【教えて!沿線のお医者さん!】女性に多い膀胱炎(ぼうこうえん)の基礎知識を学ぼう!(兵庫医科大学+阪神電車)
リモートワークによる運動不足などで免疫力が低下し、膀胱炎にかかる人が増えたといわれています。膀胱炎は、仕事などでトイレを我慢しがちな人にも多い病気です。具体的にどんな症状が現れるのでしょうか。治療や予防法も含め、膀胱炎の基礎知識を兵庫医科大学の山本新吾先生に伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年5月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/
<教えてくれた先生はコチラ!>
兵庫医科大学 泌尿器科学
主任教授 山本 新吾先生
病院では前立腺がんや腎がんに対する腹腔鏡(ロボット)手術などを担当。学会活動では日本泌尿器科学会 尿路性器感染症部会長を務める。
『膀胱炎は予防が大事。おしっこを我慢しないで、水分摂取も心がけてください。』
●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp
Q 膀胱炎とは?
尿を一時的に蓄えておく膀胱の中に、大腸菌などの腸内細菌が侵入して炎症を起こしてしまう病気です。大腸菌には、O157(オー157)のような食中毒を起こすものもあれば、何も影響がないものなど様々ありますが、一般的に約2割の人が、膀胱炎を起こしやすい菌を保有していると考えられています。腸内細菌の種類は、同居家族などに影響されて変化していきます。最終的には、女性の2人に1人くらいの割合で膀胱炎を発症するといわれています。
Q 女性に多いのはどうして?
女性は尿道が約3~4cmと短く、また尿道口のすぐそばに肛門や膣(ちつ)があります。そのため直腸にある大腸菌が移動して膣で繁殖し、尿道を通って膀胱に入りやすいのです。男性は、膣のような繁殖する場所がなく、尿道も長いので、健康な人であれば膀胱炎になることは、ほぼありません。しかし、前立腺肥大症で残尿がある人、膀胱結石の人、カテーテルを挿入している人などは、細菌が繁殖しやすくなるため、膀胱炎を発症することがあります。
Q 症状は?
典型的な症状は排尿痛や下腹部痛です。炎症を起こして膀胱や尿道の粘膜が荒れてしまうため、尿に含まれるナトリウムやカリウムが刺激となって痛みが生じます。神経も過敏になるため、残尿感や頻尿も発症しやすくなります。また、細菌と戦うために白血球が増加し、本来は透き通っている尿が濁(にご)ります。膀胱や尿道が出血して、血尿がみられることも珍しくありません。排尿痛や下腹部痛を伴う血尿がみられる場合は、膀胱炎である可能性が非常に高いです。逆に痛みがないのに血尿がある場合は、がんなどほかの病気である可能性があります。
Q 発熱はしないの?
膀胱炎で発熱することはありません。膀胱炎の症状があって発熱を伴っている場合は、腎盂腎炎(じんうじんえん)の可能性が高いです。腎盂腎炎は、腎臓の中にある腎盂(腎臓でつくられた尿を、尿管を通して膀胱に送る前に一時的に溜めておく部分)にまで細菌が侵入して繁殖し、炎症を起こす病気です。腎盂腎炎になると、抗生剤(抗生物質・抗菌薬)を点滴で投与するなどして対処しなければ、全身状態があまりよくない人は命の危険が及ぶ可能性もあります。必ず医療機関を受診して、治療を受けるようにしてください。
Q どんな人がなりやすい?
女性でおしっこを我慢する人、疲労や冷えなどで免疫力が落ちている人、水分をあまり摂らずに尿量が少ない人、残尿感がある人は、細菌が繁殖しやすくなるため、膀胱炎になりやすいといえます。また、閉経後は膣内に存在していた乳酸菌が減少して、自浄作用が低下するため、細菌に感染しやすくなります。閉経前の女性でも性交渉時は細菌が侵入しやすいため、性交後はなるべく早く排尿して細菌を追い出すようにしたほうがいいです。
Q 膀胱炎かなと思ったらどうする?
泌尿器科を受診してください。尿検査で白血球反応や潜血(せんけつ)反応を調べます。膀胱炎だと診断されれば、抗生剤(抗生物質・抗菌薬)の内服による治療を行います。抗生剤はペニシリン・セフェム系かキノロン系といわれる2つの種類があり、どちらかを試して効果がなくても、もう一方を試せば通常は1週間程度で治まります。しかし、どちらの抗生剤も効かない多剤耐性菌を持っている人が、閉経前の女性で約10%、閉経後の女性で約20%います。その場合は、菌を培養してどのような抗生剤が効果的かを調べた上で治療を行うため、治療期間が長くなります。多剤耐性菌は、過去に抗生剤の投与を途中で辞めて細菌を全滅できなかった場合などに、生き残った菌が変異して抗生剤に耐性をつけてしまったものです。何度も繰り返し膀胱炎を発症する人は、多剤耐性菌に感染している可能性が高いです。症状が治まっても細菌が死滅したわけではありません。どのような病気でも、抗生剤を処方された場合は、処方された量を必ず飲みきるようにしてください。また、抗生剤が乱用されている海外の地域では、耐性菌が繁殖していることが多く、そこから持ち帰ることもあります。
Q 膀胱炎を予防するには?
膀胱の中に細菌が侵入しても、繁殖する前に排尿すれば細菌は排出されます。ですから、水分をたくさん摂って、おしっこを我慢しないことが一番の予防法です。免疫力が落ちると、細菌が繁殖するスピードが高くなるため、疲れている場合は身体を休め、睡眠を十分取ってください。身体が冷えている場合も免疫力が低下するので、温かく保つことが大切です。
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