【教えて!沿線のお医者さん!】気胸(ききょう)ってどんな病気?(兵庫医科大学+阪神電車)
「有名人が気胸のために休養する」といったニュースなどで、聞き覚えのある方が多いかもしれません。「気胸」は、若くて背が高く、痩せた男性がかかりやすいといわれます。実際はどんな病気なのでしょうか。女性や高齢の方がかかることはあるのでしょうか。兵庫医科大学の橋本昌樹先生に詳しいお話を伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年3月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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<教えてくれた先生はコチラ!>
兵庫医科大学 呼吸器外科学
講師 橋本 昌樹先生
肺がんや縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)に対するロボット支援手術が専門。低侵襲(ていしんしゅう)手術だけでなく、進行症例に対する拡大手術まで幅広く担当している。
『喫煙者は気胸のリスクが上がるといわれています。喫煙によって傷ついた肺は元には戻りません。禁煙を心がけましょう。』
●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp
Q 気胸とは?
気胸とは何らかの原因で肺に穴が開き、肺から空気が漏れてしまう病気です。肺から漏れ出た空気は、胸腔(きょうくう)という胸壁(きょうへき)[肋骨(ろっこつ)や筋肉]や横隔膜などに囲まれた空間に溜まってしまいます。肺から漏れ出た空気が胸腔内に溜まることで肺の膨張が妨げられ、咳や息切れ、呼吸困難などの症状が出現します。ほかにも、胸や背中の痛みを伴うことがあります。
Q 気胸になる原因は?
明らかな原因がなく発生する気胸を「自然気胸」といい、肺に何らかの病気があり、その影響で発生した気胸を「続発性気胸」といいます。自然気胸のほとんどは、肺の表面にできた「肺のう胞」が破れることによって起こります。肺のう胞とは、肺の表面を覆っている胸膜が風船のように膨らんだもので、10~20代前半の痩せ型で長身の男性にできやすいことが分かっています。一方、続発性気胸の原因疾患は様々な病気がありますが、最も頻度が高いものは、60代以上の喫煙男性に多い「肺気腫」です。肺気腫も喫煙などの影響で肺のう胞ができやすくなります。また、女性特有の気胸として「月経随伴(ずいはん)性気胸」があります。
Q 女性がかかる月経随伴性気胸とは?
子宮内膜症が原因で起こる気胸で、本来、子宮内にできる子宮内膜が胸腔内にできてしまい、月経の度に剥がれ落ちることで肺に穴が開いて起こります。月経開始日3日前から5日後の間に、息が吸いにくい、胸部に違和感があるなどの症状が出て、それが2か月に1回以上起き、さらに3回以上繰り返される場合に月経随伴性気胸と診断します。新たに子宮内膜ができると穴がふさがって症状が治まるため、見過ごしている人が多いかもしれません。心当たりがあれば呼吸器外科を受診してみてください。
Q 気胸の治療法は?
肺のしぼみ具合が軽度の場合は、しばらく安静にして様子をみます。軽度であれば安静にすることで穴が自然にふさがり、肺がまた膨らんでくることがあるためです。安静にしても改善しない場合や症状が強い場合、肺のしぼみ具合が中等度以上の場合は、胸に小さな穴を開けて細いチューブ(ドレーン)を挿入し、溜まった空気を抜く「胸腔ドレナージ」を行います。ただ、安静にすることや胸腔ドレナージによって気胸が治癒した場合も、約50%の割合で再発が見られます。その場合は手術の対象となります。手術は、胸腔鏡(カメラ)を使って、原因である肺のう胞を切除することがほとんどで、それにより再発の危険性を低下させることが可能になります。また、月経随伴性気胸では、症状が重い場合にホルモン療法を行い、月経周期を止めることがあります。気胸は軽くみられがちですが、急激に悪化することもあります。症状がある場合は、我慢せずに早めに医師に相談してください。
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