【教えて!沿線のお医者さん!】動脈硬化(どうみゃくこうか)があると危険!冬は心筋梗塞(しんきんこうそく)などが起こりやすい!?(兵庫医科大学+阪神電車)
「動脈硬化」という言葉は知っていても、なぜ動脈硬化になるのか?どのような危険があるのか?までは、よく分からない人が多いのではないでしょうか。特に冬は、動脈硬化が生死に関わるという話もあります。実際のところを兵庫医科大学の赤堀宏州先生に詳しくお聞きしました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年1月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/
<教えてくれた先生はコチラ!>
兵庫医科大学 循環器・腎透析内科学
講師 赤堀 宏州先生
狭心症や心筋梗塞などの、動脈硬化を原因とする疾患や心臓弁膜症を、メスを使わずに治療するカテーテル治療が専門。
『高血圧や糖尿病は動脈硬化を進行させる原因になります。診断されたら放っておかず、治療を行ってください。』
●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp
Q 動脈硬化とは?
血管壁が肥厚し、本来弾力性のある血管が硬くなってしまう状態を動脈硬化といいます。動脈硬化には複数の種類があり、最も多いのが、血管壁の一番内側の膜(内膜)にコレステロールなどが溜まって血管が肥厚する「アテローム性動脈硬化」です。血液が流れる部分(内腔)が狭くなるため血流不足が起こります。動脈は、各臓器に栄養や酸素を届ける血管ですので、血液が不足すると、狭心症や腎不全など各臓器に障害が起きます。また、内腔が徐々に狭くなって最終的に血管が詰まってしまうと、心筋梗塞や脳梗塞を発症して突然命を失う恐れもあります。最近は、動脈硬化が「慢性炎症」(※1)により増悪する可能性があることが分かってきました。炎症で血管の内側にある内皮細胞が傷つき、その傷にコレステロールが入り込むことで瘤(こぶ)ができて、局所的に血管が細くなります。瘤を覆う膜が薄くなって破裂し、血栓ができて詰まってしまうこともあります。症状はほとんど現れず、突然心筋梗塞などを発症することもあるので、“爆弾を抱えている”とよく例えられます。
※1 慢性炎症:通常一過性で治まる炎症(細菌やウイルスなどの外敵から身体を守るために起こる防御反応)が、軽度のままダラダラと長引くこと
Q 動脈硬化はどんな人がなりやすい?
血管壁を肥厚させる直接の原因となるLDLコレステロール(悪玉)の数値が高い方のほか、たばこを吸う方、糖尿病や高血圧の方、肥満(※2)の方が、慢性炎症を起こして動脈硬化になりやすいことが分かっています。たばこや高血糖、高血圧が血管を傷つけることは想像できても、肥満が動脈硬化にどう関係するのかはイメージできないかもしれません。実は脂肪細胞からは本来、炎症を抑えて血管を動脈硬化から守ってくれるホルモン、アディポネクチンが分泌されています。しかし、肥満になって脂肪細胞が肥大化するとアディポネクチンが分泌されなくなり、代わりにレジスチンという糖尿病を引き起こすホルモンが分泌され、動脈硬化を増悪させることが知られています。また、レプチンという抗肥満ホルモンがうまく働かなくなる「レプチン抵抗性」と呼ばれる現象が起こり、悪循環に陥ります。そのため、肥満をコントロールすることは、動脈硬化を防ぐうえでとても大切なのです。
※2 肥満:BMI値(「体重(kg)」÷「身長(m)の2乗」で算出)が25以上の場合
Q 冬に発症しやすくなるの?
動脈硬化は長年かけて悪化していくので、冬に発症しやすいということはありません。しかし、動脈硬化を持っている方が、心不全や心筋梗塞、脳梗塞などを発症しやすくなる可能性はあります。血管は、気温が低いと収縮するので、動脈硬化で狭くなった内腔が一層縮んで血流不足になったり、血圧が上がって心臓や血管に負担がかかったりすることがあるからです。また、冷えた身体を急にお風呂で温めると、動脈硬化で弾力性を失った血管が一気に弛緩(しかん)し、血圧が急激に下がって血流が不足するヒートショックも起こしやすくなります。
Q 動脈硬化になっているかを知るには?
検査を受けることで分かります。最も簡単なのが、両手両足の血圧を同時に測って血圧比(ABI)を調べる検査です。いずれかの血圧だけが低い場合は、そこにつながる動脈が狭窄(きょうさく)している疑いがあります。また、血液が心臓から手足に届くまでの速度(PWV)を測定して血管の硬さを調べたり、超音波で血管の弾力性を調べるFMD検査を行ったりします。動脈硬化になると血流が不足するので、心臓が痛い、足がしびれる、めまい・耳鳴りがする、脈が触れないなどの症状が現れたり、血流を増やすために血圧が高くなったりして気づく方もいます。しかし、症状が現れないことも多いので、人間ドックなどで検査を受けておくと安心です。
Q 動脈硬化を治すにはどうすればいい?
一度硬くなった血管を完全に元に戻すことは難しいです。しかし、動脈硬化があっても、高血圧や高血糖、高コレステロール、肥満、喫煙に注意を払うことで、心筋梗塞などの重篤な疾患にまで増悪しないように対策することはできます。まず、高血圧や糖尿病の方は治療を受けて改善するようにしてください。加えて、動脈硬化の進行を防ぐために、バランスの良い食事と適度な運動を続けることも大切です。運動は肥満を解消するだけでなく、運動時に分泌されるホルモンで血管を保護する効果もあります。また、食事は血液をサラサラにする作用があるDHAやEPAを多く含む青魚中心のメニューもオススメです。
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