【教えて!沿線のお医者さん!】放置しがちな脂質異常症に要注意!(兵庫医科大学+阪神電車)
健康診断結果で「脂質異常症」と診断されたことはありませんか?現在、約220万人が継続的な治療を受けていると推定されていますが、再検査を受けず、放置している人も多いようです。具体的にどんな病気なのでしょうか。兵庫医科大学の角谷 学先生に詳しく伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2022年9月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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<教えてくれた先生はコチラ!>
兵庫医科大学 糖尿病内分泌・免疫内科学
講師・外来医長 角谷 学先生
脂質代謝を含む内分泌代謝を専門とする。日本動脈硬化学会の専門医・指導医として、脂質や動脈硬化の管理にも携わる。
『脂質異常症は症状がないため、軽く見てしまいがちですが、動脈硬化を進める原因になります。見過ごさず早めに対処しましょう。』
●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp
Q 脂質異常症とは?
脂質とは主にコレステロールと中性脂肪のことを指します。コレステロールは細胞膜やホルモン、胆汁酸などの材料になる成分で、中性脂肪は人が活動するためのエネルギー源になるものです。どちらも身体に不可欠ですが、必要以上に多すぎる、または少なすぎる状態を脂質異常症といいます。脂質異常症かどうかは血液検査で分かります。一般的には空腹時の血液検査で、血中に含まれる中性脂肪が150mg/dL以上、LDLコレステロールが120mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満のいずれかにあてはまる場合は、脂質異常症と診断されます。
Q HDLコレステロール、LDLコレステロールって?
コレステロールは脂肪分のため血液に溶けず、LDLというリポタンパク質に含まれ、全身の細胞に運ばれます。余ってしまうと、HDLという別の種類のリポタンパク質に回収され、肝臓に運ばれます。血液検査でのLDLコレステロールの数値が高い場合は、細胞が必要とする以上にコレステロールを運んでいる状態。一方、HDLコレステロールの数値が高い場合は、余ったコレステロールを多く回収して、全体量の減少に貢献していることになります。このため、HDLコレステロールは善玉、対してLDLコレステロールは悪玉と呼ばれます。悪玉が多く善玉が少ないと、血中にコレステロールが増えすぎている状態です。
Q 脂質異常症になるとどうなるの?
LDLコレステロール(悪玉)が必要以上に増え、HDLコレステロール(善玉)がコレステロールを回収しきれなくなり、血管内にコレステロールがたまっていきます。たばこを吸っている方、糖尿病や高血圧の方、中年以降の方などは、血管が傷つきやすくなっているので注意が必要です。血管に傷があると、そこにコレステロールが侵入して血管の壁を厚くし、最終的に血管が詰まって動脈硬化が進行し、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳梗塞(のうこうそく)、動脈閉塞症(脚の血流が悪くなる病気)などの原因になります。脂質異常症自体は自覚症状がありません。健康診断で見つけられる病気なので、毎年検査して脂質異常症を指摘されたら、医師の指導を受けるようにしましょう。
Q 脂質異常症を防ぐには?
一番は、バランスの良い食生活と適度な運動(約1時間×週2回程度)を行うこと。食事は、卵などの高コレステロール食品の食べすぎもよくありませんが、最も避けるべきは、体脂肪を増やす食品の摂りすぎです。脂肪分はもちろん、糖質の摂りすぎでも、余った分が中性脂肪になり、やがて体内でLDLコレステロール(悪玉)に変化します。野菜や海藻類、青魚はコレステロール量を減らすのによいといわれているので、積極的に摂りましょう。また、500人に1人の割合で、先天的にLDLコレステロール(悪玉)が増えやすい体質の「家族性高コレステロール血症」の方がいらっしゃいます。アキレス腱が膨らんだり、目頭の上などに黄色い塊ができることが多く、食生活や運動に気をつけても数値が改善しません。投薬による治療が必要ですので、心当たりがある方は医師に相談してください。
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