【教えて!沿線のお医者さん!】日本人の10人に1人が過敏性腸症候群!?(神戸大学+阪神電車)

緊張するとお腹が痛くなった経験がある人は多いと思います。実際、腸はストレスの影響を受けやすく、頻繁に腹痛をくり返す過敏性腸症候群も、このストレスが関与する病気だといわれています。実際はどうなのでしょうか。神戸大学医学部附属病院の井上 潤先生に、治療法も含め詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年2月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

「教えて!沿線のお医者さん!」のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部/消化器内科
助教 井上 潤先生
腸内細菌や消化管疾患に詳しい。症状がなかなか改善しない過敏性腸症候群患者の治療にも積極的に取り組む。
『過敏性腸症候群の治療は、長い目で病気と向き合ってくれる消化器内科のかかりつけ医を見つけると安心です。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 過敏性腸症候群とは?

検査で病気が見つからないのに、排便に関係する腹痛が半年以上前から始まり、直近3か月の間に平均して週1回以上くり返される場合、過敏性腸症候群と診断します。便の状態で、下痢型・便秘型・混合型(下痢と便秘が交互に現れる)に分類されます。下痢や便秘が続いても、腹痛を伴わない場合は過敏性腸症候群とは診断しませんが、腹痛を自覚されていない方もいます。急にお腹が絞られる感覚でトイレに行きたくなって、排便後に治まるという場合も、腹痛だとみなします。日本人の約10%がかかっているともいわれ、特に20~40代に多く、年齢とともに減少する傾向があります。

Q 発症の原因は?

過敏性腸症候群は心因性の病気だといわれることがあります。確かに何らかの心理的な負荷がかかると腸が過敏になりやすいというデータはあります。しかし決してストレスだけでなく、目に見える原因もあることが分かりつつあります。大腸カメラで異常が見つからなくても、組織の一部を切り取って調べると、実はゆるい炎症が起きていて腸のバリアが弱くなっているのです。なぜそのような状態になるのか、はっきりした原因は解明できていませんが、食中毒などの感染性腸炎にかかった後に過敏性腸症候群を発症しやすいことは分かっています。また、「腸内フローラ移植」で治ったという研究報告もあり、炎症や腸内細菌が関連しているともいわれています。

Q ほかの病気の可能性は?

腹痛や便通異常が、ほかの病気が原因で起きている可能性はあります。特に、発症したばかりの方、体重が減少した方、大腸がんの家族歴がある方、便に出血がみられる方、高齢で発症した方などは、警告症状といって、大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患のほか、肝臓や膵臓(すいぞう)、腎臓、甲状腺の病気などの可能性があり、CTや大腸カメラ、血液検査などで調べます。これらの検査で異常が見つからなかった場合は、過敏性腸症候群である可能性が高いです。また、過敏性腸症候群の方は、潰瘍(かいよう)性大腸炎などの炎症性疾患に移行する確率が高くなるといわれています。症状がある方は、一度消化器内科で診察を受けておくと安心です。

Q どんな治療をするの?

腸の運動や便の硬さをコントロールする薬や、整腸剤、漢方薬などの飲み薬による治療を行います。6割程度の方が、最初に処方した薬で快方に向かいます。また、消化酵素である胆汁酸が小腸で吸収されにくい方も、下痢を発症しやすくなることが分かっています。この場合は、過敏性腸症候群と同様に検査で見つけにくいのですが、コレステロールを下げる薬のひとつで改善することもあります。さらに、生活習慣の改善も大切。過敏性腸症候群の方は、腸が過敏になっている状態なので、少しのストレスや刺激でも症状が現れやすいです。正しい食生活と適度な運動、十分な睡眠を心がけてください。食生活では「高FODOMAP食※」を控えることが効果的だといわれています。

※高FODOMAP食:FODOMAPとは、小腸で消化・吸収されにくい糖類のこと。小麦や大豆、牛乳、オリゴ糖、リンゴなどが高FODOMAP食といわれている。

 

 

 

~ホッと!HANSHINとは~
グルメやカルチャー、エンターテインメント、観光スポットに関する情報など阪神沿線の様々な「魅力」をぎゅっと紹介する沿線情報紙。阪神電車の各駅や阪急電鉄や近鉄(奈良線)の主要駅などで無料配布しています(毎月25日発行)。
▶「ホッと!HANSHIN」で紹介している今月の特集や駅周辺のスポット、イベント情報はWEBでもご覧いただけます。
https://www.hanshin.co.jp/area/

阪神電気鉄道(株)は、阪神間において安全で質の高い医療の提供に取り組む神戸大学・兵庫医科大学と連携し、沿線住民の健康増進への貢献を通じた沿線の活性化を推進しています。2016年からは、子どもから大人までが健康や医療について楽しく学べる「HANSHIN健康メッセ」を開催しています。
▶「HANSHIN健康メッセ」WEBサイトはこちら
https://www.kenko-messe.com/