【教えて!沿線のお医者さん!】意外と知らない 女性の更年期の本当のところ(神戸大学+阪神電車)
更年期は男女誰にでも訪れ、ほとんどの人に様々な精神的な症状や体調の変化が現れます。そこで今回は、女性の更年期について、神戸大学医学部附属病院の産婦人科医である寺井義人先生に、更年期の症状や、治療が必要となる更年期障害について詳しくお聞きしました。
※男性の更年期については泌尿器科にご相談ください。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2022年8月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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<教えてくれた先生はコチラ!>
神戸大学医学部附属病院 産科婦人科学分野
診療科長/特命教授 寺井 義人先生
更年期世代の婦人科のがん治療においてロボットや腹腔鏡などを用いた低侵襲(ていしんしゅう)手術を数多く行い、ガイドライン策定にも関わる。
『更年期は婦人科のがんにかかりやすい時期でもあります。子宮がん検診はもちろんのこと、不正出血などの症状がある場合は、婦人科で診察を受けてみましょう。』
●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/
Q 更年期症状と更年期障害は違うの?
更年期とは女性の場合、閉経の前後約10年間のことを指します。月経が来ない状態が1年間続いたとき、1年前の時点で閉経したと考えます。日本人女性が閉経する平均年齢の49.5歳でいえば、45~55歳頃までが更年期です。この間、女性の身体には様々な症状が現れます。症状の現れ方には個人差があり、ほかの病気を伴わず症状が軽い場合を更年期症状、日常生活に支障をきたすほど重い場合を更年期障害といいます。更年期障害は治療が必要で、更年期女性の推定約1,800万人のうち、患者数は約700万人だといわれています。
Q どうして更年期に症状が現れるの?
更年期症状は、更年期にホルモンバランスが崩れることによって起こる身体や心の不調です。更年期に入ると、卵巣機能が徐々に失われ、卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)の量が減少します。すると、脳の視床下部がエストロゲンを増やすホルモンを分泌しようとします。しかし、卵巣機能は低下しているので、エストロゲンは増えません。このアンバランスから自律神経のバランスが乱れ、様々な症状が現れます。自律神経はストレスにも影響されやすいので、子育てが一段落するなど、日常生活の環境の変化が症状を悪化させることもあります。
Q 具体的にどんな症状が現れるの?
ホットフラッシュといわれる、のぼせやほてり、発汗のほか、疲労感、めまい、頭痛、動悸(どうき)、冷え、イライラ、不眠、うつなど様々です。下表の「簡略更年期指数(SMI)」で51点以上の場合や、何かひとつでも強い症状があって生活に支障をきたす場合は、医師にご相談ください。また、更年期症状は、メニエール病や心疾患、脳疾患、がんなど、ほかの疾患の症状と似ていることが多いので、症状が現れたら一度検査を受けると安心です。
Q 更年期障害の治療について教えて!
最も代表的なのが、減少したエストロゲンを補充する「ホルモン補充療法(HRT)」です。内服薬と貼り薬や塗り薬があり、貼り薬や塗り薬のほうが、皮膚から直接血液に吸収されるので血中濃度が上がりやすく、肝臓の負担も少ないという理由で採用されることが多いです。エストロゲン量が増えると、子宮内膜が増殖してしまうことがあるため、月経のように出血させて子宮内をきれいにする黄体ホルモンも併せて処方します(内服薬)。更年期障害は2~3年経つと改善することが多いので、治療を行う期間は長くても3年程です。最近は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの漢方薬を試してみるという選択も多くなりました。また、同世代の友人とお互いの症状や悩みを語り合うだけでも気持ちが楽になって改善することもあります。
Q 治療による副作用の心配は?
エストロゲンを長年投与し続けると乳がんや子宮体がんの発症率が上がるといわれています。しかし、ホルモン補充療法の治療期間は長くて3年と短期間ですから、乳がんの発症に影響を与えることはありません。また、黄体ホルモンを一緒に投与すれば子宮体がんになるリスクも回避できます。ただ、まれに血栓症を起こす副作用が生じることがあります。そのため基礎疾患の有無や開始時期、投与方法など、検査や診察をしっかり行ったうえで最適な治療法を選択します。
Q 更年期とうまく付き合うには?
植物性エストロゲンといわれる大豆イソフラボンや、女性ホルモンを整える作用があるオメガ3系脂肪酸(青魚の脂肪分に多く含まれる)は、更年期症状を軽くするといわれています。一方、過度なダイエット、肥満、運動不足は更年期に悪影響を与えます。エストロゲンは骨や血管を守ってくれる働きがあるため、閉経後にエストロゲンが減少すると、骨粗しょう症や糖尿病、動脈硬化、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病にかかりやすくなります。これらを防ぐためにも、更年期以降は特に、適度な運動とバランスの良い食生活を心がけましょう。
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