや発熱と合わせ身体からの三大アラームです。現代人は、忙しくて気の休まる時間がない切迫感が問題です。スマホでゲームは長らく緊張した状態が続き、逆に疲れる要素が大きいです。この記事を読まれている皆様、目の前の車窓の景色を眺めてみましょう。この季節の新緑を感じることで、肩の力がぬけリラックスできるのではないでしょうか。

 

この連載では、毛細血管スコープ、計測技術のあっと株式会社のコラムページと連携しています。毛細血管計測や、この記事について詳しい内容があっと社のコラムページで提供されています。

◆あっと株式会社 コラムページはこちら