【教えて!沿線のお医者さん!】歳をとると”おなら”がよく出るの?(兵庫医科大学+阪神電車)

「歳をとるにつれておならが増えた気がする」という人が多いようです。加齢とおならの量に因果関係はあるのでしょうか。そもそも、おならはどうして出るのか。ニオイの原因からおならを減らす方法まで、兵庫医科大学の福井広一先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2022年11月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 消化器内科学 
准教授 福井 広一先生
検査で原因が特定できない過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアなどの機能性消化管障害に詳しい。日本に1,000万人以上いると推定される患者のQOL低下を問題視し、研究を進める。
『おならの原因のひとつである便秘は、QOL向上のためにも、ぜひ改善が必要です。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q おならはどうして出るの?

おならの70%は口から飲み込んだ空気で、残り30%が食べ物を消化するときに発酵して出るガスだといわれています。それらが腸に溜まると肛門から排出されるのですが、出る量は1日100~3,000mL、回数でいえば5~20回と、かなり個人差があり、空気を飲み込む量が多い人はおならがよく出る傾向にあります。また、食物繊維は発酵を促進させる働きがあるので、食物繊維が豊富な豆類やイモ類をたくさん摂る人は、そうでない人に比べて2~10倍ぐらい、おならの量が増えるといわれています。

Q 病気が関係することはある?

呑気症(どんきしょう)といって、無意識に空気をたくさん飲み込んでしまう病気があります。緊張などのストレスが原因になることが多く、女性に多い印象です。また、消化管機能の低下や過敏性腸症候群などによる便秘でも、おならの量が増えます。食べ物は通常約24~72時間で消化され、残った不要物が排出されますが、便秘で不要物が体内に長期滞留すると、発酵する時間が長くなるため、発生するガスが増えるのです。

Q 高齢になるとおならがよく出るの?

「おならがよく出るようになった」という高齢の方は多いです。その原因のひとつは、高齢になると消化管を動かす神経細胞の働きが低下するためです。加えて、消化管の動きは運動不足やストレスでも低下します。さらに、定年などによる環境の変化や、健康不安によるストレスも原因となります。これ以外に、高齢で抗菌薬を常用するようになると腸内環境が変化し、おならが増える場合もあります。肛門を締める筋肉も緩んでくるため、我慢できずに出てしまうことが増え、おならがよく出るようになったと感じることもあると思います。

Q おならを我慢するとどうなる?

大腸でガスが溜まり、徐々にお腹がパンパンに張ってきます。消化管には、内容物を直腸へと押し出していき、最後に排泄するという重要な役割がありますが、ガスが溜まり過ぎると動きが止まってしまい、腸閉塞(ちょうへいそく)を起こす可能性があります。腸閉塞になると、腸の中の細菌が異常に増殖して血液に入り、全身に回って、命に関わるような重篤な症状(敗血症(はいけっしょう))を引き起こすこともあります。そのため、便やおならは定期的に出したほうが健康的です。

Q おならが臭いのはなぜ?

おならの主な成分は窒素、水素、二酸化炭素、メタンで、これらは無臭です。ニオイのもとになるのは、アンモニアや硫化水素(りゅうかすいそ)、インドール、スカトールという物質で、実はおならの成分の中で約1%しか含まれていません。インドールやスカトールは、肉類を分解する過程で発生することがわかっています。肉を分解するときには、ウェルシュ菌(腐敗菌)や黄色ブドウ球菌といった悪玉菌が働きます。悪玉菌は、運動不足や加齢、便秘でも増加し、消化管運動を抑制することが知られています。消化管運動が抑制されると悪玉菌が増え、さらに便秘が悪化する…という悪循環に陥り、臭いおならも増えます。一方、食物繊維を分解するときに働く、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌は、ニオイの成分があまり発生しません。食物繊維は、おならの量は増えますが、食べてもニオイのもとにはならないのです。

Q おならを減らすには?

空気を飲み込む量を減らしましょう。早食いや緊張・ストレスは、空気をたくさん飲み込んでしまう原因になります。また、便秘を解消すればおならを減らすことができます。適度な運動や乳酸菌の摂取が、消化管の活動を助けます。ただ、多量の乳酸菌を摂ればより効果的かといえば、そうとは限りません。腸内細菌は100兆個あって、人間の体細胞60兆個よりも多いのです。腸のなかで既に巨大なコミュニティをつくっているので、乳酸菌が多数入ってきても、新しくすめる場所は限られています。腸内細菌の構成要素は幼少の頃に決まっていて、それを大きく動かすことは難しいと考えられています。ただ、少しずつ変化させていくことはできますので、1回に大量を摂取するよりも、毎日続けることが大切です。

 

 

 

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